2025年元旦

三重合同法律事務所事務所コラム

2025年1月

2025年元旦

 昨年の総選挙は、自公連立与党の惨敗に終わり、12年間の安倍一強体制が終わりました。しかし、安倍一強体制を支えてきた裏金問題と統一教会問題の解明はいまだなされていません。「裏金議員」46人のうち18人が当選したことは残念なことであり、当選は選挙民の選択であるとしても、国民全体の信託を得たものではないことを当選議員は銘記すべきでしょう。

 円安と物価高が同時進行し、消費者の生活や中小企業の経営は、ますます苦しくなっています。国民のための真の政治が望まれます。

 ガザ地区でのイスラエル軍による非人道的な「戦争犯罪」を一日でも早く終わらせ、 ウクライナ戦争を終焉させて、平和な世界を取り戻すことができる新年でありたいと願っています。

 2025年元旦


脊柱管狭窄症 

弁護士 石坂 俊雄

爺 :今回は、昨年の7月に手術をした脊柱管狭窄症の治療の話をしよう。
風子:脊柱管狭窄症てどんな病気。
爺 :背骨には、脊柱管という管が頭部から臀部まで通っていて、その管の中に神経が伸びているのだ。
年齢を重ねるとことによりこの管が段々細く、狭くなるのだ。それと腰を使う畑仕事等をすると黄色靱帯という腰の骨についている靱帯が、腰を守るために肥厚することも原因の一つだよ。症状が出るかどうかは別にして、70代以上の老人は3割くらいはこの病気にかかっている言われているね。
風子:どんな症状が出るの。
爺 :脊柱管が狭くなることにより座骨神経に影響がでて、腰から脚にかけて痛みと痺れが出てきたり、間欠性跛行といって、私の場合は、80m程歩くと痛みで休まないと歩けなくなるのだ。
風子:薬やストレッチ、鍼灸などで治らないの。
爺 :軽い人は、薬を飲んで、ストレッチなどをしてだましだまし生活を継続することも可能だよ。
風子:爺は、薬は飲まなかったの。
爺 :飲んだよ。リリカという神経の痛みに効く薬があり、当初は、この薬を飲むと痛みが治まっていた。しかし、その後、痛みが止まらず、毎朝起きると、四股を踏むように脚を広げてストレッチをしないと動けなくなった。しかも、腰を曲げないと痛みが出る。そこで、腰椎の3番、4番と4番、5番の2箇所の脊柱管を広げる手術をすることにした。
風子:手術は恐くなかった。
爺 :恐かったが、調べると腰の手術で車椅子に乗るような状態になることはないとの確信を得て、津市で一番信頼のできる医師を選び手術をお願いした。50年弁護士をしていて初めての入院生活になったね。
風子:手術の時間はどのくらい。
爺 :2時間で完了、全身麻酔であるから、手術のことは全く覚えていない。麻酔が覚めてから、痛みが出てきたが、痛みに強力に効果がある薬は、吐き気が出てくるため使えず、少し、緩い痛み止めので我慢をすることにしたため、3日間全く痛みで眠れなかったのがつらかったね。人によっては、痛み止めが効いて余り痛まない人もいるようだけど。
風子:リハビリはどうしたの。
爺 :手術翌日からリハビリは始って歩行訓練をさせられたね。身体には、点滴とドレーン(手術部位から血液を抜く管)がついたままでリハビリを始めた。
点滴は、3日でとれて、ドレーンは、1週間でとれたので、その後は、自由の身となり、リハビリはしやすかったが、寝ているとき以外は、腰から胸にかけてコルセットを付ける生活が始った。
風子:退院までは、どのくらいかかったの。
爺 :1週間で退院をする予定であったが、そんなに甘くなく16日間入院をすることになった。
風子:退院後の生活はどうなの普通どおり。
爺 :コルセットを3ヶ月間は付けなくてはならないので、少しうっとうしいね。コルセットがとれたのが10月末になったね。
コルセットをしていると体幹の筋肉が落ちて、脚の筋肉も落ちたため、この筋肉を以前と同じように回復するトレーニングが必要となるのだ。今は、水中歩行と水泳とロードバイクに乗ってリハビリをしている。今年の1月頃から、徐々に走る練習をしようかと考えているところだよ。
風子:同じような症状をある方にアドバイスはある。
爺 :脊柱管狭窄症は、狭くなった管は、元に戻らないので、信頼できる医師を見つけて、早い段階で手術をし、元の生活に戻れるようになることを勧めるね。


廃コンテナの2段積みは、建築物か?

