2020年元旦

三重合同法律事務所事務所コラム

2020年1月

2020年元旦

明けましておめでとうございます。

昨年は、台風第19号や前線による記録的な大雨が各地に甚大な被害をもたらしました。被害者救済法の適切・迅速な適用とさらなる充実がなされることの重要性を実感した1年でした。今年は、災害のない平和な年であることを願わずにはいられません。

参議院選挙では、野党共闘により改憲勢力は改憲の発議に必要な3分の2議席には届きませんでしたが、安倍首相は、憲法9条の改正を「必ずや成し遂げる」と明言しています。今年は、憲法改正の発議をさせるかさせないかのターニングポイントの年になります。当事務所でも憲法9条の改正を阻止するためにできる限りのことをしたいと考えています。

安倍首相のもとでの忖度政治が改められる兆候はありません。憲法9条の平和主義を擁護しつつ、間違った政治により市民の基本的人権が侵害されることがないよう、裁判と裁判外の諸活動を通じて奮闘する所存ですので、本年もよろしくお願い申し上げます。

2020新春巻頭写真


体力をどのように維持するか


弁護士 石坂 俊雄

1 今年は、堅い話はやめ、遊びの話をします。
 私は,年十数回は、クロスカントリー・スキー、ハーフマラソン、トライアスロン、トレイルラン(山の中を走る競技)、自転車のロングライド大会等に出ております。
    このような大会に出ることが体力を維持するために必要なのです。それは、完走をするためには、それなりのトレーニングをしない限り不可能であるからです。
2 自転車のロングライド
 ここ数年,新たに始めたのが自転車のロングライド大会への参加です。ロングライドとは、100㎞以上走る大会です。競争をするのではなく、だいたい13時間程度の制限時間内にゴールすればよいという大会が全国に沢山あります。
 その一つが軽井沢を出発して浅間山を1週する大会です。距離は、約115㎞程度で累積の獲得標高は約2400mです。主な峠が4カ所あり、その合計の登り下りが2400mあるということです。これは、かなりこたえます。一番高い峠は、標高差550mで自転車を漕いでも、漕いでも峠には着きません。道はくねくねと曲がり、あそこを曲がったら頂上が見えるかと頑張るのですが、登れど登れど頂上は見えず、ぐったりとして到着します。
 しかし、若くて速い人は、スーと私などふらふらしている人を抜いて何事もないように登って行きます。脚筋力と体幹の強さの差を感じさせられる瞬間です。
 なぜ,速い人が遅い人の後から来るのかというのは、出発が整列順番で20名程度ずつ出るので、速い人でも遅く出発する人がいるからです。
3 練習不足
 このコースは、ゴール近くは、軽井沢の中心街を一部走るため、走行する車との接触に注意しないといけません。私達も恐いですが、車も自転車が並んで走っているので、うっとうしいことでしょう。
 今年は、本当に疲れ、ゴール後ホテルの階段を上る際に大腿部が疲労困憊しており、手すりを持たないと上れませんでした。風呂に入りしばらく仮眠して、やっと食欲がわいてきた状態でした。
 要は,練習が足りないということです。自転車は、夜は危険で乗れませんので、私は、夜間練習はしません。すると、練習は休日となりますから、通常は週1日となります。自宅には、エアロバイクもありますが、これは景色も変わりませんので、練習する時間は30分程度が限度のため、なかなか持久力がつきません。 
4 今年の楽しみ
    今年は、長野県の大糸線沿いの安曇野を北アルプスを見ながら走る約100㎞強、福井県の三方五湖周辺を走る130㎞までは参加を決めておりますが、それ以外にどこを走るか思案中です。
 本年もよろしくお願いします。

 石坂・syasin


三重県残土条例の落とし穴


弁護士 村田 正人

2020新春事務所新聞村田写真 三重県では、令和2年4月から残土条例が施行される。直接の契機となったのは鈴木知事が知事選挙前に紀北町を視察し、県外からの大量の建設残土が堆積され崩壊の危険を感じたからだと報道されている。知事選の直前に鈴木知事が残土条例の制定を県職員に指示した背景には、知事選の争点となることを避けたためであると思われるが、残土条例の制定は、廃棄物問題ネットワーク三重(代表 吉田ミサヲ)が平成26年6月に県議会に請願を出し県議会が平成27年6月に請願を採択したことであり、実に3年以上も、県行政は残土条例の制定を放置してきたことを忘れてはならない。県行政の放置の理由は、条例を制定するだけの社会的背景はなく、伊賀市だけの問題であるというものであった。しかし、紀北町の7カ所の堆積残土は林地開発許可を鈴木知事が与え、建設残土を堆積することを鈴木知事が認めたものであり県行政が積極的に関与したものである。7カ所の残土堆積現場は、記録的大雨が降れば崩壊の危機に瀕しており住民の不安は尽きない。ところが県が制定した残土条例は、既に許可した土地については適用がないとするものであり、7カ所に堆積された残土の崩壊の不安を除去できない。この点を不問にして、あたかも7カ所の堆積残土の危険性が解消したかのようにいうのは欺瞞である。

