依頼者の方からのご質問の一例を挙げてあります。 これ以外の疑問点がございましたらお気軽にお尋ね下さい。 こんなことを弁護士に相談できるのかなと思うようなことでも、法律で解決できる問題かもしれません。問題が大きくなる前にご相談いただくことで、解決を容易にできる場合があります。心配なことがありましたら、早めにご相談ください。

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財産分与の対象となる財産

いかなる財産が財産分与の対象になりますか。対象となる場合の具体的評価方法も教えて下さい。

夫婦が協力して得た又は共同して負担したと評価できる財産は全て財産分与の対象となります。一般には、一方が仕事で得た収入も全て夫婦が協力して形成したものとして対象になります。
他方、婚姻前から持っていた財産は対象外となりますし、親族から贈与や相続で取得した財産も対象外となります。事情によっては対象となるかどうか判断が分かれるものもあります。
以下、基本的な考え方を説明した上で、個別に以下の財産について説明します。

(1) 預貯金が、別居時点で婚姻時から増加している場合の当初の預金
(2) 法人や子どもなど第三者の預金
(3) 学資保険
(4) 結婚前の預金を頭金にして住宅ローンを組んだ場合の自宅
(5) 株式
(6) 退職金
(7) 企業年金
(8) 生命保険
(9) 自動車などの物
(10) ギャンブルで得た収入
(11) 借金

1 基本的な考え方
財産分与は夫婦で協力して形成された財産を離婚に伴って清算するための制度なので、分与する対象となる財産は、夫婦が協力して得た実質的共有財産及び共同して負担した債務であると言われます。
もっとも、一方が仕事で収入を得ている場合も、他方が家事労働で支えて協力していることになるので、ここでいう「協力」というのは極めて抽象的なものです。
そのため、夫婦一方の固有の事情で得た財産(特有財産)以外は分与対象となると考える方が実態に即しています。

2 個々のケース
(1) 預貯金が、別居時点で婚姻時から増加している場合の当初の預金
預貯金は、基本的には別居時点の残高が対象となります。
もっとも、当該預貯金には婚姻前からもっていた預貯金も含まれている場合もあります。
この場合の扱いとしては、夫婦の預貯金は全体として一つの家計を構成し、入出金を繰り返しながら変動していくのが通常であって、婚姻時の残高は、いわば夫婦共有財産の形成のための原資として消費されたと考えることができるので、原則として、基準時の残高全体を対象とするという考えもあれば(山本拓「清算的財産分与に関する実務上の諸問題」家月62巻3号)、基準時に残存している限度で、婚姻時にあった預貯金も特有財産になるという考えもあります(蓮井俊治「財産分与に関する覚書」ケース研究329号)。
これは、婚姻期間の長さや他の財産状況との兼ね合いによっても左右される問題と考えられます。
たとえば、婚姻時点から夫婦双方名義の財産が増加しているなら、婚姻時にあった預金は特有財産と扱うのが公平と言えます。また、婚姻時点で夫の預金1000万円、妻の預金1000万円だったのが別居時点では夫の預金1100万円、妻の預金100万円になっていたといったケースでは、双方の残高全体を対象と扱うのが公平な場合も多いでしょう。

(2) 第三者名義の預金
ア 法人などの預金
夫婦の一方が経営している会社等の預金については、基本的には対象となりません。それは、当該会社等の株式や出資持分を分与対象として扱い評価すれば足りるからです。
もっとも、夫婦の実質的共有財産であるにもかかわらず名義のみが法人とされていることが明らかであるような場合には、対象として扱うことも認められます。
イ 子ども名義の預金
子ども名義の預金については、子どもがアルバイトなどで得た収入によるような場合は子ども固有の財産として財産分与の対象から外れますが、夫婦の財産で形成した預金であれば、財産分与の対象として扱うことになります。
財産分与の基本的な考えからすればこのように言えますが、事案によっては、子どもに贈与されたものと扱って、財産分与の対象から外している例も存在します(大阪高裁平成28年 7月21日判決、大阪高裁平成26年 3月13日判決、高松高裁平成9年3月27日判決)。

(3) 学資保険
学資保険について、これが子どものための保険であるとして、財産分与の対象外であり、親権者となる者が取得すべきであるといった主張がなされることもあります。
しかし、学資保険は貯蓄性の保険と異なるものではないので、対象外となることはありません。

