2019年元旦

三重合同法律事務所事務所コラム

2019年1月

2019年元旦


  新年明けましておめでとうございます。第3次安倍政権が発足して、約5か月が経過しました。その間に沖縄知事選では玉城デニー氏が当選するなどし、辺野古への基地移設に対する沖縄県民の反対の意思が明確に示されましたが、日本政府は辺野古の埋め立てを諦めないどころか、2か月中断していた工事を再開し、強行に推し進めようとしています。憲法改正、原発の再稼働、生活保護費減額、消費税増税等、現政権の問題には枚挙に暇がありません。一つ一つの問題について真摯に向き合い、平和な暮らしと戦争放棄をした日本国憲法を守るために皆様と共に力を尽くしたいと思います。本年も宜しくお願い致します。

巻頭用


防災訓練


弁護士 石坂 俊雄

石坂写真

風子: 爺、昨年10月津市の防災訓練に参加したんだって。どうして参加することになったの。
爺 : 誰でも参加はできるのだが、爺は、自治会長をしているので役職上も参加せざるを得なかったからだよ。
風子: どんな規模の訓練だったの
爺 : 参加団体は、行政、議会、消防、自衛隊、海上保安庁、自治会、医師会、薬剤師会等である。参加人数1,100人の大規模訓練だよ。広大な場所が必要となり、津市久居にある自衛隊のグランドを使用して行われたのだよ。
風子: どんな訓練をしたの。  
爺 : ヘリコプターによる救助訓練、医師のトリアージ(緊急に治療の必要な被害者から治療をするために被害者の選別を行う)、倒壊建物からの救助、家屋内の対処法、防災器具の使用方法、土嚢の作り方、地震体験車への乗車などがあったよ。
風子: 爺の自治会では、どの訓練に参加したの。
爺 : 自治会は、防災器具の使用方法と土嚢の作成及び積み方を消防の人に教えてもらったんだよ。
風子: 具体的にはどんなこと。
爺 : 防災器具とはね、発電機の使用方法だよ。最新の発電機は、燃料が、ガソリンではなく、屋外でバーベキューをするときに使うのと同じガスボンベ2本だったね。
風子: ガスボンベだと、安全で、長期間保管ができるからいいわね。どのくらいの時間発電できるの。
爺 : それが、運転時間が約1時間と短いのが難点だね。燃料が、ガソリンの発電機ならば、もっと長時間運転可能なのだが、ガソリンは、保存期間が短いのと保存場所の確保に難点があるね。
風子: 一長一短があるのね。その発電機は簡単に移動できるの。
爺 : そこが問題で、重くて、大人一人で運ぶことは困難だね。もっと軽量化が必要だね。
風子: 弁護士会は災害訓練をしているの。
爺 : 弁護士会には、災害対策委員会という委員会があり、爺も委員だよ。
風子: どんなことをしているの。
爺 : 災害直後には、弁護士への需要はないだろうが、しばらくすれば、様々な法律問題が発生するんだよ。
風子: 例えば、どんなこと。
爺 : 隣家が自分の家に倒れかかっているがどうしたらよいかとか。被災した借家が危険なので出て行ってくれないかとか。会社が被災して事業継続が難しいので退職してもらえないかとか。新築した家が倒れ、ローンが残っているがどうしたらよいか等、多くの相談が寄せられるんだよ。
風子: そうか、災害に遭うと色々と問題が出てくるのね。
爺 : 弁護士会は、県と相談事業の方法などについて協定を結んで相談活動がスムーズに行われるようにしているし、災害が起きたときには、通常の相談とは異なる相談が持ち込まれるため、そのための研鑽をしているのだよ。
風子: そうなんだ。ところで、爺、昨年はどんなスポーツをした。  
爺 :  昨年から自転車で速さを競わずに時間内にゴールをするロングライドの自転車の大会に出ているんだよ。
風子: 例えば、どんな大会に出たの。
爺 : 9月に淡路島150㎞を1周する大会に参加したよ。ゴールするのに休憩時間も入れて8時間かかったね。1,000人以上が参加したが、マイペースで走ればよく、楽しかったよ。


路面清掃業務における「官民談合」の是正


 弁護士 村田 正人

村田正人写真 三重県の路面清掃業務委託は、平成18年度の官民談合事件の摘発以降、指名競争入札から条件付き一般競争入札に改められた。しかし、入札参加資格として施工実績200km以上の制限を設けたので、実質的には指名入札当時の既存7社の入札しか有効としない制限がかかっていた。そこには、新規参入業者が参入できる余地はなかった。その結果、最低制限価格よりもはるかに高い高額の落札が続き、しかも、中勢地区、南勢地区では、地元の「いつもの業者」の1位不動が続いていた。東紀州地区でも地元の2業者が判で押したように1年交替で落札するという不自然な落札が続いていた。