 紀北町の事件報道を契機に、隣りの愛知県から知らせが入った。愛知県弥富市は弥富金魚で有名な土地柄であるが高齢化により廃業する業者が増えている。廃養魚池の土地を狙って残土ブローカーが暗躍していると言うのだ。その手口は次のようなものである。養魚池の跡地を埋め立てて道路面から少し低い位の畑を作ってあげるから土を入れさしてくれと地権者に勧誘をかける。少し位の土を入れるなら良いだろうと思い同意すると、残土ブローカーは、ここに残土置場があると建設業者に宣伝し、次から次へと残土運搬車を投入してくる。気づいたときにはすでに遅い。やめてくれと言っても止めようとしない。その結果、わずかな間に10メートル近い残土の山が出来上がってしまう。警察に廃棄物処理法で訴えても残土は廃棄物ではないと言って冷淡に告訴状を突き返される。その結果、木曽三川の近くの遊休地には、いくつもの残土の山が築かれることになった。愛知県は残土条例制定の要請について嘗ての三重県と同様にその必要性がないと言って制定に向けて動こうとしない。

 地方自治体が残土条例の制定に消極的なのは理由がある。残土条例の制定には、残土を排出する建設業界の利害がからんである。抵抗勢力は建設業界と利益代弁をしている自治体の長や議員である。しかし、これでは地方自治は誰かのためにあるのかと言いたくなる。憲法では、地方自治は地方自治の本旨に基づいて行わなければならないと規定している。地方自治の本旨とは県民本位ということである。

 弥富市の事例では、建設残土の発生土は、弥富市の新庁舎の建設に伴って排出された残土も一部投入されたことが判明している。処理を請け負ったのは大手の熊谷組である。熊谷組が排出した残土は数次の下請けを経て不法投棄地に運び込まれた。弥富市も熊谷組も自らが直接に手を下したことではないとして責任を回避している。

 廃棄物処理法では事業者責任が定められており、委託料を出して処理を任せたからとしても、そこで責任が切断されるものではないという法理が長い間の住民の闘いで確立してきた。廃棄物処理法が定める責任の切断はないという法理が条理にかなったものであることは明らかであり、残土処理においても責任の切断がされてはならない。

 大手の建設業界に顔を向けている国の政治では、残土の不法な堆積を規制する法律を制定するような動きは全くない。しかし、台風19号をはじめとする記録的豪雨は、各地で土砂崩れを引き起こし尊い人命を奪っている。人為的に積み上げられ建設残土をこのままにしておいてよいものか、法の不備があれば、国民は人命の犠牲まで払わなければならないのか、今日の残土問題は政治のあり方の根本を問う問題である。


香港の人々の権利回復の闘いに共感する


 弁護士 福井 正明

  嫦  娥     李 商隠

雲母の屏風燭影深く                   雲母の屏風に燭影が深く映る

長河(天の川)漸く落ち暁星沈む       天の川は漸く落ちて輝星も沈む

嫦娥は応に悔いるべし                 嫦娥は本当に悔いているだろう

霊薬を偸みしことを          霊薬を偸んだことを

碧海晴天夜夜の心                     碧海青天を眺め夜夜傷心していることだろう

 中国の古代神話で日本人にも知られているのが「嫦娥」である。弓の名手「?」は「西王母」から不老不死の霊薬をもらいうけたが、その妻「嫦娥」は、その霊薬を偸み飲み、月に奔った。不老不死とはなったが、姿を蟾蜍[せんじょ」(ガマガエル)とされ、月で独り泣いているという話が背景の別れ歌。

