森 一恵の記事一覧

三重合同法律事務所事務所コラム

森 一恵の記事

原水爆禁止世界大会(広島)・分科会2「非核平和の自治体づくり」に参加して

2019年1月2日


弁護士 森 一恵

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第1 はじめに

 私は2018年8月5日,原水爆禁止世界大会(広島)・分科会2「非核平和の自治体づくり」に参加し,特別報告を行いました。私が原水爆禁止世界大会に参加したのは,今回が初めてでした。これから分科会の状況を報告させていただきます。

第2 分科会の状況

1 分科会の参加者は150名,会場はほぼ満席でした。まず,運営責任者から,「ヒバクシャ国際署名」の首長賛同が全国で6割,自治体意見書決議が200議会を超えていることの説明がなされた上,非核平和の自治体づくりの必要性,住民の中にある反核平和の願いを結集すること,非核平和行政を自治体の中で広げる意義等の問題提起がなされました。

 2 次に私の方から「核兵器禁止条約の意義と条約本文を学ぶ。平和行政を進める意義」の特別報告を行いました。「核兵器禁止条約の意義と条約本文」については,条約において核兵器使用の違法性を基礎としている点,前文で「被爆者(hibakusha)にもたらされる受け入れ難い苦しみと害に留意する」と規定して被爆者の権利に配慮している点,第1条で核兵器の「使用」のみならず「使用の威嚇」も禁止している点の3点が特徴であることを報告しました。

 また核兵器禁止条約採択後の国際情勢として2017年12月10日にICANに対してノーベル平和賞が授与され,2018年4月27日に韓国と北朝鮮の間で南北首脳会談を経て板門店宣言が発表され,6月12日にアメリカと北朝鮮の間で米朝首脳会談を経て米朝共同声明が発表される等,核兵器廃絶は世界的な動向であること,「唯一の戦争被爆国」であるにもかかわらず,日本は,残念ながら核兵器禁止条約に加入していない点を報告しました。その上で「平和行政を進める意義」として,「ヒバクシャ国際署名」の首長賛同や,自治体意見書決議等により,市民社会にとって身近な行政(自治体)から日本政府に対し,核兵器禁止条約に加入するよう粘り強く働きかけを行っていくことが必要であることを指摘して,私の報告とさせていただきました。

 3 次に非核平和行政づくりについて導入発言がなされた後,全体討論となりました。

 全体討論では,自治体における平和教育の取り組み,「ヒバクシャ国際署名」の首長賛同,自治体意見書決議,非核平和宣言に至るまでの市民社会の努力について,活発な意見交換と議論がなされました。全体討論を通じて, 核兵器廃絶は市民社会の願いであることをあらためて実感しました。

第3 終りに

 原爆の熱線に耐え,再び芽を吹き成長を続けている広島城二の丸の「被爆樹木ユーカリ」(写真参照)のように,日本が核兵器禁止条約に加入するよう,引き続き私も,粘り強く働きかけを行っていきます。本年もよろしくお願い申し上げます。

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広島城二の丸被爆樹木ユーカリ


NPT再検討会議準備会合,関連サイドイベント報告

2018年8月16日


弁護士 森 一 恵

第1 はじめに

 私は2018年4月27日から5月2日まで,ジュネーブにある国連ヨーロッパ本部で開催されたNPT再検討会議第2回準備会合と関連サイドイベントに参加した。 これから会議等の状況について,ご報告させていただく。

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 国連広場の壊れた椅子

第2 NPT再検討会議準備会合について

 私は会合のうち,4月30日と5月1日の会合を傍聴した。核兵器禁止条約(TPNW)採択後の準備会合であり,どのような議論がなされるか注目していたが,核兵器禁止条約に触れた発言は,私が聞いた限りでは,メキシコの代表が,核兵器禁止条約において核実験も禁止した趣旨をNPT体制においても重視すべきと発言していた程度であった。核兵器禁止条約(TPNW)とNPTとの関係について,踏み込んだ議論がなされていなかったことは残念であった。

