村田 正人の記事一覧

三重合同法律事務所事務所コラム

村田 正人の記事

残業代請求訴訟で、高額な和解で解決した事例

2019年8月13日


弁護士 村田 正人

 Aさんは、三重県内の運送会社に10トントラックの運転手として採用されましたが、残業代が支払われていないとして、2016年(平成28年)、320万円の未払残業代の支払いを求めて労働審判を申し立てました。労働審判では、250万円を支払えとの審判が出ましたが、運送会社が異議を唱えたため訴訟に移行しました。裁判の争点は、入社の面接時に定額残業代の説明を受けているか否か、定額残業制は無効かということでした。

 Aさんが面接時に受けた説明では、労働時間は午前8時30分から午後5時30分までで、一日の給与は1万1160円ということでした。勤務は、午前6時30分ころまでに出勤して点呼を受け、車両の日常点検作業を行ったあと、午前7時30分に運送会社を出て、午前8時30分に現場に到着し、荷物の運搬作業や現場での荷物の移動作業を行うというものでした。現場での作業は、遅くとも午後4時30分ころには終了しますが、顧客からの要請に備え、午後5時30分までは現場待機をしなければなりませんでした。県外への配送が指示された日は、帰社時刻が翌日の午前2時を廻ることもありました。

 残業代の支払いが少ないことに疑問を抱いたAさんは、入社2年後に会社に質問すると、「基本給は最低賃金であり、残業代は定額残業代として支払済み。」との説明を受けました。しかし、Aさんは、採用面接時にそのような説明を受けていなかったので、明確区分性を欠いた定額残業代は無効であると主張しました。

 裁判は長期化し、2年を要しました。双方の関係者の尋問も終わり、最終準備書面を出したとき、裁判所は和解勧告を行いました。裁判の途中で未払残業代が累積していたので、請求を1024万円まで拡張しました。残業代の計算には「京都ソフト」といわれる計算ソフトを使いました。

 結局、Aさんは運送会社を退社しましたが、未払残業代のかなりの部分を認めさせる満足的な裁判上の和解となりました。勝利の要因は、求人広告、採用面接の説明、就業規則、賃金規程、給与明細書のすべてにおいて、定額残業代の明確区分性の欠如を丁寧に主張・立証したことだと考えます。


路面清掃業務における「官民談合」の是正

2019年1月2日


 弁護士 村田 正人

村田正人写真 三重県の路面清掃業務委託は、平成18年度の官民談合事件の摘発以降、指名競争入札から条件付き一般競争入札に改められた。しかし、入札参加資格として施工実績200km以上の制限を設けたので、実質的には指名入札当時の既存7社の入札しか有効としない制限がかかっていた。そこには、新規参入業者が参入できる余地はなかった。その結果、最低制限価格よりもはるかに高い高額の落札が続き、しかも、中勢地区、南勢地区では、地元の「いつもの業者」の1位不動が続いていた。東紀州地区でも地元の2業者が判で押したように1年交替で落札するという不自然な落札が続いていた。

 これに対し、新規参入のH社が平成26年度の入札に新規参加しようとしたところ、三重県は、突然、1年契約を2年契約に改め、入札参加資格を一挙に2倍の400km以上とした。このため、200kmの実績しかないH社は、最低制限価格で入札し、本来であれば落札できたにもかかわらず、入札は失格・無効とされ、地元の「いつもの業者」が高め落札で落札した。

 平成27年度の路面清掃業務(伊勢サミットのため1年前倒しで、実質は平成28年度の事業)でも、H社が最低制限価格で入札したにもかかわらず失格・無効とされ、地元の「いつもの業者」の高で落札した。