 日本では月の模様はウサギが餅ついている姿と言われているが、中国の神話ではこのようにガマガエルの姿となった「嫦娥」とされる。

 上の李商隠の詩は、「嫦娥」の神話に仮託して、自分の下を去った女性を「嫦娥」になぞらえ、夜が明けるまでも眠られず夜空を眺めている自分と、その女性も「嫦娥」と同じように夜ごと傷心しているだろう、という心の痛みを詩にしているのだが、しかし、唐の頃になると「嫦娥」は「月の精」と神格化され、「嫦娥」の話もロマンチックな神話として取り上げられるようになり、日本では「竹取物語」のモチーフともなったといわれている。

 現代中国で「嫦娥」といえば「月」そのものを指すこともあり、あるいは中国の有人月探査計画のプロジェクト名にもなっている。

 さて、今回香港の中国本土への「犯人引き渡し条例」を強行採決しようとして、百万人規模の大抗議デモを何発も食らった行政長官の名前は「林鄭月娥」というようである。

 彼女の親はきっと神話のことを思い浮かべながら「月娥」の文字を入れたのであろう、月そのものと月にちなむ娥の文字が入って、「嫦娥」そのものとなった。

 彼女は選任当初は温厚な人柄だと言われていたが、自由権や民主主義制度に関する理解が薄く、反対運動を力で抑え込もうとしたりしたため、「逃亡犯移送条例」に対する反対運動は香港の親大陸派の人をも巻き込んで香港全体に波及し、その要求も、「犯人移送条例の撤回」「香港自治」「普通選挙」「警察責任者の処罰」「逮捕者の釈放」などの五大要求となった。

 「林鄭月娥」長官は「条例を議会に上程しない」といいながら、長い間、議会で撤回手続きをせず、更に香港市民の激しい怒りを買った。半年かけてようやく議会で撤回したものの、「林鄭月娥」長官は香港市民の信頼を失った。

 今、月娥長官は警察力でデモを抑止しようとしているようである。つい最近も未成年者を含む250名のデモ隊の若者を拘束した。このようなことをしていると、香港市民の信頼を回復するのは困難である。自由と人権を保証しない香港は香港ではない。国際的信用も失いかねない。

 冒頭の李商隠の詩を藉りるならば

   林鄭月娥は応に悔ゆるべし民心を失いしことを

   香港街頭抗議満つ

 というところであろうか。

 いうまでもなく香港の人権問題は中国の内政問題ではなく、国際的人権問題として世界中にネット配信されている。決して目を背けることはできない。今後も注視していかなけらばならない。


安倍9条改憲NO! 「憲法改正」の現状は


弁護士 伊藤 誠基

2020事務所ニュース伊藤写真 憲法を考える

 私の事務所ニュース記事は一昨年からずっと憲法改正問題を扱っています。

 あまりに硬いテーマだし,生活にすぐ直結する問題でもないのですが,職業柄憲法問題を避けては通れませんので,今こうなっているのかと理解していただける程度の内容で説明させていただきます。

参議院選挙で憲法改正発議は停滞

 安倍首相は憲法9条に自衛隊を明記することを含む改憲4項目を発表し,憲法改正の要件である国会議員の3分の2以上の多数で改憲発議することをもくろんでいます。

 ところが,昨年7月の参議院選挙で,それまで改憲勢力が全国会議員の3分の2を超えていたのが,全国で32ある一人区のうち10選挙区で野党統一候補が当選したことにより改憲勢力が3議席下回ってしまい,直ちに改憲に踏み切れる状態ではなくなりました。

 安倍9条改憲NO!3000万署名運動が野党共闘を促し,参議院選挙の成果をもたらしたものといえます。

改憲の進め方と現状

 憲法を改正するには,国会で改憲発議をしなければなりません。そして,改憲発議の協議の場が衆参両議院に設けられている憲法審査会です。

 改憲発議があれば,国民投票にかけられ過半数の賛同を得て改憲が成立することになります。

 国民投票を実施するには改憲手続法(国民投票法)が必要です。現在の手続法は不備がありますので,その改正をする必要があるとされています。安倍首相をはじめとする改憲勢力はまず手続法を早く改正しようとしています。ところが,衆議院憲法審査会では手続法の改正は進んでおりません。課題となっているのは改憲の賛成,反対のテレビ広告を規制するかどうかです。改憲反対の野党は規制を強く求めています。世論形成に大きな影響のあるテレビ広告を無制限に認めれば財力で結果を左右する懸念があるからです。

 改憲手続法ですらこのような状況ですから,安倍自民党の改憲4項目案は憲法審査会にすら上程できていません。

 安倍首相は3年前には2019年に憲法改正発議と国民投票を実施し,2020年には憲法改正を実施したいと表明していました。しかし,それが不可能となっているのが現状です。

