2013年夏

三重合同法律事務所事務所コラム

2013年8月

2013年夏


暑中お見舞い申し上げます。

  アベノミクスによる景気の好転というニュースが連日流れる中、市井では景気の好転を感じることはまだまだありません。むしろ、円安によって輸入品が値上がりし、小麦粉、石油等の高騰により家計が圧迫されていると感じられる方の方が多いのではないでしょうか。

 今年7月には、参議院の改選がありましたが、今後、日本の政治は、改憲論議が一層高まっていくことが予想されます。当事務所は、「憲法は、国民の権利や生活を守るものであり、それを制約するものではない」という憲法の基本思想をしっかりと踏まえた上で今後の憲法問題に携わっていきたいと考えております。」

 当事務所では、昨年来に引き続き、労働環境改善のための過労死110番を行い、不当解雇訴訟、労災問題、交通事故などの被害者救済に取り組んできました。特に今年からは労働問題一般について相談する労働ホットラインに参加しております。

 これからも人権や社会正義、ひいては市民の皆様の生活を守るという基本理念を忘れることなく、邁進していきたいと考えておりますので、今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

 


「寄与分」て何ですか


弁護士 石坂俊雄

1 「寄与分」とは
① 子供が三人いて、長男が、両親と同居して面倒を見てきた場合、長男の相続分は他の二人より多くもらえるのでしょうか。
② 両親と同居してその面倒をみてきたのであるから、他の兄弟のより多く相続したいと考えるのは理解できます。このように他の相続人より多く相続財産を分けて欲しいという主張をすることができる制度を「寄与分」といいます。
③ 「寄与分」という言葉のとおり、両親の相続財産の増加や維持に寄与しているから、その寄与している分を余分にもらいたいということです。

2 「寄与分」は、共同相続人だけが主張できる
① 「寄与分」を主張できるのは、共同相続人だけです。ですから、両親と同居していた長男が父より早く死亡してしまい。その長男の妻がそのまま義理の両親と同居して義父の面倒を見てきたとしても、長男の妻は共同相続人でないので、義父の面倒を見てきても「寄与分」の主張はできないこととなります。
② それでは、長男夫婦で父の面倒を見てきてが、主に長男の妻が義父の面倒を見てきた場合は、どうかという問題があります。このような場合でも、長男の妻自身は共同相続人でないから、寄与分の主張できませんが、長男は、共同相続人ですので、主として妻が面倒を見てきたとしても、寄与分が認められるべきであると考えます。
石坂
3 「特別」な寄与でなければならない
① 長男は、どの程度の世話をすれば、「寄与分」が認められるかという問題があります。
    「寄与分」が認められる場合には、「特別」な寄与が必要です。健康な両親と同居して通常の世話をしていた程度では、親子間の扶養義務がありますので、「特別」な寄与とは認められません。
② 両親の世話をしたことによる「特別」な寄与とは、父親が認知症に罹患し、徘徊をしたり、用便の介助をしたりしなければ、日常生活ができない状態で、その世話をしてきたと言うような場合でないと認められません。
③ 認知症に罹患した父親が施設に入所し、施設に時々見舞いに行く程度であれば、それは、家族として互助の範囲であり「特別」な寄与とは認められません。

4 父親の財産に維持・増加がなければ認められません
① さらに、「寄与分」が認められるためには、寄与行為によって、父親の財産が増加するか、維持されなければなりません。
  これは、父親に対する寄与行為は、愛情、助け合い、子供という身分関係による責任感等から行われるわけですが、「寄与分」は相続財産の分配にあたって財産上の問題の公平性を考えて作られた制度ですので、精神的な援助、協力、孝行が存在するだけで、寄与行為と財産的効果が結びつかない場合には、「寄与分」として、相続財産を余分にもらうことはできません。
② 長男夫婦がどんなに父親の面倒を見てきても、財産的効果がなければ、「寄与分」の主張は認められませんので、相続問題では、よく考えてよい解決を見つけて下さい。