 これに対し、新規参入のH社が平成26年度の入札に新規参加しようとしたところ、三重県は、突然、1年契約を2年契約に改め、入札参加資格を一挙に2倍の400km以上とした。このため、200kmの実績しかないH社は、最低制限価格で入札し、本来であれば落札できたにもかかわらず、入札は失格・無効とされ、地元の「いつもの業者」が高め落札で落札した。

 平成27年度の路面清掃業務(伊勢サミットのため1年前倒しで、実質は平成28年度の事業)でも、H社が最低制限価格で入札したにもかかわらず失格・無効とされ、地元の「いつもの業者」の高で落札した。

 しかし、三重県のほかの公共事業は50%以上が最低制限価格での入札となっている。路面清掃業務の分野だけが既存7社の利益擁護の制限をしているのは不合理である。そこで、三重県は、高め落札で大きな損害を被っているとして、H社は、津地裁に何度も住民訴訟を提起した。そして、平成30年度の入札の差止めを求めた3度目の住民訴訟をしている中、三重県は平成30年度から入札参加資格を130km以上に引き下げた。すると、H社の最低制限価格での入札と競争するために、対象4地区の全てで既存業者は、最低制限価格で入札をせざるを得なくなった。そして、くじ引きで落札が決められ、H社が東紀州地区を落札した。その結果、今後、三重県の路面清掃業務では新規参入のH社を排除できなくなり、北勢地区、中勢地区、南勢地区、東紀州地区の全ての地区で、官民談合と疑われるような「高め入札」と地元の「いつもの業者」の落札は実現できなくなるだろう。これは、路面清掃業務で無駄な公費の支出をしないことになり、県民の大きな利益である。

 ところで、三重県は、住民訴訟中、全国都道府県に対し、路面清掃業務の入札についてアンケート調査した。このような全国調査は、問題になる前にしておけと言いたいのであるが、アンケート調査のまとめでは、随意契約が2県(福井、長野)、指名競争入札が16県(青森、岩手、栃木、千葉、東京、石川、静岡、愛知、奈良、島根、岡山、広島、香川、熊本、宮崎、鹿児島)、一般競争入札は8県(北海道、埼玉、神奈川、山梨、静岡、大阪、福岡、佐賀)であった。

 しかし、入札参加資格を施工距離(施工量)400km以上の経験があることを入札参加資格と定めて帰省しているところは、三重県以外には存在しなかった。それもそのはず、路面清掃業務の仕事は、1日に約26kmの作業の繰り返しであるから、高度の経験は不要である。また、最低制限価格の割り出しも市販の計算ソフトを使えば容易にわかる分野である。三重県が一般競争入札をいくら繕っても、「高め落札と1位不動」が継続している場合には、官による新規参入業者の規制とその中での既存業者の談合が強く疑われるので、今後とも県民による監視が必要である。


憲法改正発議をさせないために


伊藤写真弁護士 伊藤誠基

 

<3000万人署名の威力>

 昨夏の事務所ニュースでは「安倍9条改憲NO」の記事を書き,改憲阻止のための3000万人署名を訴えました。当事務所でも皆様にお願いし,短期間で1600名を超える署名をいただきました。改めて多くの方々が改憲の危機感を抱いておられることを痛感しました。本当にありがとうございます。

 全国集計でも2000万筆に迫っているようです。その成果や権力私物化問題などで,安倍政権が昨年の通常国会で期待していた憲法論議は全くなされませんでした。

 まだ署名されていない方がおられましたらいつでも当事務所までご連絡ください。御一人でも署名用紙をお送りします。

<憲法改正発議の時期は?>

 安倍首相は既に2020年には改正憲法を施行したいと公言しています。そのためには今年中にはどうしても国会で発議する必要があります。

 ところで今年の春は全国一斉地方選挙,5月1日は新天皇の即位,7月は参議院選挙が予定されており,スケジュール的に発議は非常に厳しいとされています。

 そのため発議時期は遅くなるのではないかという見方がある一方,安倍政権の予測不可能性から参議院選挙前に強引に推進してくる恐れがあるとも言われています。

 参議院選挙で野党共闘が成功すれば,現在は発議に必要な改憲派議員が3分の2を超えていたのがこれを割り込み改憲できなくなるので,選挙前に強硬突破してくることは十分に考えられます。気を抜けません。