 しかし、三重県のほかの公共事業は50%以上が最低制限価格での入札となっている。路面清掃業務の分野だけが既存7社の利益擁護の制限をしているのは不合理である。そこで、三重県は、高め落札で大きな損害を被っているとして、H社は、津地裁に何度も住民訴訟を提起した。そして、平成30年度の入札の差止めを求めた3度目の住民訴訟をしている中、三重県は平成30年度から入札参加資格を130km以上に引き下げた。すると、H社の最低制限価格での入札と競争するために、対象4地区の全てで既存業者は、最低制限価格で入札をせざるを得なくなった。そして、くじ引きで落札が決められ、H社が東紀州地区を落札した。その結果、今後、三重県の路面清掃業務では新規参入のH社を排除できなくなり、北勢地区、中勢地区、南勢地区、東紀州地区の全ての地区で、官民談合と疑われるような「高め入札」と地元の「いつもの業者」の落札は実現できなくなるだろう。これは、路面清掃業務で無駄な公費の支出をしないことになり、県民の大きな利益である。

 ところで、三重県は、住民訴訟中、全国都道府県に対し、路面清掃業務の入札についてアンケート調査した。このような全国調査は、問題になる前にしておけと言いたいのであるが、アンケート調査のまとめでは、随意契約が2県(福井、長野)、指名競争入札が16県(青森、岩手、栃木、千葉、東京、石川、静岡、愛知、奈良、島根、岡山、広島、香川、熊本、宮崎、鹿児島)、一般競争入札は8県(北海道、埼玉、神奈川、山梨、静岡、大阪、福岡、佐賀)であった。

 しかし、入札参加資格を施工距離(施工量)400km以上の経験があることを入札参加資格と定めて帰省しているところは、三重県以外には存在しなかった。それもそのはず、路面清掃業務の仕事は、1日に約26kmの作業の繰り返しであるから、高度の経験は不要である。また、最低制限価格の割り出しも市販の計算ソフトを使えば容易にわかる分野である。三重県が一般競争入札をいくら繕っても、「高め落札と1位不動」が継続している場合には、官による新規参入業者の規制とその中での既存業者の談合が強く疑われるので、今後とも県民による監視が必要である。


帰還困難区域・福島県双葉町を視察

2018年8月16日


弁護士 村田正人

写真(村田2018s)

 6月17日、特別の許可を得て、福島第一原発の放射能で汚染され立ち入りが制限されている双葉町に日弁連調査団の一行として入った。首から吊るした線量計をつけて被曝線量がわかるようにした。被曝のために避難当時の状況をそのままに残す5階建ての双葉町庁舎2階には、刻刻と入る福島第一原発からの連絡事項が赤と黒のマジックで書かれた大判紙が張り出されており、原発事故直後の臨場感を伝えている。屋上に登って見ると、福島第一原発の方向には、小高い丘とその上に新興団地があり、丘裾には墓地が見える。これらを含む全部が中間処理施設の予定地となっており、環境省が6割を売買や地上権で契約済みである。環境省はパイロット事業と称してフレコンバッグの搬入と仮置き作業を先行している。庁舎を出て海岸部に向かうと平成18 年に環境省が快水浴場と認定した海辺に建つ公共の海の家があり、その3階部分までが津波で打ち抜かれガラスは破壊されたままである。さらに移動して町内のメイン商店街に行くと目抜き通りの3軒の店舗は倒壊したままで、商店街には人影はなくゴーストタウンと化している。放射能で汚染された町は、地震の跡片付けすらできていない。政府は、東京オリンピックの2020 年までに常磐線の双葉駅を再開させ、双葉インターを新設したいと言うが、放射線量が高い地域の鉄道駅の再開やインターの新設にどれだけの即効的な効果があるのだろうか。許可された時刻は午後4時45分。帰還困難区域のゲートから外に出なければならない。首から掛けた線量計は、1を示していた。午後5時になると帰還困難区域内は作業者を含め全員退去して無人の区域となる。双葉町には、放射能で汚染された家屋や土地はあるが住民が一人もいない。昼間でも不法侵入者から空き家を守るパトカーとすれ違うだけだ。子供の姿などどこにもない。ここは文明と未来が破壊された廃墟の町だと感じた。赤ん坊の泣く声も子供のはしゃぎ回る声も聞こえない。若い男女や壮年の男女も老人の姿すらない。イヌもネコもいない。中間処理施設を苦渋の選択で受け入れた町では、巨額の公費を投じた復興が始まるのだろうが、ハコモノの建設だけで復興はできるのか。安心安全の他の町に移住して過ごしたそれぞれの家族の7年は大きい。復興とは、未来を担う子供達が安心して住める町にすること、それ無くして本当の復興はないと感じた。そして、原発事故の再発の恐れがあるにもかかわらず原発事故はもう起きないとして再稼働に邁進している政府の責任は極めて重く、これを止めることができない司法の責任も無視できないと感じた視察であった。