私の主張「放置できない要約調書(手抜き調書)」


弁護士 村田 正人

 離婚事件を10件以上手がける中で、津家庭裁判所の裁判官や書記官との対応の仕方についても、一応、感触を得ているつもりですが、最近、1件の離婚事件で当事者の本人尋問調書が要約調書で渡される件がありました。

 通常は、録音テープを反約した詳細調書が作られるのですが、その1件だけは書記官がまとめた結果だけが記載された要約調書でした。私は、早速、調書異議の申し立てをしました。要約には同意していないし、当方で反約するからテープをダビングし渡してほしいと申し入れました。裁判所の回答はすげないもので、家裁事件は同意がなくても要約化できるし、テープは書記官の手控えなので交付できないというものでした。
村田正人 しかし、当事者尋問は再現性のない法廷でのドラマです。当事者の尋問は、反対尋問を経ることではじめて真実の輝きを得るのです。私は、反対尋問がうまくいき、相手の嘘があばけたときは勝訴を確信します。それほど、反対尋問は、真実に到達する重要な道のりなのです。ところが、要約調書は、法廷に立ち合った6人の人間(裁判官、書記官、双方弁護士、原被告)のうちの1人の人間(書記官)がまとめた結果でしかありません。証拠としての価値は半減以下です。
 また、当事者の尋問調書は、原審だけではなく、控訴審での控訴のためにも必要なのです。裁判は人間が行うものですから、間違いがあることを前提にして3審制があるのです。調書の要約化は、原審裁判所に誤りはないという原審裁判所のおごりのあらわれです。従前、地裁で行われていた離婚事件は、法改正で家裁の扱いとなりましたが、録音テープの反約がなされず、要約調書ですませようとする意図が、反約費用の節約のためであるとしたら、それこそおおごとです。

 平等な手続きで裁判を受ける権利、国民の裁判を受ける権利の侵害です。だから、私は、1件でおきた調書の要約化だからといって放置しておくことができないのです。


賃貸マンションを相続したら


弁護士 伊藤 誠基

 父が生存中,ある大手不動産業者と契約して業者による一括借上げ方式で所有地に賃貸

マンションを建設し,賃料収入を得ていたが,死亡後、長男が二人兄妹の長女に相続放棄を求めてきた事案がありました。ここではよくある事例として紹介します。

 相続人は二人なのですが,兄の説明では,マンションの建設資金は土地と新築したマンションを担保に父が銀行から1億円借り入れていたので,マンションの価格と同等の借財が残っており,遺産価値としてはゼロ,おまけに高額の借財があるので放棄した方がよい,借金は兄が支払っていくというものでした。

 伊藤写真ところで,一括借上げ方式で自己所有地に賃貸マンションを建設させる契約は,大手不動産業者により「土地の有効活用」として大々的に宣伝されています。建設資金は金融機関からの融資でまかないますが,賃料収入から銀行ローンを返済しますので,自己負担がないというふれ込みです。話はそれますが,不動産業者が業績悪化により賃料減額を求めてきたというトラブルも発生しています。

 事案に戻りますが,兄の説明は正しくありません。相続開始時は遺産と借金が等しければ計算上遺産価値はゼロですが,一方でこの物件は賃料という収益を発生させます。事案のマンションではローンを支払っても年間300万円を超える賃料収入が得られます。

 遺産であるマンションの賃料は遺産そのものではなく,遺産分割の対象にはなりませんが,その賃料収入は遺産分割協議が成立するまでは各相続人が法定相続分の割合で取得するというのが最高裁判例です。

 それに,父の銀行ローンは兄が支払っていくといっても,もし相続放棄できる期間(3か月)が経過していれば妹も借金の2分の1は相続してしまいます。ローン返済途中で事業が行き詰れば,妹も借金をかぶります。