弁護士 村田 正人

 金属リサイクル業者が隣接民家との境界線付近に立てた鉄製架台の廃コンテナ2段積みの構造物(高さ約7m、幅約30m)は、建築基準法違反の建築物か。

 問題が生じたのは、平成29年11月である。金属リサイクル業者は、空き地に移転してくると、そこで鉄くずやアルミニウムなどの金属屑を圧縮して同業者に転売する商売を始めた。通常は、建屋を建築して騒音被害が出ないように配慮して作業をするのものであるが、当該業者は青空操業をしていた。

 ユンボを使い、鉄箱の中で金属を潰す作業や移動の際に大音響の金属騒音が発生し、隣接住民の健康被害(耳鳴りや不眠など)と生活被害を引きおこしていた。

 このような場合の法的規制としては、騒音規制法に基づく規制がある。工業地域であるため、午前8時から午後6時までの騒音規制値は、65dBと定められている。ただし、工場騒音などの変動騒音に適用される「90%レンジの上端値(L5)」の規制である。

 隣接家族は、津地裁に申立てをして、境界線付近で65dBを超えて操業してはならないとの仮処分決定を得たが、業者は決定を無視して操業を続けた。そこで、間接強制の申立てをなし、津地裁は違反1日につき5万円の違約金を支払えと決定をした。しかし、業者はこれも無視して操業を続け、令和6年6月の勝訴判決まで7年余りの年月を要した。

 この間、業者の防音壁は、薄い鉄板の4m塀と裾空きの6m塀と廃コンテナの2段積み構造物だけであった。

 義務づけ訴訟で、津地裁は、廃コンテナを2段積みしたものは、屋内的利用がないから(ヒトがコンテナ内の空間に入らないから)、建築基準法の建築物ではないと判断したが、騒音防止訴訟では、倒壊の危険のある構造物であると認定し、人格権に基づく撤去請求を認めた。

 国土交通省の通知は、屋内的利用伴う廃コンテナの使用は、安全性に配慮して使用を規制する通達をしているが、ヒトが空間内に入らない場合は対象外であるとして運用されている。し、屋内的な利用をしない廃コンテナの多段積みについても、倒壊事故が起きないように早急な法改正が必要と考える。
注1:国土交通省「コンテナを利用した建築物の取扱いについて」(平成16年12月6日付け国住指第2174号) 
注2:「コンテナを利用した建築物に係る違反対策の徹底について」(平成26年12月26日付け国住安第5号)


衆議院議員総選挙と憲法改正

弁護士 伊藤 誠基

選挙結果

 昨年10月27日衆議院議員総選挙があり、自公政権は過半数を割り、国民から厳しい審判を受けました。

 自公政権が過半割れを起こしたのは、当時の民主党が政権を奪取した2009年8月から実に15年ぶりのことでした。

 石破政権は自民党の組織的犯罪とも言われた裏金問題を徹底調査せず、政治不信が増幅する中での選挙であり、公示後も、日本共産党機関紙である「しんぶん赤旗」のスクープにより、非公認とした裏金議員にも2000万円を支給していたことが発覚したことが追い打ちになり、惨敗を喫しました。


憲法改正の勢いを削ぐ

 衆議院では今、憲法調査会をもうけて精力的に改正作業が進められています。

 与野党を問わず、改憲政党側では、改正内容について各政党の思惑から合意が進まず、とりあえず一致できている緊急事態の場合の議員任期の延長規定を設ける改正案を確定する段取りを進めていました。

 単なる任期延長改正とて、国民の選挙権に制限を加える改悪であるだけでなく、これをてこに最後は9条改憲を目標としていると思われますので、あなどれません。
今回の選挙で注目されたのは、自公政権へのダメージもさることながら、憲法改正の発議に必要な国会議員の3分の2以上の議席数を確保するかにありました。


改憲は本当に防げるか

 前回の衆議院議員総選挙(2021年10月)では、改憲政党の議席数は3分の2を超えており、改憲発議が迫っていたと言っても過言ではありませんでした。岸田前首相は任期中改憲すると度々発言していました。その前の安倍前首相も同じ発言を繰り返していました。
改憲政党が一致すれば憲法改正は実現してしまう危険がありました。

 ほんとに際どいところだったのです。

 今回の選挙では、護憲政党の議員数はとりあえず3分の1以上は確保したようなので、実感として胸を撫でおろしたい気分です。

 しかし、憲法調査会の審議は積み重ねられており、一選挙で難を逃れたとしても、気を抜くことはできないでしょう。憲法調査会の動きには注視する必要があります。


「軍事大国化」に歯止めをかける

 今回の選挙のもう一つの注目点に、集団的自衛権の行使を駐留米軍と一体として進めるための軍事費倍増計画を容認するかどうかにあったと思います。

 2024年度予算では7兆9000億円の防衛予算が計上され、最高額を更新中です。しかも、5年で43兆円投入する予定です。以前は、文教予算と防衛予算はほぼ均衡状態でしたが、岸田政権下で倍増させたわけです。国立大学授業を増額することが話題となり、教育ローンの返済が若い人たちの生活を圧迫しているのに、軍事費の倍増はあり得ません。

 防衛予算が大幅に増額されたのは、2015年の戦争法の制定により集団的自衛権を容認し、専守防衛の歴代政府の方針を覆したことに始まり、2022年安保三文書を閣議決定して敵基地攻撃能力を保有し、防衛費をGDP比2%に引き上げる流れに沿ったものでした。