 第3 関連サイドイベントについて

 他方,関連サイドイベントでは,テーマごとに熱心な議論がなされていた。

1 アボリッション2000(Abolition2000)の年次総会

 4月28日の午前9時から午後5時頃までジュネーブ市内のビル(仲間の家,Maison des Associations)で,アボリッション2000の年次総会が開催された。年次総会ではあるが,誰でも出入り自由である。会議に参加する際には自己紹介(氏名,国籍,所属団体,一言の抱負)を行うことになっているが,世界各国から,老若男女を問わず参加していた。会議では設立宣言が読み上げられた後,イベントの情報,部会報告,非核地帯に関する議論,中東情勢等,熱心な意見交換がなされた。

2 イギリス・ドイツ・フランス・韓国4カ国合同のサイドイベント

 4月30日午後1時15分から午後2時30分まで,国連のミーティングルームで行われた「北朝鮮の核の課題を講演する(NPT addressing the North Korea`s nuclear challenge)」というイギリス・ドイツ・フランス・韓国4カ国合同のサイドイベントを傍聴した。4カ国合同のサイドイベントでは,北朝鮮が核・ミサイル実験の停止を表明したこと,4月27日に韓国と北朝鮮との南北首脳会談で板門店宣言が合意されたこと,アメリカと北朝鮮との間で米朝首脳会談が行われることについて,歓迎する意向が表明された。4カ国合同のサイドイベントは,北東アジアに属する日本にも関わりのある話題であるだけに興味深く傍聴した。

3 バーゼルピースオフィス・IALANA・アボリッション2000ワーキンググループ合同のサイドイベント

 5月1日午後1時15分から午後2時45分まで,国連のミーティングルームで行われた「核兵器と人権法,将来の世代(Nuclear weapons and the law on human rights and future generations)」というバーゼルピースオフィス・IALANA・アボリッション2000ワーキンググループ合同のサイドイベントを傍聴した。サイドイベントでは,核兵器の違法性・非人道性,環境破壊,人類の生存を脅かすことが指摘され,「将来の世代(future generations)」の健康を守る必要性が議論された。

 第4 終わりに

 今回,NPT再検討会議準備会合,サイドイベントに参加して「核兵器のない世界」の実現は,全世界共通の願いであることを改めて実感した。

  私は法律家として今後も粘り強く,唯一の戦争被爆国である日本政府,アメリカを含めた全ての核保有国及び核依存国に対し核兵器禁止条約(TPNW)の趣旨を真摯に受け止め,条約に加入するよう働きかけていきたい。


「核兵器禁止条約」交渉会議視察報告

2018年1月1日


 弁護士 森 一恵

顔写真森(171110_ALIA6187)第1 はじめに

2017年(平成29)年3月27日から31日(第1会期)と6月15日から7月7日(第2会期)の期間,ニューヨークの国連本部において,「核兵器禁止条約」交渉会議(「核兵器の全面廃絶に向けた核兵器を禁止する法拘束的文書を交渉する国連会議」(United Nations Conference to Negotiate a Legally Binding Instrument to Prohibit Nuclear Weapons, Leading Toward Their Total Elimination))が開催されました。2017年(平成29)年7月7日,交渉会議は「核兵器禁止条約」(「核兵器の禁止に関する条約」(TPNW,Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons))を賛成122カ国、反対1カ国(オランダ)、棄権1カ国(シンガポール)で採択しました。私は日弁連憲法問題対策本部の委員として,第1会期の会議の視察を行いました。これから,会議の視察状況をご報告させていただきます。

第2 会議の視察状況

1 3月27日から,国連総会会議場で「核兵器禁止条約」交 渉会議が開幕しました。

議長を務めるコスタリカのホワイト大使の挨拶,国連総会議長のメッセージ紹介,キム・ウォンス国連軍縮担当の挨拶の後,ハイレベルセグメント(各国政府代表・NGO代表の演説)が行われました。ハイレベルセグメントでは,被爆者の代表として被団協(日本原水爆被害者団体協議会)の藤森俊希氏が登壇し,日本語で演説しました。藤森氏は,自らの被爆体験を説得的に語り,キノコ雲のもとで繰り広げられた生き地獄をどの国の誰にも絶対に再現してはならないと述べ,核兵器禁止条約の必要性を訴えました。会場からは大きな拍手が起こりました。

