2012年夏

三重合同法律事務所事務所コラム

2012年7月

2012年夏


 暑中お見舞い申し上げます。

 東日本大震災の復興がおぼつかない中、消費税増税が強行されようとしており、原発も再稼働、依然として一行に歯止めがかからない非正規雇用の拡大、先進国の中ででも高い子ども貧困率、連続記録を更新続ける自殺者年間3万人、新速射の就職不安など私たちの暮らしや環境、安全を取り巻く状況は悪化の一途をたどっています。
 しかし、そういう厳しい社会環境の中でも、職場で地域で学校で奮闘する多くの人たちがおり、また、暮らしや人権救済活動に取り組む人々の連帯があり、人間らしい、生きがいのある社会を目指す動きは地道ではあっても続けられています。
 当事務所でも、労働環境改善のための過労死110番、過労死訴訟、アスベスト被害の救済活動、不当解雇との闘い、労災、交通事故などの被害者救済、高齢者、障害者問題への取り組みなど日々の活動を通じて社会貢献を果たすべく努力を重ね、特に今夏は反貧困全国キャラバンに参加し、三重県下でのイベントを計画中です。
 これからも、創立三十九年の実績を踏まえ、頼りがいのある法律事務所を目指して一層皆様のご要望にお応えできるよう努力していきたいと考えております。

2012年 盛夏


高齢者の投資被害

弁護士 伊藤 誠基

【相談内容】
 Aさんは78歳の高齢女性ですが、投資会社から電話があり、社債を買えば、高額で買い取ると勧誘され、500万円を振り込んだが、後で家族に知れ、解約したいという相談です。
【解説】
 もう10年以上前から未公開株を近く上場するので値が上がると勧誘され高額で買わされる事件が多発していましたが、近年は社債になり、そして最近は二酸化炭素排出権取引の勧誘に移ってきています。
 このような投資被害は、高齢の方に多いこと、投資の対象は実態のはっきりしない会社に関係する権利であること、勧誘会社は設立されて間がないことなどが共通の特徴です。
 Aさんの場合、振込先銀行口座がわかっていましたので、直ぐ口座を仮差し押さえしましたが、残高は僅かでした。しかしその後本訴訟を起こした結果、途中で業者から全額返金の振り込みがあり、うまく解決できました。
 これは幸運な方で、通常は返って来ない可能性が高いのが実情です。被害に気づけばすぐ相談されることが大切です。


日照被害


弁護士 森 一恵

【事案内容】
 「ひまわり」訴訟を御紹介させていただきます。
 日影規制が適用されない商業地域に指定されてはいるが、実際は閑静な住宅地に地上15階建ての高層マンションが建築され、近隣住民に日照被害・風害・生活被害等が生じた事案です。
【裁判経過】
 私たちは近隣住民から委任を受けて建築主である会社に対し、損害賠償請求の裁判を提起しました。近隣住民の本来の希望は、マンション建築前の元の状態に戻って失われた日照を回復してもらうことです。しかし、マンション建築が完成された現在、マンション撤去による日照回復は現実的に無理です。マンション撤去が無理なら、代替手段として太陽光採光システム「ひまわり」の設置費用相当額を損害額に加えて、会社に請求しています。
 法律上日影規制が適用されない区域であっても、建築によって受忍限度を超える被害が生じた場合、建築主は近隣住民に対し、損害賠償責任を負わねばなりません。裁判では、近隣住民に受忍限度を超える被害が生じたことを粘り強く主張、立証していきたいと考えます。


交通事故に強い弁護士とは


弁護士 村田 正人

 交通事故の被害者となったときに、治療費の支払いは、加害者の任意保険会社に支払ってもらうのが普通です。ところが、治療を受けて後遺障害が固定したときに、後遺障害診断書まで保険会社に渡してしまうとどうなるでしょうか。
 事前認定がされ、その後、保険会社から示談金額が提示されます。これがくせもので、示談金に応じないことには保険金が出ないシステムなので、示談金額が低すぎて示談はできないが、当面のお金は必要だとして、困って相談にこられる方がたくさんいます。これは、手続きを被害者請求に切り替えれば保険金が出る簡単な問題です。加害者請求は示談が必要ですが、被害者請求には示談は不要だからです。自賠責保険金をまず受け取って、不足分を裁判にかければよいのです。
 交通事故に強い弁護士は、被害者請求で、まず自賠責保険金をゲットして、不足分を訴訟にかけます。裁判に必要な弁護士費用も、弁護士費用特約を使うことができれば、自己負担分はゼロとなります。特約がなくても、弁護士費用の一部を裁判で相手に払わせることも可能です。


解雇無効の労働審判事件

弁護士 加藤 寛崇

 業績が苦しくなったと言われて、約20年間勤務してきた会社から解雇された従業員の解雇無効を主張して労働審判を申し立て、申し立ててから3カ月程度で会社側が給与9か月分弱相当額を支払う形で和解し解決した事案がありました。
 会社は赤字にもなっていなかったし、経営状況が予想以上に悪化したという事実もなく、違法な解雇は明らかでした。
 2006年から導入された労働審判は、原則として3回以内の手続きで終結するなど迅速な解決を目的としており、他方、裁判所(労働審判委員会)の判断として解決案も提示されるなど解決の実効性を図る面もあるので、相応の解決が実現する制度として、活用されているようです。私としても、本件が労働審判に適した事件だと考えて申し立て、相応の解決を実現できたのでよかったと思います。
 もっとも、本来、解雇無効の場合、解雇されてからの給与を請求し続けることができるのに、労働審判の解決水準は給与反年~1年分程度ともいわれています。これがはたして適正なものか、疑問もあります。資本家にとって煩わしい労働紛争を、さっさと手切れ金で片付けるために役立っている面もあるのは否定できないでしょう。
 今後も必要に応じて労働審判も活用しようと思いますが、限界もよく見ておく必要があります。


秘密保全主義

弁護士 石坂 俊雄

 秘密保全法案をご存じでしょうか。この法案は、政府・民主党が尖閣諸島沖中国漁船衝突事件のビデオがインターネットに流れたことを理由として、国の安全に対する秘密を漏れないようにする必要があるとして制定を目指しております。
 この法案は、秘密にしたい事項を「特別秘密」と指定をするのですが、「特別秘密」として指定する分野は「国の安全」「外交」「公共の安全及び秩序の維持」に関するものであるとしておきます。このような曖昧なくくり方では。何が「国の安全」や「秘密に属する外交文書」に該当するのか分かりません。その上に「公共の安全及び秩序の維持」も「特別秘密」であるということに至っては国民生活に係わる広範囲の情報がすべて含まれることとなり、懲役刑を科することにしております。
 そもそも、尖閣諸島沖中国漁船衝突事件のビデオは、国民に隠さなければならないような内容ではありませんでした。また、これを流出した海上保安官も罰せられておりません。このようなことを理由として秘密保全法を制定する本当のねらいは、国民に知られて都合の悪い情報は全て「特別秘密」として隠してしまうことです。
 このような法案が制定されないように重大な関心を持っていきましょう。





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