私たちが求めているのは改憲ではない

 参議院選挙後に実施されたマスコミ各社の世論調査では,改憲勢力が議席を減らした結果を好意的に受け止める意見がこれを好意的に見ない意見を大きく上回っていました(好意的意見43%から50%,非好意的意見26%から35%)。

 これに対し,国民の関心事は,年金や社会保障,教育・子育て,景気・雇用の順に高く,憲法改正は最も低くなっています。

 皆が疲弊しているときに消費税を10%に引き上げる一方,日米貿易交渉では農産物で大幅譲歩し,米国から武器を爆買いし,防衛予算を5年連続大幅引き上げする安倍政権はどこを見て政治をしているのでしょうか。

今後の改憲の行方

 安倍自民党政権は今年から憲法改正の関心を高めるため,全国規模で集会を開いていくようです。その責任者の一人が元防衛大臣の稲田朋美さんです。弁護士でもある方なのに「国民のための政治という考えは間違っています(SNSで動画拡散)」と発言している国会議員です。信念があれば選挙公約でも訴えて欲しいものです。

 安倍改憲の動きは今年も注視していかなければならないと考えております。


「UNHCR WILL2LIVE映画祭2019」を視聴して


 

 

弁護士 森 一恵

9F4A0809f第1 はじめに

 私は2019年9月23日, 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)開催の「UNHCR WILL2LIVE映画祭2019」で,日本・ミャンマー合作映画「僕の帰る場所」(Passage of Life)を視聴した。

第2「UNHCR WILL2LIVE映画祭2019」とは

 「UNHCR WILL2LIVE映画祭2019」とは,紛争や迫害により,故郷を追われた難民の人々の生活状況をテーマにした映画を上映し,難民支援の輪を全世界に広めることを目的とする映画祭である。映画祭のタイトルに含まれる「WILL2LIVE」には,厳しい状況にあっても生き抜こうとする難民の人々の意志(Will to live)が示されている。映画祭で上映される映画では,困難を乗り越え逆境に立ち向かい続ける難民の人々の不屈の姿が描かれていた。

第3 日本・ミャンマー合作映画「僕の帰る場所」(Passage of Life)について

 「僕の帰る場所」も,その1つであった。「僕の帰る場所」は,故郷ミャンマーを離れて日本(東京都内のアパート)で暮らすミャンマー人家族4人(夫婦と幼い子ら)の生活実態を描いた映画であった。難民認定申請が認められず,入国管理局に収容されている夫,夫に代わり1人で幼い子らを養育する妻,日本で育ち,日本の保育園や小学校に通い,母国語を話せない幼い子らの生活実態が,リアルに描かれていた。

 この映画の後半では,妻が日本での今後の生活に不安を抱き,夫を日本に残したまま,妻と幼い子らの3人で故郷ミャンマーに戻った後の状況も描かれていた。故郷ミャンマーは生活様式や文化だけでなく,ライフライン,交通事情,インターネット環境も日本と異なる。幼い子らは故郷ミャンマーの生活や母国語に馴染めず,一緒に生活する従兄弟(妻の兄の子ら)からは,「あの子たちは外国人?ミャンマー人なの?」と言われてしまう。ミャンマー人であるために,日本人小学校に入学することも容易ではない。

 映画は,父親(夫)からの国際電話で,幼い子らが父親の声を聞いて泣き出してしまう場面で終了した。日本で難民認定申請が認められず,故郷にも馴染めないミャンマー人家族の生活実態を描くことで,難民の人々には果たして,心から安心して帰ることのできる「場所」があるのかを問いかけ,難民支援の必要性を訴える映画だと実感した。

第4 終わりに

 世界では,紛争や迫害により約7080万人の人々が住み慣れた故郷を追われているといわれている。日本では,難民問題は,まだまだ十分に周知されているとは言い難い。この映画祭をきっかけに,日本でも難民支援の輪が広がることを願うばかりである。