続いて,各国政府代表の演説に移りました。日本からは,高見沢将林国連軍縮大使が演説しました。高見沢大使は,日本が唯一の戦争被爆国であり,核軍縮を率先しておこなう必要があると述べつつも,核兵器国や核依存国の多くが不参加の状況では,会議に建設的で誠実に参加することは困難として不参加表明をしました。高見沢大使の演説は,アメリカの核の傘に依存せざるをえない日本の立場を象徴する演説でした。

2 3月28日,2日目の会議が行われました。

この日は市民社会代表の演説に移りました。私が興味を持ったのは,広島で被爆し,現在はカナダ在住の被爆者サーロー節子氏の演説と,イギリスの核実験による被爆者スー・へーゼルダイン氏(オーストラリア)の演説でした。サーロー氏は,13歳で被爆した体験,身内が亡くなった悲劇を力強く説得的に語り,演説後も会場から拍手が鳴り止まないほどでした。またサーロー氏は日本政府の不参加表明について「自分の国に裏切られ,見捨てられ続けているという思いを強くした。」と批判しました。

スー氏は,核実験による放射線被曝の影響で,多くの被爆者が癌に苦しんでいる実情について語りました。被爆者というと,日本では第2次世界大戦時の広島・長崎の原爆,マーシャル諸島ビキニ環礁での核実験が有名ですが,広島・長崎やビキニ環礁以外にも核による被害があったのかと,核被害の深刻さを実感しました。

第3 終りに

   「核兵器禁止条約」は,前文で「被爆者(hibakusha)にもたらされる受け入れ難い苦しみと害に留意する」と規定して被爆者の権利に配慮し,第1条で核兵器の「使用」のみならず「使用の威嚇」も禁止する等,核兵器のない世界の実現に向けて,画期的な内容になっています。

   残念ながら日本政府は,唯一の戦争被爆国であるにもかかわらず,「核兵器禁止条約」に加入していません。日本は唯一の被爆国として,核兵器のない世界の実現に向けて積極的な役割を果たすことが,求められます。日本が「核兵器禁止条約」に加入するよう,法律家として粘り強く働きかけを行っていくことが,私の今年の目標です。

本年もよろしくお願い申し上げます。


マーシャル研修報告

2017年7月31日


弁護士 森 一 恵

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第1 はじめに

 私は2月26日から3月3日まで日本国際法律家協会主催のマーシャル研修に参加した。これからマーシャル諸島で見聞した出来事をご報告させていただきたい。

第2 国会議長との面談

 2月28日の昼には,マーシャル諸島共和国の国会議長で,被爆地であるロンゲラップ環礁選出の国会議員でもあるケネス・ケディー氏と面談した。

 ケネス氏は,アメリカとマーシャル諸島共和国との核実験補償問題について,ネバタ州で行われた核実験に対する補償と比較して不公正であると語った。その一方でケネス氏は,アメリカとマーシャル諸島共和国とは兄弟の関係にあるとも語り,アメリカに経済的に依存せざるを得ないマーシャル諸島共和国の難しい立場を実感した。

第3 核レガシー会議  

 3月1日の核被害者追悼記念日当日の午後には,核レガシー会議(Marshall Islands Nuclear Legacy Conference)に出席した。

 基調講演の講演者は,元外務大臣トニー・デ・ブラム氏であった。トニー氏はマーシャル諸島共和国が国際司法裁判所に各ゼロ裁判を提訴した当時の外務大臣であった。トニー氏は,アメリカはマーシャル諸島共和国に対して核被害に関する調査の十分な情報開示を行うべきであること,被爆や故郷を離れることに直面しても前を向いて進まなければならないことを説得的に語った。

 パネルディスカッションでは,4人の被爆者による核被害の実体験が語られた。爆発音が聞こえた状況,キノコ雲が発生した状況,魚の死骸が発見された状況等,実体験を聴くことができたことは貴重な経験であった。

 ゲスト講演の1人目は,明星大学の竹峰誠一郎先生の講演であった。竹峰先生は,核被害は,認定されているビキニ・エニウェトク・ロンゲラップ・ウトリックの4環礁に止まらず,他の地域にも及んでいることをわかりやすく説明していた。