伊賀市残土条例について

2018年1月1日


弁護士 村田 写真 村田 正人

伊賀市では、平成26年5月、残土条例制定を求める市民の請願が6名の紹介議員により提出され、総務委員会での採択を経て、6月に本会議で採択されました。しかし、その後、残土条例は制定されることなく放置され、平成29年10月になって、漸く、伊賀市案が公表され、市民のパブリックコメントを求める段階となりました。伊賀市で残土条例が必要とされる理由は、平成24年以降、砂防指定地域である伊賀市島ヶ原地内に、廃棄物まじりの大量の残土が埋め立てられた「祐成」不法投棄事件が起きたからです。「祐成」の代表者は、市民の告発により、三重県砂防指定地等管理条例第4条違反の罪で略式罰金の処分を受けましたが、廃棄物処理法での処分は見送られました。同種事件の再発を防ぐには、建設廃材まじりの土砂の埋立てや、有害物質まじりの残土を埋めてさせない法的規制が必要です。そのためには、多くの自治体で制定されている「強い権限をもった許可制の残土条例」が不可欠です。しかし、伊賀市は、業者への負担が増えることを理由に、届出制の残土条例(案)に固執しています。違反があっても、行政指導しかできないような届出制の伊賀市案はザル法といわざるを得ません。

伊賀市内の大規模な砂利採取跡地には、汚染土壌の浄化を行う滋賀県の業者などが、ダンプに積んだ大量の「残土」を搬入しています。しかし、安全性を確認することができる法的措置は何もありません。NPO法人「廃棄物問題ネットワーク三重」の場内視察も拒否している業者に信頼性はなく、一刻も早く、許可制の残土条例を制定する必要があるといえます。


韓国・見たまま・感じたまま

2017年7月31日


弁護士 村田正人

村田弁写真

 平成29年4月20日から3日間の日程で韓国のソウル市と世宗(セジョン)特別自治市を訪問しました。視察の目的は、日弁連公害対策環境保全委員会の公害紛争処理法改正プロジェクトチームの一員として、韓国の環境紛争処理法の仕組みを聞き取り、我が国の法制度に反映させることにあります。視察の成果は、階層間の騒音問題が、裁判所外のADRで解決されており、慰謝料も一覧表で定額化されていることでした。報告の詳細は、後日の日弁連報告書に譲ることにして、韓国大統領選挙の最中のソウル市内の様子をお伝えしましょう。

 ソウル市の観光名所といえば、「景福宮(キョンボックン)」ですが、正面の大通りの広場にはハングル文字を作った世宗(セジョン)大王の銅像と、秀吉軍と戦い抗日のシンボルとされている李舜臣(イスンシン)将軍の銅像があります。

 この光化門広場と周囲の道路は、朴槿恵(パククネ)前大統領の罷免を求める100万人(主催者発表)を越える民衆が埋め尽くしたところです。私たちが訪韓したときは、いまだ行方がわからない9人の捜索と真相解明を求める遺族と市民の人たちにより、セウォル号惨事追悼テントが張られていました。修学旅行中の多くの高校生が亡くなった悲惨な事故は、パク前大統領の罷免要求の背景として大きく影響しているように感じました。

 パク前大統領の不正は、友人のチェ被告に国家機密を漏洩し、また、友人のチェ被告がパク前大統領の友人であることを利用して、非営利団体に巨額資金を寄付するよう複数企業に圧力をかけた疑いですが、ことの真相は、いずれ韓国の裁判所が明らかにすることでしょう。