<改憲4項目>

 どういう改憲案か,現在までのところ,①9条に自衛隊を明記する②緊急事態条項(緊急事態下で国民の権利を制限する)③教育無償の充実④合区解消(人口減少県でも一人の議員を選出できるようにする)の4項目のようです。

 どれも「なさけない」項目ばかりですが,9条改憲が何といっても絶対に阻止しないといけない項目です。9条改憲なくして改憲はないというのが安倍政権の姿勢ですから。

<9条改憲案がダメな理由>

 安倍首相は国民の9割が自衛隊を信頼している,9条に明記して自衛隊員に報いる必要があると述べています。自衛隊を明記しても何も変わらないとも言っております。

 これがまやかしであることは前の記事で指摘したところです。自衛隊に憲法上の根拠が付与されると防衛費がますます増大することは目に見えています。福祉,医療,教育の更なる後退は避けられないでしょう。

 ことは経済問題にとどまらず,集団的自衛権の行使に歯止めがかからなくなります。安保法(戦争法)では同盟国が攻撃され,同時に我が国の安全に明白な危険が生ずれば自衛権を行使できると定めています。限定的集団的自衛権だと説明されています。

 自衛隊が憲法に明記されれば,政府は同盟国が攻撃されたというだけで自衛隊を海外派遣できる無限定の集団的自衛権の行使が可能と言い出すでしょう。歯止めのない何でもありの状況が作られていくでしょう。

 自衛隊員への同情論などほんとに国民を馬鹿にしたとしか言いようのない低レベルの論理で世界的に先進的な9条の価値を葬り去ってもよいのでしょうか。

<国民投票に持ち込ませない>

 国会の発議がないと国民投票になりません。まずは発議をさせない,国民投票に持ち込ませないようにするのが今一番の課題です。

 一人一人ができることは限られていますが,署名に協力する,参議院選挙では野党共闘候補に投票することは誰にでもできることですので,格調高い日本国憲法を守り抜く運動に是非ご協力ください。


原水爆禁止世界大会(広島)・分科会2「非核平和の自治体づくり」に参加して


弁護士 森 一恵

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第1 はじめに

 私は2018年8月5日,原水爆禁止世界大会(広島)・分科会2「非核平和の自治体づくり」に参加し,特別報告を行いました。私が原水爆禁止世界大会に参加したのは,今回が初めてでした。これから分科会の状況を報告させていただきます。

第2 分科会の状況

1 分科会の参加者は150名,会場はほぼ満席でした。まず,運営責任者から,「ヒバクシャ国際署名」の首長賛同が全国で6割,自治体意見書決議が200議会を超えていることの説明がなされた上,非核平和の自治体づくりの必要性,住民の中にある反核平和の願いを結集すること,非核平和行政を自治体の中で広げる意義等の問題提起がなされました。

 2 次に私の方から「核兵器禁止条約の意義と条約本文を学ぶ。平和行政を進める意義」の特別報告を行いました。「核兵器禁止条約の意義と条約本文」については,条約において核兵器使用の違法性を基礎としている点,前文で「被爆者(hibakusha)にもたらされる受け入れ難い苦しみと害に留意する」と規定して被爆者の権利に配慮している点,第1条で核兵器の「使用」のみならず「使用の威嚇」も禁止している点の3点が特徴であることを報告しました。

 また核兵器禁止条約採択後の国際情勢として2017年12月10日にICANに対してノーベル平和賞が授与され,2018年4月27日に韓国と北朝鮮の間で南北首脳会談を経て板門店宣言が発表され,6月12日にアメリカと北朝鮮の間で米朝首脳会談を経て米朝共同声明が発表される等,核兵器廃絶は世界的な動向であること,「唯一の戦争被爆国」であるにもかかわらず,日本は,残念ながら核兵器禁止条約に加入していない点を報告しました。その上で「平和行政を進める意義」として,「ヒバクシャ国際署名」の首長賛同や,自治体意見書決議等により,市民社会にとって身近な行政(自治体)から日本政府に対し,核兵器禁止条約に加入するよう粘り強く働きかけを行っていくことが必要であることを指摘して,私の報告とさせていただきました。