 ゲスト講演の2人目は,ビル・グラハム氏の講演であった。ビル氏はアメリカとマーシャル諸島共和国との核実験補償問題に関する177条協定(177Agreement)について,不備があると指摘した。アメリカ政府は補償問題に関して177条協定で解決済との態度をとっており,アメリカ政府に対して,新たな補償や賠償を求めるのは難しい状況である。新たな補償や賠償を求めるための適切な法律構成はないかと思案しながら,講演を聴いていた。

第4 終わりに

 マーシャル諸島は太平洋に浮かぶ,サンゴ礁が美しいのどかな島であった。このような島で67回の核実験が行われ,甚大な核被害や環境被害が発生したことに何とも言えない憤りを感じた。私はマーシャル諸島で見聞したことを,核兵器の禁止を求める取り組みに生かしていきたい。DSC_0081


国際司法裁判所のマーシャル諸島・核軍縮裁判について

2017年1月1日


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弁護士 森 一恵

[[マーシャル諸島・核軍縮裁判とは]

  マーシャル諸島・核軍縮裁判とは,米国のビキニ環礁での核実験で被害を受けた南太平洋の人口約5万の島国であるマーシャル諸島が,核兵器保有国9カ国(米国,ロシア,フランス,英国,中国,インド,パキスタン,イスラエル,北朝鮮)に対して,国際法上の核軍縮交渉に取り組む義務を怠り,国際法に違反しているとして,2014年4月24日,オランダのハーグにある国際司法裁判所(INTERNATIONAL COURT OF JUSTICE ,略称ICJ)に提訴した訴訟です。

 訴訟においては,各国が巨額の予算をつぎ込んで核兵器の近代化を進めている等核軍縮義務に違反している実態が主張されました。

[マーシャル諸島・核軍縮裁判の結果と意義]

 核兵器保有国9カ国のうち, ICJの「強制管轄権」を受諾(問題になっている紛争解決のためにICJの司法手続きの当事国となることに同意すること)した3カ国(英国,インド,パキスタン)について裁判が行われ,2016年10月5日に判決が下されました。

ICJ判決は,核軍縮をめぐる多国間交渉でマーシャル諸島が出した声明は特定の国を対象としたものではないとして, マーシャル訴訟と訴えられた国との間で「法的紛争が存在しない」と判断しました。そして,ICJに訴えを審理する権限はないと判断して,結局実質的な審理に至らないまま,言わば門前払いで,裁判は終了しました。

「法的紛争が存在しない」ことを理由に,核軍縮義務違反についての実質的な審理に至ることなく,裁判が終了したことは,非常に残念でした。しかし,核実験で被害を受けた小国が大国である核兵器保有国を相手にICJに提訴し,国際的な関心を集めたこと自体,世界の核兵器廃絶に向けて1歩でも前進するための取組の1つとして,重要な意義があります。

[終わりに]

 私はこれまで,非核三原則を法制化すべく,検討を重ねてきました。被爆国の日本において,非核三原則を法制化することも,核兵器廃絶に向けた取組の1つであり,日本国内のみならず国際的にも重要な意義があります。

 2017年3月1日,私はマーシャル諸島での核被爆者追悼記念日(ビキニデー)の記念式典やイベントに参加する予定です。現地での記念式典やイベントに参加して勉強した成果を,非核三原則の法制化の取組につなげたいと考えています。現地での記念式典やイベントの状況は,また機会がありましたらご報告させていただきます。

 今年も宜しくお願い申し上げます。


2016,IALANA(国際反核法律家協会)総会に参加して

2016年7月1日


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弁護士 森 一恵

【はじめに】

 私は4月15日から4月18日まで,スイスで開催されたIALANA総会や関連イベントに参加した。IALANA総会では,非核三原則の法制化の取組に関して,スピーチする機会を与えていただいた。これから人生初体験の英語でのスピーチを中心に,見聞した出来事をご報告させていただきたい。

【初日(公開イベント)】

   4月15日は,ローザンヌ大学での公開イベントである。主宰者による歓迎の挨拶の後,核抑止と武力行使の禁止,マーシャル訴訟等に関するスピーチを聴講する。公開イベント終了後は,小レセプションに参加した。

