2016年夏

三重合同法律事務所事務所コラム

2016年7月

2016年夏


 暑中お見舞い申し上げます。
  参議院議員選挙の結果は、改憲勢力が三分の二を占めることとなりました。安倍政権にとって、憲法改正の発議を出せる条件は整いました。今後、時期を見て憲法「改正」問題が大きな政治課題となってきます。
 また、安倍自民党の経済政策は、大企業と富裕者には利益をもたらしましたが、多くに人々には、その利益はしたたり落ちず、生活が豊かになったという実感を持つことができでおりません。
 私達は、これからも、皆様とともに、憲法改悪を阻止し、より良い社会をめざして、進んでいきたいと考えております。
 今、しばらく暑い日が続きますので、お身体ご自愛下さい。


成年後見制度の利用促進法とは


 

石坂写真

弁護士 石坂 俊雄

風子  爺々、「成年後見制度の利用促進法」が今年の5月13日から施行されているとい聞いたがどんな法律。
爺々   この法律は、我が国には認知症の人が462万円、その予備軍が400万人いると言われており、年々増加する傾向にあるため、後見人の制度の利用を進めるための法律だよ。
風子 ふーん、どんなことが書いてあるの。
爺々 施策として11項目にわたり、色々書かれているが、主なものは、①後見人が選任されると本人の権利は制限されることになるが、その権利制限がもう少し是正できないか検討して欲しいとか、②身よりも資産もない方が認知症になったときに後見人の申立人を市町村ができることになっているが、その活用をもっとすすめるべきだとか、③お金のない人のために第三者が後見人になったときに市長村が、後見人の報酬を助成する制度を充実させるとか、④裁判所を含む関係機関に人的体制の強化を求めることなどが書いてあるよ。
風子 以前、後見人が選任されると、本人の選挙権がなくなり、選挙権まで奪う必要性がないのではないかということで、選挙権は回復されたわね。それ以外にどんな権利制限を是正して欲しいと言ってるのかしら。
爺々 例えば、公務員になる資格とか、会社の取締役になる資格とか奪わなくてもいいのではないかという議論がされているようだね。
   しかし、これは、なかなか難しい問題でね。本人が、意味を分からずに契約をしたときに、今なら、後見人が付いていると言うことだけで契約の取消ができるんだよ。それが、公務員資格などを認めると公務員として仕事をしているのだから、契約の意味は理解していたと言われると、簡単に契約の取消ができなくなるよね。
風子 本人のとって良いことであると考えて決めたことが、別の面では不利にはたらく可能性があるのね。
爺々 そうだね。また、後見人が必要な人は、財産を持っている人だけではなく、財産のない人も、入院するための契約、施設に入る契約、介護事業者との契約など自分では契約する能力がないから後見人は必要だよね。
   ただ、弁護士などの専門家が後見人になれば、後見人の仕事に対する報酬が必要になるよね。その費用を本人が出す能力がない場合は市町村が助成する制度がより充実すれは、認知症の方が安心して生活できるようになるので、もっと助成制度はすすめる必要があるね。
風子 ところで、爺々、今年の夏もトライアスロンの大会にでる予定はあるの。
爺々 ああ、7月はすでに参加したよ。あと、8月、9月に出場予定をしているよ。私より年寄りは、多くて10名、少ないと1名程度だが、真ん中より少し後ろぐらいでゴールするから、まずまずだね。
風子 まあ、無理せず、完走をめざして下さいね。