 翻って、我が国では、安倍首相の昭恵夫人が開設予定の小学校の名誉校長に就任して、「忖度(そんたく)」により学校開設の際の便宜供与の不正をしたと思われる「森友疑惑」や、安倍首相の友人が理事長を務めている加計学園でも、獣医学部新設で「総理のご意向」が働いたことが記録された文科省のレク(説明用)文書が公表された「加計疑惑」など、安倍内閣による国家や国家財政の私物化現象が2件も起きています。安倍首相のお友達が、いずれも「憲法改正」を唱える日本会議のメンバーであることも見逃せません。「韓国の政治は酷い」などと高みの見物をしているときではなく、足元の日本の民主主義がためされていると強く感じる今日この頃です。


弁護士在職40年と表彰

2017年1月1日


弁護士 村田正人

 中部弁護士会連合会から弁護士在職40年の表彰を受けました。私が、弁護士となった昭和51年(1976年)は、訴状や準備書面を作るのに手書きや和文タイプを使っていました。その後、ワープロ時代を経て、今やパソコンやインターネツトを使えないと弁護士活動も困難な時代となりました。よくぞ時代の変化に対応してきたものだと感慨深いものがあります。

 私は、弁護士活動40年のうち30年間を日弁連の公害対策環境保全委員会の委員しています。昨今は、廃棄物部会に属し、福島第一原発から排出された8000ベクレル以下の放射性廃棄物の適正処理の問題を扱っています。東北大震災後に中弁連から岩手県陸前高田市に派遣され、釜石市までの海岸線を見て回りまいsた。山裾まで廃墟となった街並みにショックを受けましたが、さらにショックを受けたのは、昨年、福島第一原発の近くの富岡町や大熊町を視察した時です。復興が進んでいる東北にあって、放射能の影響で帰還できず、破壊されたままの家屋の街並みがありました。原発を推進してきた政策に憤りを覚えました。三重県に原発がなく安心して暮らせるのは、当時の中曽根科学技術庁長官を追い返した地元漁民の皆さん達たちの闘いの成果があるからです。三重県が四日市公害の悲惨な体験をしたことも忘れてならないことです。悲惨な公害をなくすために、愛知県弁護士会の先輩弁護士は、現地に入って四日市公害訴訟を掘り起こし、歴史に残る勝訴判決を得て、公害健康被害補償法など多くの成果を残すことに貢献されました。私は、先輩弁護士の後姿を追いかけながら、ふるさと三重の海と山と青い空を守るためのライフワークを続けていきたいと思っています。

 

 


欠陥住宅とピサの斜塔

2016年1月1日


弁護士 村田 正人

写真:村田正人 2016

 平成27年10月、ピサの斜塔を見学した。フィレンツェ市からローカル電車で約1時間、ピサ中央駅に降りたが、バスの乗り場がわからなくて、ひたすら歩いたため、方向を間違い城壁の周囲を延々とまわってしまった。城壁が切れて、漸くピサの斜塔が見えたときは、1時間近く歩いたあとだったので、ひときわ感動だった。入場は、インターネット予約しておいたので、長蛇の列はかわすことができた。解説によると、ピサの斜塔(世界遺産)は、5.5度傾いていたが、1990年から2001年の間に行われた工事によって、現在は約3.99度に傾きが是正されているという。ちょうど、戸建てのリフォームの建物で1000分の51も傾いている物件を詐欺まがいで買わされた事件を担当しているが、その建物の傾斜角度はピサの斜塔に近い傾きである。

 斜塔の中に入ると、「おっとっと」という感じでクラリとする。内部の壁に沿って作られた腰掛けに座り、ガイドのイタリア語の説明を聞いたあと(これは、チンプンカンプン)、渦巻き状の階段をてっぺんまで登った。

 足下の石の階段は多くの観光客が長年踏んだために、大きくすり減っていて滑りそうで危ない。ピサの斜塔は観光資源となったが、とても住める建造物ではないと実感した次第である。

 文献によれば、4°~6°では、一方へ強く引かれる感じ(牽引感)が主体的となり、疲労感、睡眠障害が現れ、正常な環境でものが傾いて見えることがあり、7°~9°では牽引感、めまい、吐き気、頭痛、疲労感が強くなり、半数以上で睡眠障害が生じると報告されている。「生理的限界を超える傾斜」がピサの斜塔である。担当事件の建物の床も、容器に入れた何個ものビー玉をぶちまけると、コロコロと一方に転がっていくひどさである。