【2日目(IALANA総会)】

 1 4月16日は,スピーチ当日である。

   まず,参加メンバーの簡単な自己紹介が行われる。欧米諸国はもちろん,旧ユーゴスラビア,オーストラリア,ニュージーランドと世界各国から参加している。午前中は,反核戦略,核軍縮,マーシャル訴訟等各国の参加者のスピーチを聴講する。

 2 午後から自分のスピーチ本番である。

   日弁連憲法問題対策本部・核廃絶PT,日本反核法律家協会に所属しているという立場,非核三原則の法制化を試みることとなった経緯,非核法制定に向けた決意を説明する。NHK教育テレビ番組のスーパープレゼンテーションのように,かっこよくスピーチするのが理想だったが,用意した文章の棒読みで終わった。

   どの程度通じたかは不明であるが,左隣のオーストラリアの先生から「Good」と言われたので,多少は通じたに違いないと安心した。

 3 スピーチが終わり,夜は参加メンバーとの懇親会が行われる。

私の右隣にはフランス人女性が座っている。彼女は「日光に行ったことがある。」と言っていた。日光と言えば東照宮なので「見ざる,聞かざる,言わざる」と眠り猫をゼスチャーしてみると,やはり東照宮を観光したらしい。外国の方との懇親会は,満足に会話はできなかったが,それなりに雰囲気を楽しむことができた。

【3日目(IALANA理事会)】

   4月17日は,理事会である。役員,理事の選出,財政状況の報告等が行われた。

【4日目(ジュネーブでのイベント)】

   4月18日の朝,ローザンヌを出発してジュネーブに向う。イベントでは,核軍縮に向けた様々な取組みについて,市民団体を交えた討議が行われた。4月19日朝,ジュネーブを出発。翌20日,日本に帰国する。

【終わりに】

  私はこれまで,非核三原則を法制化すべく,検討を重ねてきた。非核三原則法制化を実現するためには,国内だけでなく海外に向けてのアピールも必要になってくる。引き続き,非核三原則法制化に向けて,勉強と検討をしていくのはもちろんであるが,語学能力も身につけていきたい。


高松干潟視察報告

2016年1月1日


弁護士 森  一 恵

【高松干潟とは】

 2015(平成27)年11月5日,三重弁護士会の公害対策環境保全委員会で高松干潟を視察したので,視察状況を報告させていただく。高松干潟は,三重県の北部,三重郡川越町の朝明川河口に位置する約28haの砂質干潟である。春から夏にかけては,潮干狩りでにぎわい,秋から冬にかけては,野鳥(カモ類,カモメ類,シギ,チドリ,ミヤコドリ等)の渡来地となっている。高松干潟は,三重県北部に残された貴重な自然環境であり,近隣住民や野鳥の憩いの場となっている。

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【高松干潟と霞4号幹線】

 この貴重な自然である高松干潟を通るかたちで,臨港道路「霞4号幹線」の建設が進められている。 「霞4号幹線」は,1992(平成4) 年に計画が構想され,2003(平成15) 年にルートが決定,2004(平成16)年に建設が始まった。2015(平成27)年5月には基礎部分の工事が終了している。

臨港道路「霞4号幹線」の建設により,高松干潟の景観や生態系への影響が懸念されることから,このたび視察を行うことになった。

【高松干潟の現地にて】

 11月5日当日は,日本野鳥の会三重の方に現地をご案内いただくとともに,臨港道路「霞4号幹線」の建設による高松干潟への影響について,レクチャーを受けた。現地では,干潟の水辺付近で,羽休めをしたり付近を飛行したりする野鳥を観察することができた。肉眼でも黒白何種類もの野鳥することができたし,望遠鏡では野鳥の細かい動きを観察できた。肉眼では大きさまではよくわからなかったが,望遠鏡でみると,丸々と太って肉付きのいい野鳥が観察できた。またレクチャーでは,臨港道路「霞4号幹線」が高松干潟に建設されると,自動車のヘッドライトや道路の照明等の光が野鳥にとって脅威となりうる,野鳥は行動範囲が広いので,高松干潟だけでなく近隣の他の干潟(愛知県の藤前干潟等)の生態系にも影響が生じる等の具体的な問題点をうかがうことができた。

【高松干潟視察を終えての感想】

日本の干潟は,現在その多くが消失し,自然海岸は本土では約45%しか存在しないと言われている。近隣住民や野鳥の憩いの場となっている高松干潟が消失してしまうことは,絶対に防がなければならない。