 この場合,妹の選択としては,賃料収入を得たいなら兄と共同相続するのも一案です。しかし,共同経営は避けた方がよいかもしれません。ならば,兄に単独相続させて,妹はお金(代償金)をもらう方式がよいでしょう。その金額ですが,将来の賃料収入全額を取得することはできないので,相当程度の減額を覚悟しなければならいでしょう。

 最後に相続税ですが,遺産の評価額から借財を控除できますので,課税されません。

 


木曽岬干拓地・探鳥会に参加して


 弁護士 森 一恵

 

森弁:写真1 はじめに

私は三重弁護士会と中部弁護士会連合会の公害対策環境保全委員会に所属しています。公害対策環境保全委員会では,公害防止と自然環境保全のための調査,現地視察等を行っています。

このたび,現地視察の一環として,日本野鳥の会・愛知県野鳥保護連絡協議会共催の木曽岬干拓地・探鳥会に参加したので,報告させていただきます。

2 木曽岬干拓地とは

  木曽岬干拓地とは木曽川河口左岸の愛知県と三重県にまたがる干潟を干拓した湿地です。日本野鳥の会の調査によると,冬季にはチュウヒ,ハイイロチュウヒ,コミミズク,コチョウゲンボウ,ハヤブサ,オオタカ等希少な猛禽類がねぐらとして利用しています。秋の渡りの時期にはショウドウツバメが渡りの途中の採餌場所やねぐらとして利用しています。木曽岬干拓地は,鳥類の繁殖や生息のために,重要な自然環境になっています。

3 木曽岬干拓地・探鳥会の意義

  三重県は木曽岬干拓地にメガソーラーを建設する計画を立てています。木曽岬干拓地にメガソーラーが建設された場合,猛禽類の餌となっている小鳥類,ねずみ類の減少が懸念され,生態系の最上位に位置する猛禽類の繁殖や生息環境の悪化が懸念されます。自然環境は一度破壊されると,元に戻すことは不可能です。

日本野鳥の会・愛知県野鳥保護連絡協議会は,定期的に探鳥会を実施し,鳥類の繁殖や生育環境の観察・調査を行い,観察・調査結果をふまえて,メガソーラー計画に対する反対意見や公開質問状を提出してきました。

今回の探鳥会では,会員の方々から鳥類の繁殖や生育環境保護に向けた活動についてお話をうかがうとともに,干拓地上空を飛行する猛禽類を実際に双眼鏡から観察することができ,貴重な経験をさせていただくことができました。公害対策環境保全委員会の委員として,探鳥会で得た経験を今後の環境保全活動に活かしていきたいと考えます。


「解雇の金銭解決化」は解雇自由化の一里塚


弁護士 加藤 寛崇

 最近、政府・財界から「解雇規制の緩和」「解雇の金銭解決」の要求が強まっており、ニュースでもしばしば目にします。日本国における解雇規制は厳しすぎて企業の国際競争力を低下させる、もっと解雇ルールを「明確化」すべきだ、金銭補償をする代わりに解雇を認めて「雇用の流動性」を図るべきだ、といった議論です。

 これらの議論を聞いていると、あたかも日本国の解雇規制は厳しすぎて企業ががんじがらめに縛られているような印象すら受けますが、労働事件に接する実感とは大きく異なります。

 加藤法律論や制度論は脇において、解雇事件の実情として考えてみると、法律上の解雇規制は、直接的には、解雇された労働者が訴訟で争った場合に、その解雇が無効と認められるかどうかという問題です。現実問題として、解雇された場合に訴訟等の法的手段に踏み切るのは大きな負担であって、容易に踏み切れないことも珍しくありません。加えて、解雇規制のルールが不明確だということ自体はその通りで、極めて曖昧な要件で解雇の有効・無効が判断されるのが実情で結果を予測しづらい面があるので、労働者にとっても訴訟に踏み切る判断は一層困難なものになっています。そうした実情から、安易で乱暴な解雇を目にすることも稀ではありませんし、「泣き寝入り」になっていることも少なくないと思われます。また、ある調査結果によれば、東京地裁において訴訟で判決まで至った雇用終了事案では、その約7割は解雇が有効とされており、とても労働者が有利な実情にあるとは言えません。