 中古物件の媒介をする宅地建物取引業者は、建物の傾斜を買主に告知する義務があるが、悪徳業者は「通常の調査」をしても傾斜はわからなかったと言って逃げようとする。住めない建物に1850万円も払わされるのは、「リフォーム物件詐欺」であり、売買契約の解除も返金も認めない宅地建物取引業者の不条理な主張を叩き潰さなければならない。

 帰国すると、横浜傾斜マンション事件が世間の注目を浴びていた。裁判官を連れて行って、ピサの斜塔と見学してもらい、建物傾斜事件の早期の解決をしてもらえればと思った。

 

 


除染の町・福島県富岡町レポート

2015年7月31日


弁護士 村田 正人

 4月4日、富岡町(トミオカマチ)の旧警戒区域への視察ツアー(主催ふたば商工(株))に参加する機会を得た。

 写真(村田)

いわき市から国道6号線を北上し楢葉町(ナラハマチ)の庁舎横の「ここなら商店街」前の駐車場で停車。その後、バスで富岡町内を見て回った。国道6号線は、除染作業の車両と作業員以外には人がいないゴーストタウンと化している。除染作業は道路と宅地から20mの範囲しか行われていないので多くの土地は未除染のままである。除染作業で取り除かれた土壌や草木は、黒色のフレコンバッグに入れられて保管されている。行き先は決まっていない。楢葉町の場合は、あちこちの仮置場可燃と不燃に分け、上からビニールシートで覆い整然と保管されていた。しかし、放射能汚染がより深刻な富岡町の場合は、黒色のフレコンバッグに入れて野ざらしのままであった。野ざらしで放置した状態を、国は「仮・仮置場」と呼ぶらしい。フレコンバッグは一部老朽化している。JR富岡駅の被災駅舎は取り除かれていたが、駅前商店街は津波で被災した家屋が破壊されたまま残っており、時間の流れを感じさせない生々しさを残している。富岡中学校で下車して人気のない校庭に立ち寄ると、除染作業で表土が15センチの厚さではぎ取られたことが校庭の鉄棒の鉄柱の基礎から読み取れる。校庭の放射線量は0.6マイクロシーベルトと低い。地元のガイドは、学校前の除染がされていない排水路に線量計を置いた。すると、放射線量は12マイクロシーベルトの高い線量を示した(ちなみに、三重県の測定値は0.05マイクロシーベルト)。除染されていない大部分の土地は汚染されたまま残されている。桜の名所の「夜の森」は桜が3分咲きであったが、ここにも除汚作業員と警備員の姿だけで閑散としていた。富岡警察署横の公園には、避難誘導中に津波で殉職した警察官が乗っていた被災パトカーが展示されていた。旅館「観陽亭」の庭の絶壁上からは事故のなかった福島第2原発を望見できた。

ここは遠く離れた福島第1原発から飛んできた放射能で汚染された町。

「視察による被爆は自己責任」との説明を了解しての視察であったが、破壊されたままの建物の姿と国道6号線の除染作業の車両と作業員だけが活気づく異様な光景であった。

 


うれしい逆転勝訴

2015年1月1日


                   弁護士 村田 正人

 名古屋高裁の民事裁判は、始まったとたんに終わる1回結審である。高裁には第1部から第4部まで4つの部があるが、第2部を除くすべてで1回結審である。第2部だけは名古屋方式が維持されている。これは、1回目は法廷を開かない弁論準備手続で始まり、当事者の言い分を直接ラウンドテーブルで聞き、数回の繰り返しのあと、手続きを打ち切り法廷を開いて結審する方式である。弁護士の立場からすると1回結審方式よりも名古屋方式が好ましい。控訴理由書だけでは、果たして真意が伝わっているか、はなはだ疑問だからである。原被告の当事者が、裁判官に直接話す機会があるという点でも名古屋方式が優れていると思う。しかし、この方式は、裁判に時間がかかるという理由で無くなりつつある。名古屋方式が全盛時代、裁判官の手持事件は100件程あったが、現在は30件程に減っていると聞く。第2部の裁判長は来年に退官するので、その時点で名古屋方式はなくなり、過去の語りぐさになるだろう。しかし、これは弁護士にとっては、ゆゆしい事である。1回結審では、逆転勝訴は望むべくもないからである。