既に着工されている臨港道路「霞4号幹線」の建設自体を止めることはできないとしても,せめて高松干潟の景観や生態系を守るために,野鳥にとって脅威となり得る自動車のヘッドライトや道路の照明等の光が拡散することのないよう対策をとるべきではないかと感じた。公害対策環境保全委員会の一員として,高松干潟の環境保全のために,私なりにできることをしていきたい。


2015NPT再検討会議に参加して

2015年7月31日

弁護士 森 一恵

 
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【はじめに】
  2015(平成27)年4月25日~5月1日まで,ニューヨークで行われたNPT再検討会議,サイドイベント,パレード等に参加した。これから,ニューヨークでの滞在日記や参加しての今後の抱負を報告させていただく。

【ニューヨークでの滞在日記】
1 1日目
    夜にニューヨークに到着。
2 2日目
    午前8時に宿舎を出発。NPT再検討会議登録のため,国連本部に向かう。お昼前頃,無事に登録作業が完了する。これで明日からの会議に参加できると,ほっとした。
    午後からはユニオン広場でのパレードに向かう。ユニオン広場に到着すると,すでに世界中からNGO団体が集まっている。非核や戦争反対を訴えながら,3時間程度,ニューヨークの街中を行進する。
3 3日目
  午前中は,NPT再検討会議を傍聴した。世界各国からの代表者が発言しているが, 国連の公用語での発言のため,ほとんど理解できなかった。
 午後はサイドイベントである「マーシャル諸島の核ゼロ裁判」を傍聴する。マーシャル諸島の核ゼロ裁判弁護団長である女性弁護士の裁判報告等を聞いた。
    サイドイベント終了後は,レセプション「核のない世界へ~ヒロシマ・ナガサキの願い」に参加した。開場には身動きがとれないほど,たくさんの人々が来場していて, 反響の大きさを実感した。
4 4日目
  サイドイベントである「近代化,autonomisation,and weapons in space」を傍聴する。日本語の同時通訳は行われているのであるが,日頃あまり考えたことのない分野であるためか,難解すぎてよくわからなかった。
5 5日目
  サイドイベントである「核兵器廃絶への戦略」会議を傍聴する。会議途中に参加者から「議論しやすいように円卓形式に机を直して行いましょう。」と提案が出るほど,アットホームな雰囲気で行われ,活発な議論がなされた。自分に語学能力があれば国際会議で議論に加われるのにと思い,自分の語学能力のなさを痛感した。
6 6日目
  無事に帰国した。

【参加しての今後の抱負】
 私はこれまで,非核三原則を法制化すべく,検討を重ねてきた。非核三原則法制化を実現するためには,日米安全保障条約のもとで非核三原則法制化は実効性があるか等の難しい課題を克服していかなければならない。しかし,NPT会議全体で実感した,平和を願う全世界共通の思いがあれば,課題克服は困難なことではない。私は引き続き,非核三原則法制化に向けて,勉強と検討をしていきたい。


原爆投下国際法違反訴訟事件判決(下田判決)の紹介

2015年1月1日


弁護士 森  一恵

[原爆投下国際法違反訴訟事件判決(下田判決)とは]

1963(昭和38年)年12月7日,東京地方裁判所判決は広島・長崎における無差別の原子爆弾投下は国際法に違反すると判断しました。この判決は原告の1人である下田隆一氏の名前をとって,下田判決と呼ばれています。

下田判決がなされてから本年で52年になりますが,現在でも,核兵器使用の違法性について,裁判所が判断した意義は大きいです。

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[下田判決の概要]

1 原子爆弾の投下行為と国際法違反の有無について

下田判決は,米軍による原子爆弾の投下行為と国際法違反の有無について,

 「原子爆弾の加害力と破壊力の著しいことは,既に述べたとおりであつて,広島,長崎に投下された小規模のものであつても,従来のTNT爆弾20,000トンに相当するエネルギーを放出する。このような破壊力をもつ原子爆弾が一度爆発すれば,軍事目標と非軍事目標との区別はおろか,中程度の規模の都市の一つが全滅するとほぼ同様の結果となることは明らかである。従って防守都市に対してはともかく,無防守都市に対する原子爆弾の投下行為は,盲目爆撃と同視すべきものであつて,当時の国際法に違反する戦闘行為であるといわなければならない」。