参議院選挙で考えたこと


弁護士 福井 正明

Exif_JPEG_PICTURE 麻生副総理が、「ある日気づいたらワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんです。誰も気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね」と発言し、物議を醸したことは記憶に新しい。
 正確には、「ナチス憲法」など制定されたことはなく、1932年7月ナチスが選挙で第1党を占め、同年11月の選挙では議席を減らしたが、第1党を維持し、ついにヒンデンブルグ大統領はヒトラーを首相に任命した。そこからナチスのむき出しの暴力支配が行われることになる。1934年2月27日いわゆる「国会議事堂放火事件」を機に、ヒトラーは、ヒンデンブルグに迫って「民族と国家防衛のための大統領令」と「ドイツ国民への裏切りと反逆的策動に対する大統領令」(ワイマール憲法の国家緊急事態条項による「大統領令」)を使って、基本的人権に関する主な条項「表現の自由、集会結社の自由、労働基本権」を停止し、反対派政党議員の逮捕、監視、抑圧を行い、ナチ党員の反対者に対する熾烈な組織的暴力・強迫・威迫によって、身の危険を顧みず異を唱える者はいなくなった。
 そして1933年3月23日「全権委任法」(「授権法」)が制定された。 この段階で、ワイマール憲法を超える立法権を、政府、即ち、ヒトラーが掌握したのである。しかし、「ナチス憲法」は制定されなかった。というより、制定する必要が無くなってしまったのである。
 ワイマール憲法は残っていたが、ナチス支配の下では、「民族共同体」こそが価値の根源であり、その意思を体現する総統の指導が、「国家の民族の指導原理」であるというおぞましい独裁体制にすり替えられてしまっていたからである。優生保護が叫ばれ、障害者に対する人体実験と強制断種が行われ、アーリア人種の純血の保護が叫ばれ、ユダヤ人狩りと強制収容所での虐殺が平気で出来た。
 何故、こんなことが法的に出来たのであろうか。
 それは、近代憲法における「立憲主義」とは、そもそも国家権力が濫用されないように、国民の権利を条文で約束する契約(社会契約)なのに、ナチス政権下においては、憲法が停止された状態(国民の権利を守る約束がない状態)であったから、といえる。それはワイマール憲法自身が、「憲法停止の非常大権」を大統領に与えていたことによる。国会議事堂放事件に乗じたヒトラー首相の迫りに対し、ヒンデンブルグ大統領がこの「緊急条項命令」を発令し、国民の基本的人権の保障を停止した、ということが、誤りの始まりである。
 そもそも国会放火事件と国民の基本的人権の停止命令には何らの関連性も必要性もない。
 安部首相は、大規模災害や外国からの武力行使があった場合、内閣で基本的人権に制約を加えるいわゆる「緊急事態条項」を加えることを主張しているが、これらの場合、何故、基本的人権が制限されなければならないのか全く説明になっていない。基本的人権は尊重しながら、これらの場合、避難させたり救助させたりすることは既に「災害対策基本法」など、現行法に規定があり、憲法の人権保障規定を停止する理由は全くない。
 ワイマール憲法の非常大権の二の舞はしてはならない。
 理論的にも「緊急事態条項」や「非常大権」は、人権保障規定の凍結であることを忘れてはならない。「大規模災害」や「外国からの武力行使」などは「ドイツ国会議事堂放火」と同じまやかしに利用される。
 次に、何故ナチスが「ナチス憲法」を制定しなかったのか。立憲主義は権力を縛るから、独裁制においては「立憲主義の憲法」は邪魔になるからである。
 人民に対して、指図するのは総統命令であり、その強制力の源泉は「(アーリア)民族共同体」の意思を体現するヒトラー総統であったのである。このようにして、新たな政党の設立は禁止され、全ての批判勢力を粛正して大虐殺は行われた。
 その体制下に1934年4月24日、「刑法及び刑事訴訟法改正のための法律」によって、「反逆及び売国行為の罪に対する判決のため、民族裁判所を設置する」、「民族裁判所の判決に対してはいかなる法的手段による対抗も許さない」と規定される「民族裁判所」が設置されたのである。
 その初代長官には、ヨエルンスが就任した。ヨエルンスは、ローザルクセンブルグやリープクネヒトらの虐殺事件の担当検事でありながら、犯人に対する尋問を行わず、勾留請求も行わず、勾留後も犯人らに保釈を与え、軽罪を約束し、また判決前に被告人の逃亡を黙認した人物であった。
 「民族裁判所」の目的は、その4代目パジリウス長官が述べたように「裁判することではなく、国民社会主義の敵を抹殺することである」、またゲッペルスは、「判決が合法的か否かは問題ではない、むしろ判決の合目的性のみが問題なのである。裁判の基礎とすべきは、法律ではなく、犯罪者は抹殺されなければならないとの断固たる決意である」と述べている。
 この「民族裁判所」はドイツ敗戦まで続き、約5000人が「合法的に」死刑判決を言い渡された。
 人権保障機能を果たせなかった。敗戦後、「民族裁判所」の裁判官は、殺人罪で起訴され、「民族裁判所」で死刑執行された人を含め、有罪判決を受けた者の名誉は回復されたが、一旦、立憲主義を放棄してしまうと、権力者は、殺人行為さえ「合法的に執行する」という例である。その始まりが、ワイマール憲法下の大統領の「緊急命令」「非常大権」による基本的人権の停止にあったことは忘れてはならない。


遺言をめぐる最近の話題


伊藤誠基

弁護士 伊藤 誠基

〈遺言の裁判記事

最近,自筆証書遺言をめぐる裁判記事が目につくようになっています。本格的な高齢化社会を迎え,法律分野で今最も関心が持たれているテーマです。何が問題となっているのか,いくつかご紹介します。