 憂鬱な思いの中、うれしい逆転勝訴があった。高裁民事3部は、26年9月24日、津地裁松阪支部の全面敗訴判決をひっくりかえす逆転勝訴を言い渡した。事案は、土地改良区の旧理事による換地清算金の不正使用で、判決は、理事の不法行為と認め、189万円の支払いを命じた。さらに、26年10月30日、高裁民事3部は、津地裁伊勢支部の全面敗訴判決をひっくりかえす逆転勝訴判決を逆転勝訴を言い渡した。ゴルフボールが床をころがる欠陥住宅の事案で、損害賠償1312万円が認められた。これらは、1年あるいは5年をかけた審理の末の逆転勝訴である。1回結審では、とても獲得できなかったものである。審理をやり直してくれた第3部の裁判長や裁判官に感謝の意を伝えたいが、残念なことに多くの裁判官は交替していない。そもそも、1審のひどい判決は、審理不尽に尽きる。証人尋問や当事者尋問を採用しないで切り捨てる「件数落としの裁判」が原因である。民事裁判でも誤審はあってはならない。「大部分の判決が間違っていなければいい」ではなくて、1件でも「勝訴すべき者が全面敗訴するようなことがあってはならない」と思う。しかし、現実は、事実の解明に努力せず、当事者の納得のいく裁判をしない「件数を落としの裁判」に出くわす。「絶望の裁判所」(瀬木 比呂志著、講談社現代新書)ではなく、「勝訴すべき者が勝訴する」希望の持てる裁判所にするために、国民目線の裁判所批判が一層必要だと思う。

 


石原産業フェロシルト事件の和解と残土条例制定に向けて

2014年7月31日


写真差し替え分2

 石原産業フェロシルト事件は、石原産業が廃硫酸汚泥をリサイクルしたと称して、六価クロム汚染のおそれのある「フェロシルト」を平成13年8月から平成17年4月までの3年8か月にわたり、三重県、愛知県、岐阜県、京都府に72万トンを不法埋立した事件です。

 石原産業は、回収費用として平成22年末までに486億円を支出し、会社に巨額の損失を与えました。環境株主が旧経営陣の責任を追及すべく、損害賠償を求めて大阪地裁に提訴しました(筆者は原告代理人として関与)。
 大阪地裁は、平成24年6月、フェロシルトの製造・出荷に関わった元取締役ら3名に対して、それぞれ485億円、254億円、101億円の損害を石原産業に支払うように命じました。しかし、控訴審の大阪高裁では、旧経営陣が遺憾の意を表明したうえで、元工場長ら3名が合計4500万円を会社に支払い、6人の元取締役が社会的責任に基づき会社の持ち株を売却して会社に提供することを骨子とする和解で終結しました。
 石原産業フェロシルト事件は、これで終わったのではありません。四日市工場内には、回収されたフェロシルトがいまだに処理されないで残っていますので、この監視が必要です。また、フェロシルト事件は、無機汚泥の不法投棄事件ですが、徳島県の吉野川の善入寺島では、「味乃玉手箱」という有機汚泥が大量に不法投棄された事件もありました(筆者は告発代理人)。

 こういった大規模な不法投棄事件を通じて、廃棄物処理法には大きなブラックホールがあることが明確になりました。「リサイクル」「再生事業」「建設残土」「農地の土壌改良」「客土」「土地の造成」など様々な口実をつけて、不法投棄者による産業廃棄物や産業廃棄物まがいの有害物質の埋立てが横行しています。そのうえ、東京電力の福島原発事故に起因する放射性物質で汚染された土壌までが、県外から搬入されて埋立用土砂に混入されるおそれも払拭できません。千葉県では平成10年に残土条例を制定して、残土の埋立てに規制をかけています。
 廃棄物問題ネットワーク三重(代表吉田ミサヲさん、筆者は顧問弁護士)は、平成26年5月、三重県と伊賀市に残土条例の制定を要望して、廃棄物処理法のブラックホールを埋める活動をはじめています。





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