 「原子爆弾による爆撃が仮に軍事目標のみをその攻撃の目的としたとしても,原子爆弾の巨大な破壊力から盲目爆撃と同様な結果を生ずるものである以上,広島,長崎両市に対する原子爆弾による爆撃は,無防守都市に対する無差別爆撃として,当時の国際法からみて,違法な戦闘行為であると解するのが相当である」と判断しました。

2 原子爆弾の使用と戦争法の基本原則違反の有無について

さらに下田判決は,原子爆弾の使用と戦争法の基本原則違反の有無について,「原子爆弾の破壊力は巨大であるが,それが当時において果して軍事上適切な効果のあるものかどうか,またその必要があつたかどうかは疑わしいし,広島,長崎両市に対する原子爆弾の投下により,多数の市民の生命が失われ,生き残った者でも,放射線の影響により18年後の現在においてすら,生命をおびやかされている者のあることは,まことに悲しむべき現実である。この意味において,原子爆弾のもたらす苦痛は,毒,毒ガス以上のものといつても過言ではなく,このような残虐な爆弾を投下した行為は,不必要な若痛を与えてはならないという戦争法の基本原則に違反しているということができよう」と判断しました。

[下田判決を踏まえての今年の抱負]

日本では現在,集団的自衛権行使を容認する閣議決定など,海外における武力行使に道を開く動きが進んでいます。これは,日本国憲法の恒久平和主義の理念に反し,日本が再び戦争に参加することにつながりかねない動きです。

日本が再び戦争に参加することになれば,無防守都市に対する無差別の核兵器使用により「多数の市民の生命が失われ,生き残った者でも,放射線の影響により生命をおびやかされ,不必要な苦痛」を受けるという下田判決で指摘された同じ過ちが繰り返されることになりかねません。

  私は日弁連の憲法問題対策本部の委員として,日本が同じ過ちを繰り返すことのないよう,日本国憲法擁護に努めてまいります。
  今年度もよろしくお願い申し上げます。

 

 


ハーグ条約とは

2014年7月31日


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1 ハーグ条約の発効
 2014(平成26)年4月1日から,日本においてハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)が発効されることとなりました。

2 ハーグ条約の概略
 ハーグ条約の概略は以下のとおりです。
(1)条約の適用となる子は,16歳未満の子です。 子が16歳に達すると条約の適用がなくなります
(2)国境を越えた子の連れ去り等にのみ適用されます。国内で発生した子の連れ去り等は,日本人父母の間で発生した場合はもちろん,国際結婚の父母の間で発生した場合であっても,子の移動が国境を越えていない限り,条約の適用はありません。
(3)必ずしも国際結婚には限りません。 父母の国籍はもちろん,子の国籍も関係ありません。
(4)手続きの迅速性が求められています。裁判所は申立から6週間以内に判断できないときは,申立人の求めがあれば遅延の理由を明らかにしなければならないとされています。その結果,原則として申立から6週間以内での判断が期待されているものと理解されています。
(5)返還が原則とされています。条約上,返還事由が認められる限り,子の所在国の返還手続きを行う機関は,子の返還を命じなければなりません。返還を命じないことができるのは,条約上の返還拒否事由が認められる場合のみです。
(6)子の返還は,常居所地国への返還です。条約に基づき命じられる子の返還は,常居所地国への返還です。このため,条約上の返還拒否事由の有無は,常居所地国への返還について問題とされます。

3 ハーグ条約の意義
 国際結婚や国際離婚が増加した今日,父母間における子の監護をめぐる争いにおいて,親の一方が他方の同意なく,常居所地国から子を連れ去るケースがみられます。国境を越えた子の連れ去り等は,子にとってそれまでの生活基盤が突然急変するほか,一方の親や親族・友人との交流が断絶され,また,異なる言語文化環境へも適応しなくてはならなくなる等,子に有害な影響を与える可能性があります。 国境を越えた子の連れ去り等による子への有害な影響から子を守るために,常居所地国に子を迅速に返還するための国際協力の仕組みについて定めた点に,ハーグ条約の意義があります。





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