 3 次に非核平和行政づくりについて導入発言がなされた後,全体討論となりました。

 全体討論では,自治体における平和教育の取り組み,「ヒバクシャ国際署名」の首長賛同,自治体意見書決議,非核平和宣言に至るまでの市民社会の努力について,活発な意見交換と議論がなされました。全体討論を通じて, 核兵器廃絶は市民社会の願いであることをあらためて実感しました。

第3 終りに

 原爆の熱線に耐え,再び芽を吹き成長を続けている広島城二の丸の「被爆樹木ユーカリ」(写真参照)のように,日本が核兵器禁止条約に加入するよう,引き続き私も,粘り強く働きかけを行っていきます。本年もよろしくお願い申し上げます。

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広島城二の丸被爆樹木ユーカリ


セカンド・オピニオンも活用しましょう


弁護士 加藤 寛崇

加藤 2019春事務所ニュース写真

 先般、依頼を受けたある保険金請求事件において勝訴判決を得て確定し、約1000万円の支払を受けることができました。

 この事件の依頼者は、私に相談するまでに4人の弁護士に相談したものの、勝算がないなどと言われて断られたという経緯がありました。私としても、確実に勝てると言えないのはもちろん(そもそも、弁護士は、有利な結果を保証するような説明をすることは禁止されています。)、負けてもおかしくないと見込まれる事件でしたが、請求が通る根拠もあると思ったので、やるだけやってみても良いのではないかと説明し、依頼を受けるに至ったものでした。

 いろいろな偶然に助けられたなどの事情もあったものの、勝訴して結構な金銭を得られたわけですから、裁判に踏み切って良かったのは間違いないでしょう。最初に複数の弁護士に断られた時点で諦めていたら、本来の権利が失われてしまうところでした。

 業務をしていても、既に他の弁護士に相談したとか、更には現に依頼中であるといった方からの相談を受けることもしばしばあります。証拠や事実関係の評価や法的判断は、専門家でも見解が分かれることは少なくありません。最初に相談・依頼した弁護士の説明が絶対に正しいという保証はないのですから、疑問があれば他の弁護士の意見を聞いてみるのも時には有意義です。

 最近はこの種のセカンド・オピニオンを求める相談もさほど珍しくないように思われますが、人によっては、最初の相談だけで諦めたり、既に依頼しているのに他の弁護士に相談することに抵抗があるかもしれません。しかし、自分の問題ですから、自分が納得できるようにした方がいいでしょう。もちろん、どの弁護士に聞いても有利な回答が得られないなら、それは現にそういう状況ということなので、それを前提にどうするか考えるしかありません。


外国人技能実習生について


 弁護士 村田 雄介

 外国人の技能実習制度は、建前は、技術力の海外移転という国際貢献の一環ですが、実際には、企業が安価な労働力を確保するために利用されています。また、来日する技能実習生とっても、技術を学ぶためではなく、できるだけ多くの賃金を得て、母国に持ち帰りたいという目的となっています。

 このように、建前と実体がかけ離れており、その制度もあまりに不備が多ため、不正行為が多発し、技能実習生への人権侵害が最近クローズアップされています。

 一つは、技能実習生の失踪防止のケースで散見されます。技能実習生の失踪数が2割を超えると管理団体はその後の受け入れができなくなることから、管理団体は技能実習生が失踪しないようにあらゆる手段を講じます。この点、旅券の預かり、預金口座の無断開設と預金の払戻、通帳・印鑑の管理行為はいずれも判例上(福岡高裁平成22年9月13日判決等)違法とされていますので厳に慎むべきです。

 また、技能実習生は、労働者として、労基法等の適用を受ける(名古屋高等裁判所平成22年3月25日判決等)ため、その賃金が最低賃金を下回ってはいけないし、労働時間、休日等も適切にとらせる必要があり、日本人労働者と賃金に差が出る場合には、合理的な理由がなければなりません。もちろん、妊娠禁止規定を作り、妊娠した際には解雇するなどという規定を作ったとしても、男女雇用機会均等法8条3項に反し無効となります(富山地裁平成25年7月17日)ので、違法な就業規則等にならないように注意が必要です。

 もっとも、技能実習生の在留資格は、管理団体を通じて入管に提出された実習実施計画書に従って技能実習を行うことを条件に「技能実習」の在留資格が認められています。したがって、管理団体を通じて実習先変更許可を入管から受ける場合はともかく、技能実習生が失踪した際には、在留資格が失われ、帰国を余儀なくされることになります。

 このように、技能実習生をとりまく環境は、日本人労働者と同等のものと異なるものがあるのであって、その対応には注意を要します。





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