〈自筆証書遺言とは〉

 遺言は自己の財産を死後誰に承継させるのかを記載した法律文書です。作成方法は通常,自筆で作成する自筆証書遺言と公証人に作成を依頼する公正証書遺言の二つがあります。今回取り上げるのは自筆証書書です。

 その場合,民法は厳格に要式を定めています。①全文自筆であること②日付の記載③署名,押印する,の3点が要件となります。

 本人が作成したことが明らかでも,3点セットを外した遺言書は無効です。

 ワープロで作ったり,スマホの動画で遺言を記録させるのも無効です。

 一方,カーボンで複写したものでもよいとした最高裁判所判決があります。

〈赤ボールペンの斜線が入った遺言書〉

 最高裁は一般的には斜線を入れるのは「遺言の効力を失わせる意思の表れ」として無効と判断しました。おもしろいのは地方裁判所も高等裁判所も有効としていたのを最高裁がひっくり返したことです。

〈押印の代わりに拇印〉

 押印とは通常は印章を使うのですが,拇印は。最高裁は有効としています。しかし,署名は自署に限ります。氏名のゴム印は無効です。

〈押印の代わりに花押〉

 最近の報道によると,最高裁は有効とした高裁判決を覆し,無効としたようです。花押を押印の代用にする習慣はないという理由です。戦国時代の武将が使っていたやつですね。

〈日付もあなどれない〉

 「平成28年8月吉日」は無効です。特定の日を意味しないからです。他方,「平成2000年1月1日」と書かれた遺言書を有効とした地裁判決があります。「大晦日」も有効でしょうね。遺言をした実際の日と違った日付を書いた場合,無効とした高裁判決があります。

〈自筆の遺言書は手軽ですが〉

 慎重にしないと無効とされるおそれがあります。それに遺言を実行する前に家庭裁判所に持ち込んで「検認」という手続を踏む必要があり,その時遺言の存在を他の相続人に気づかれますね。手数料がかかりますが(僅かです),公正証書遺言がよいと思います。


2016,IALANA(国際反核法律家協会)総会に参加して


森一恵 2016

弁護士 森 一恵

【はじめに】

 私は4月15日から4月18日まで,スイスで開催されたIALANA総会や関連イベントに参加した。IALANA総会では,非核三原則の法制化の取組に関して,スピーチする機会を与えていただいた。これから人生初体験の英語でのスピーチを中心に,見聞した出来事をご報告させていただきたい。

【初日(公開イベント)】

   4月15日は,ローザンヌ大学での公開イベントである。主宰者による歓迎の挨拶の後,核抑止と武力行使の禁止,マーシャル訴訟等に関するスピーチを聴講する。公開イベント終了後は,小レセプションに参加した。

【2日目(IALANA総会)】

 1 4月16日は,スピーチ当日である。

   まず,参加メンバーの簡単な自己紹介が行われる。欧米諸国はもちろん,旧ユーゴスラビア,オーストラリア,ニュージーランドと世界各国から参加している。午前中は,反核戦略,核軍縮,マーシャル訴訟等各国の参加者のスピーチを聴講する。

 2 午後から自分のスピーチ本番である。

   日弁連憲法問題対策本部・核廃絶PT,日本反核法律家協会に所属しているという立場,非核三原則の法制化を試みることとなった経緯,非核法制定に向けた決意を説明する。NHK教育テレビ番組のスーパープレゼンテーションのように,かっこよくスピーチするのが理想だったが,用意した文章の棒読みで終わった。

   どの程度通じたかは不明であるが,左隣のオーストラリアの先生から「Good」と言われたので,多少は通じたに違いないと安心した。

 3 スピーチが終わり,夜は参加メンバーとの懇親会が行われる。

私の右隣にはフランス人女性が座っている。彼女は「日光に行ったことがある。」と言っていた。日光と言えば東照宮なので「見ざる,聞かざる,言わざる」と眠り猫をゼスチャーしてみると,やはり東照宮を観光したらしい。外国の方との懇親会は,満足に会話はできなかったが,それなりに雰囲気を楽しむことができた。

【3日目(IALANA理事会)】

   4月17日は,理事会である。役員,理事の選出,財政状況の報告等が行われた。

【4日目(ジュネーブでのイベント)】

   4月18日の朝,ローザンヌを出発してジュネーブに向う。イベントでは,核軍縮に向けた様々な取組みについて,市民団体を交えた討議が行われた。4月19日朝,ジュネーブを出発。翌20日,日本に帰国する。