 それでは、解雇ルールを「明確化」すべきだという議論が正しいのかといえば、そうとも言えません。少なくとも、近時要求されている解雇ルールの「明確化」というのは、「雇用維持型の解雇ルールを労働移動型ルールに転換するため、再就職支援金、最終的な金銭解決を含め、解雇の手続きを労働契約法で明確に規定する」というもので、解雇をするための手続を明確にするということに過ぎません。要するに、「こういうことをすれば確実に解雇できる」と定めようというものです。

 そして、「解雇の金銭解決」として議論されているのは、解雇が無効となった場合には、本来は、使用者側は、労働者を使用しようとしまいと賃金を支払い続けなければならないのに、一定の金銭を支払うことで労働関係を終了させることができるようにする、というものです。ここで支払うべき金銭は、今後労働者に支払い続けるべき賃金よりは低額になるでしょうから、結局のところ、解雇が無効になった場合に使用者が被るコストを軽減するものです。

 近時の調査結果によれば、訴訟に至らない労働審判における雇用終了事件の解決金の中央値は100万円で、200万円未満が9割以上にのぼります(東京大学社会科学研究所「労働審判制度についての意識調査基本報告書」)。解雇が無効とはいえない事件も含んだ数値であるにせよ、これが雇用を喪失した労働者に対する補償だと考えると、おどろくほど低額です。労働審判制度が、手切れ金と引き替えに雇用関係を終了させるという「解雇の金銭解決」を先取りしている実情を示しています。しかし、注意すべきことは、労働審判では、使用者も受け入れる結果でなければ解決に至らないということです。つまり、この程度の数値であっても、使用者が、訴訟まで持ち込まれて敗訴した場合のコストも考慮して受け入れた水準だということです。上記のとおり、敗訴しても最終的には金銭解決が可能になるとすれば、この解決水準はさらに押し下げられることでしょう。

 「解雇ルールの明確化」という名の「解雇の金銭解決化」は、結局、労働者の権利を弱めるものでしかありません。今後、さらにこの種の議論が持ち上がってくることも予想されますが、このような法改悪は阻止しなければなりません。


公正証書遺言について


村田雄介弁護士 村田 雄介

 遺言書の内容としては、「遺言者名義の○○銀行の口座○○の預貯金を、長男に相続させる」「遺言者は、遺言者の有する不動産○○を妻に相続させる」など、遺産の分配の方法を記載することが一般的ですが、そうでない場合もあります。もちろん、記載すべきは遺言者の法律行為に乗っとった意思表示に関するものですので、感情的な表現を書いても法律上は何ら意味はありませんが。

 例えば、自分の生命保険の受取人の変更を遺言書の内容に盛り込むことがありえます。これは、受取人の変更は、保険会社の変更手続きに相当程度時間がかかることが予想されるため、変更手続き中の不慮の事態に対応するためには大変有効です。

 このような通常とは異なる内容を盛り込む場合には、自分で作成する自筆証書遺言よりは、公正証書遺言が望ましいと言えます。公証人により、遺言者の意思確認がしっかりと行われるからです。

 公正証書遺言を作成するには、公証人や証人の立会いが必須ですが、これは公証役場でしか作成できないというものではありません。既に入院されていて、公証役場に赴くことが難しいという方は、病院で作成することもできます。入院中の方や自宅療養中の方でも作成できるということを覚えていて頂きたいと思います。

 最近は、遺言書を作成する方が多くなってきていますが、どうような方法で、どのような内容のものを作りたいか、お気軽にご相談下さい。

 相続が開始した際に、相続人間の争いが少しでも少なくするためには、遺言書を作成することが最も効果的だということも覚えていてもらいたいと思います。





ページのトップに戻る