(4) 結婚前の預金を頭金にして住宅ローンを組んだ場合の自宅
婚姻前に持っていた預金等を住宅ローンの頭金にした場合は、支出した割合に従って特有財産があると考えることになります。夫又は妻の親族の援助を頭金にした場合も、夫又は妻の特有財産として扱います。
たとえば、5000万円で購入する不動産について、夫が婚姻前の預金及び親の援助で500万を出し、妻が婚姻前の預金及び親の援助で1000万円を出して、残りはローンを返済して完済した場合、夫の特有財産は10分の1、妻の特有財産は10分の2、残りの10分の7相当が共有財産として財産分与の対象となります。

(5) 株式
株式は、上場株式については、取引価格によって算定します。
非上場株式については、厳密に算定するなら公認会計士による計算を行ってもらうことになりますが、費用もかかるので、直近の決算報告書における純資産額を発行株式で割って計算するという簡易な方法によることもあります。

(6) 将来の退職金
将来の退職金については、支払が不確実であることなどから、退職まで相当期間がある場合には財産分与の対象としないという見解も見られましたが、現在は、退職まで相当先であっても財産分与の対象とするのが一般的とされています。
その場合、対象となるのは、あくまで夫婦の協力で形成された部分に限られるので、退職金のうち、同居期間/就労期間の部分ということになります。
計算方法・支払方法としては、
① 別居時に自己都合退職した場合の退職金のうち同居期間/就労期間を基準とする
② 定年退職時の退職金のうち、同居期間/就労期間を基準とした上で、中間利息を控除する
③ 定年退職時の退職金のうち、同居期間/就労期間を基準とし、支払を退職時とする といった方法があり、更に、支払の不確実性も考慮して調整されることもあります。

(7) 企業年金
企業年金とは、企業がその従業員を対象に実施する私的な年金制度であり、法律上の制度としては、厚生年金基金、確定給付企業年金(基金型、規約型)、確定拠出年金(企業型)等があります。基本的には退職金の一部又は全部を年金化したものであり、退職金規程等に基づく退職金の原資が積み立てられていると認められる限りは、退職金と同様に扱うことができるでしょう。
もっとも、この問題を扱った裁判例の集積は乏しく、まだ扱いが確立しているとは言えません。

(8) 生命保険
生命保険については、基準時における解約返戻金を評価額とするのが一般的です。
もっとも、婚姻前から生命保険契約をしていた場合は、同居期間/契約期間で評価するなど修正することになります。

(9) 自動車などの物
自動車などの物も夫婦で形成した財産であれば財産分与の対象となります。
もっとも、家具家財の類は価値が乏しいので、そういった物品までは取り上げないことが一般的です。

(10) ギャンブルで得た収入
宝くじや競馬で大当たりした場合に得たお金について、これが問題となったケースは稀ですが、裁判例では財産分与の対象とすることは認めつつ、分与割合を修正している例が存在します。
〇 東京高裁平成29年3月2日決定
夫が、その小遣いで購入していた宝くじで当たった約2億円の扱いについて、宝くじの購入資金が婚姻後に得られた収入の一部である小遣いであることなどから、財産分与の対象と認めつつ、分与割合について夫6:妻4とした。
〇 奈良家裁平成13年7月24日審判
夫がその小遣いで購入した競馬による利益で購入した不動産の売却代金について、財産分与の対象と認めつつ、万馬券という射倖性の高い臨時の収入については運によるところが大きく,夫の寄与が大きいとして、妻の分与割合を3分の1とした。

(11) 借金
夫婦の一方が負った借金も、基本的には財産分与の対象となります。住宅ローンもこれに該当します。
ただし、ギャンブルや専ら個人的遊興でつくった借金については、夫婦共同で負担するものではないので、対象から外れることになります。もっとも、現実問題として、借金の理由・使途を明確にするには困難を伴うことも少なくありません。
なお、借金については、当事者間で借金の負担を合意しても(たとえば、一方名義の借金を他方名義に移すように合意しても)、貸主はこの合意に拘束されません。したがって、一方が立て替えて支払うといった合意をするのはともかく、借金自体は現状のままとなることを前提とした財産分与になるのが原則です。