【終わりに】

  私はこれまで,非核三原則を法制化すべく,検討を重ねてきた。非核三原則法制化を実現するためには,国内だけでなく海外に向けてのアピールも必要になってくる。引き続き,非核三原則法制化に向けて,勉強と検討をしていくのはもちろんであるが,語学能力も身につけていきたい。


保険契約にご注意


弁護士 加藤 寛崇

 日本人の多くは生命保険をかけるし、自動車を持てば強制保険とは別に任意の保険契約をするのも常識ですが、これらの保険は内容が複雑なことも少なくありません。

先日は、ある交通事故の訴訟で、地裁判決で保険金の扱いを間違っていたのが高裁判決で正されるということもありました。

通常、交通事故の被害に遭った場合には、加害者が任意の自動車保険契約をしていれば、その保険会社から賠償金が支払われます。

しかし、自分やその家族が契約していた自動車保険があれば、その契約内容次第では、その保険から一定の支払を受けられる場合もあります。このように自分側の保険から支払を受けた場合、その既払金は加害者側から支払ってもらう賠償金から引かれる場合もあれば引かれない場合もあり、それは保険の内容によって左右されます。さらに、受け取る保険金が「人身傷害保険」などと呼ばれるものに当たる場合で過失相殺が問題となるケースでは、加害者側から賠償金が支払われる前に人身傷害保険金を受け取るか、その後に人身傷害保険金を受け取るかで、トータルとして確保できる金額に差が生じることもあります。しかも、支払を受ける保険金によって、事故の時点から支払の時点までの遅延損害金に先に充てられるかどうかといった点でも差異が生じます。

このように性格がややこしいので、この扱いを知らない弁護士も意外と少なくありません。弁護士だけでなく、裁判官も分かっていないことがあるくらいで、私の扱った上記事件でも、人身傷害保険金の支払がなされた場合の処理を間違っていた地裁判決が高裁判決で是正されたというものでした。このような間違いが生じるくらいですから、よほどの注意が必要です。

生命保険でも内容を確認しないままに契約を結んだり放置していることは少なからずあって、生命保険金の受取人を変更すべきだったのにしないまま亡くなられて不都合が生じるといったケースも見受けられます。

誘われるままに保険契約を結んでいる人も意外と多く、自分がどういう契約をしていて、いざというときにどのように利用できるのか分かっていないことも少なくないかと思います。何かあったときには、一度は保険証券や約款を持参して弁護士に相談した方がいいでしょうし、自分が契約している保険の内容は理解しておくべきです。

 よく「保険に入る」という言い方がされます。これは、保険という「組織」のような存在に入ることで守られるという安心感を抱かせるのに役立っているように思われます。しかし、保険はあくまでも契約であって、契約の効果を超えて守ってくれることはありません。


会社側からみた就業規則等について


弁護士 村田 雄介

写真(雄介) 一定の事業規模になると就業規則を制定する必要がありますが、これは事業所毎に作る必要があります。同じものを流用しても構いませんが、あくまで届出は事業所毎です。そして、これは従業員に周知しておく必要がありますので、基本的には、従業員に配布すべきものでしょう。なんと言っても、就業規則は、雇用契約の内容になるもので、会社にとっても、従業員にとっても、大切なものです。

 就業規則の内容は、特殊な業務でない限り、ほとんどの会社で似たり寄ったりの内容ですが、あるとないとでは大変違います。お互いにグレーな部分が減り、無駄な争いが減らせるというのは会社や事業主にとっても大きなメリットです。就業規則をつくってない方は、会社を設立してなくとも出来る限り作るべきだと考えます。

 最近では、企業秘密の奪取が問題になることも多く、退職した従業員がノウハウ、顧客リスト等を持ち去って、自分で事業を開始するということもあります。役員が競業を行った場合には、競業秘止義務違反で損害賠償請求が可能ですが、これが従業員の場合には、損害を請求することはそう簡単ではありません。

 このような従業員による企業秘密の奪取行為を防ぐためには、企業秘密が不正競争防止法上の「営業秘密」にあたるようにしておくことが肝要です。就業規則で秘密保持義務を課すだけでは「営業秘密」にはあたりません。まず、ノウハウや顧客リストを「営業秘密」として扱うという規定を作り、従業員への教育をし、「秘」「極秘」などの印鑑を押し、保管場所を固定するなどして実質的にも「営業秘密」として扱うことが必要です。

 これらの対策をすることは大変なことではありますが、ことが起こってからではリカバリーできませんので、まだ対策をされていない方は是非お早めにご相談下さい。





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