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不倫の第一次的責任は不倫をした配偶者にある


弁護士 加藤 寛崇

 弁護士の仕事で、不倫(不貞)に関わる事件は日常茶飯事といっていい。

 不倫をされた配偶者の一方が、他方に対して慰謝料請求できるだけではなく、不倫相手に対しても慰謝料請求できることは、よく知られている。しかし、これは決して当然のことではない。欧米諸国では、不倫相手への慰謝料請求を認めない法制度が多い。不倫はあくまで配偶者同士の問題であり、悪いのは裏切った配偶者であってその相手方ではない、といった発想である。もともと、婚姻はあくまでも契約であり、不倫は婚姻に伴う義務違反(債務不履行)である。通常、債務不履行で賠償責任を負うのは契約の当事者に限られるのが原則であり、関与した第三者まで責任を負うことはない。不倫の責任を配偶者に限定するのはおかしなことではない。

 学説でも不倫相手への慰謝料請求については否定的見解が多いが、実務は一向に変わらなかった。しかるに、最高裁2019年2月19日判決は、男性が、元妻と離婚後に、元妻の不倫相手に対して慰謝料請求をした事件で、「夫婦の一方は、他方と不貞行為に及んだ第三者に対して、特段の事情がない限り、離婚に伴う慰謝料を請求することはできない」との判断を示した。この判決でも、不倫相手が不貞行為を理由とする賠償責任を負うことは認めているが、これまで、不倫によって離婚に至ったことの慰謝料(離婚慰謝料)まで不倫相手に請求できたのが、不倫されて苦しんだことの慰謝料(不貞慰謝料)しか請求できなくなったことになる。

 単に慰謝料請求の名目が変わるだけにも見えるが、これまでと扱いが異なる可能性もある。というのも、不貞慰謝料は、あくまで不倫されたことによる精神的苦痛にとどまるが、離婚慰謝料となれば、不倫によって婚姻関係が破綻し離婚に至ったことでこうむった様々な不利益による精神的苦痛まで含む。一般的には、後者の方が、金額が高くなるとも考えられる。これまでは、不倫した配偶者と不倫相手は、連帯して(共同して)同じだけの慰謝料を賠償する責任があったのと異なってくる。その点で、不倫相手の責任を否定はしないものの、二次的なものと扱うことになる。

 不倫は古今東西からある事象だが、日本国の現行制度は、原則として不倫相手への慰謝料請求を認め、不倫した側からの離婚を容易に認めないなど、紛争を長期化・拡大させ、不毛な結果になることも少なくない。不倫をした配偶者の責任は扶養的財産分与の強化などでしっかりとらせつつ、紛争はスッキリ終わらせる方向の在り方が望ましい。F.エンゲルスは言っている。「愛情がはっきりなくなるか、あるいは新しい情熱的な恋愛によって駆逐される場合には、離婚が双方にとっても社会にとっても善事になる。ただ、離婚訴訟という無益なぬかるみを人々がわたらずにすむようにすべきであろう。」(『家族、私有財産および国家の起源』)

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裁判のIT化は構わないがオンライン提出の義務付けはやってはいけない


弁護士 村田 雄介

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 裁判のIT化の一貫として、令和元年2月からウェブ会議による弁論準備手続きが可能になります。そして、2023年には書面のオンライン提出を含めたすべてのIT化を行うようです。いつの間にそんなものが進められていたんだろうか。と言いたくなるような形で進められていたというのが率直な思いですが、うだうだ言っても仕方がないので、対応すべき部分は対応しなければなりません。

 ただ、訴状のオンライン提出を弁護士に義務付ける案が最有力である現状には憂いを通り越して呆れています。過去、オンライン提出システムを札幌地裁で導入した際に、その利用が低調であったことがあり、義務付けしないと広がらないという危機感があるのだと思いますが、利用が低調なのは、弁護士がIT化に抵抗しているわけでもなんでもなく、その必要性がなかったからだと思います。特許申請、登記申請等のオンライン申請が各省庁で導入されていますが、オンライン申請を義務付けているものはありません。弁護士は、法律の専門家ではありますが、ITの専門化ではありません。このIT化について行けず、弁護士資格を返上する高齢の弁護士がかなりの数に上るのではないかと危惧しています。そんなことになれば、弁護士業界としての損失でないでしょうか。これを座して眺めるだけの日弁連の対応にも大いに疑問を感じます。

 私自身は、裁判のIT化の内容を伝え聞いても何の抵抗感もありませんが、これを弁護士に義務化させる方向での導入は一部のITの苦手な弁護士に廃業を促しかねないものですので、その意味で反対せざるを得ないものだと考えています。

 IT化によって事務手続きが簡略化されるというメリットが唱えられていますが、IT化は、相応の事務手続きの煩雑化と隣り合わせであり、このようなメリットだけを声高に唱えるやり方には違和感しかありません。





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