 台湾有事を想定し、南勢諸島を中心にミサイル配備が急速に進められています。沖縄本島の辺野古基地建設も完成の見通しもなく進められています。普天間基地が周辺住民に危険だというのでその代替基地とされたのですが、米軍は辺野古基地が完成したとしても普天間基地を明け渡すと約束はしていません。

 このような無茶な防衛計画はもっと多くの有権者に知ってもらう必要があると思っています。

 今年は参議院選挙があります。ここでも自公政権が過半数割れを起こし、護憲と軍事大国化を阻止する政党が議席を大きく伸ばすことを期待したいものです。

以上


2024年9月19日~21日「地球の村,私の森」参加報告

弁護士 森 一恵


はじめに

1 ポーランド・スタロシチン森林技術学校(Starościn Forestry Technical School)で開催された生態系保護と平和を守るイベント「地球の村,私の森( Earth Village,My Forest)」に参加した。 パスクワーレ・ポリカストロ(Pasquale・Policastro)教授からの,被爆者の願い,日本反核法律家協会の役割を話して欲しいという依頼がきっかけであった。パスクワーレ教授は,イタリア出身,ポーランド・シュチェチン大学教授,国際反核法律家協会会員,スタロシチン森林技術学校でも教鞭をとる。

2 9月19日深夜,ベルリン・ブランデンブルク空港に到着。到着ロビーのバディー・ベア(Buddy・Bear)には,平和と寛容を世界に,という願いが込められている。


第2 9月20日

1 翌朝午前9時半,スタロシチンに向かう。ベルリン・ブランデルク空港からスタロシチンまで約115km,高速道路で約90分である。午前11時頃,スタロシチン森林技術学校(5年生の高等学校)に到着する。

2 ステージでは,トランペット演奏,合唱,表彰式,ポルトガルのフェルナンド・ミゲル・ラポッソ(Fernando・Miguel・Raposo)さん他による天地天扇(TENCHI TESSEN)等が行われている。天地天扇は,日本の座禅と合気道と居合と中国の太極拳を組み合わせ,扇子を使用して演じる芸術である。

3 次に運動場の各ブースを見学する。蜂蜜試食,ポテトと木の実スープ試食,鹿肉スープ試食,ウクライナ移民保護,何の種クイズ,木工実演,密猟された鳥獣類展示,鷹狩実演,狩猟犬お披露目等のブースがあった。近隣の小学生が親子で参加している。生態系保護と平和の大切さを体験することが目的である。私も蜂蜜と2種類のスープを試食した。

4 昼食後,ディベート「共同体は森林で囲まれた自然の中で生存する」(Communities live in nature surrounded by forests)を見学する。まず卒業生モニカ・ブルゾズカ(Monika・Brzozka)さんから,森林再生活動の経験が報告された。
次にマルコ・ミリオラティ(Marco・Migliorati)さんから,「未来の森」プロジェクトの報告がなされた。次にエヴァ・ステファノフスカ(Eva・Stefanowska)判事(ワルシャワ在住)から,家族区画園,総合的な法整備について報告がなされた。
最後に,パスクワーレ教授により,人類と自然が共存する上で,森林再生活動が必要である旨のまとめがなされた。

5 夕食後,寄宿舎で就寝。寄宿舎はシンプルな造りである。


第3 9月21日

1 朝食と天地天扇の体験学習後,ディベート「平和と人類の自然」(Peace and Human Nature)に参加する。まず「Toxic NATO」(ICBUW提供),「被爆者の声」(故岩佐幹三さんの証言,ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会提供),「森林再生活動」(ワールドピースラボ提供)の上映が行われた。

2 次に,①ドイツのマンフレッド・モーア(Msnfred・Mohr)教授から劣化ウラン弾が人命や環境に与える影響,②私から,日本反核法律家協会の役割,二度と被爆者を作り出してはならない,核兵器も戦争もない世界を,という被爆者の願い,③チリのマルタ・リディア・パルマ(Marta・Lidia・Palma)博士から国際平和について,④ポーランド軍の方からNBCRE(核兵器,生物兵器,化学兵器,放射能兵器,高性能爆薬等爆弾)状況分析と軍事的解決放棄の必要性,⑤フェルナンドさんから,天地天扇は自然と調和し,世界平和を目指す目的がある旨の報告が行われた。最後に,平和を願い学生が製作した折り鶴紹介とパスクワーレ教授によるまとめがなされた。

3 昼食後,学校周辺の森林散策。松,樫,菩提樹等の樹木が生育している。一緒に参加した妹は,「学校の森というか,森の中の学校。そもそも森の規模が違う。」と感想を述べた。


第4 終わりに

9月22日早朝,スタロシチンを出発。ベルリン・ブランデルク空港を経て,翌9月23日,帰国する。  「地球の村,私の森」に参加し,生態系保護と平和のため,国際間や世代間の協力の必要性を再認識した。パスクワーレ教授の言葉を引用して,私の報告を終わりとしたい。古代ローマ帝国では「汝平和を欲さば,戦への備えをせよ」(Si Vis Pacem Para Bellum)が格言だった。しかし「汝平和を望むなら,平和への準備をせよ」(Si Vis Pacem Para Pacem)が正しい。

以上





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