2023年元旦

三重合同法律事務所事務所コラム

2023年1月

2023年元旦

 明けまして、おめでとうございます。

 安倍元首相銃撃事件のあと、世界平和統一家庭連合(統一協会)と政治家の接点が次々と明らかになっています。統一協会と関係を持つ政治家は、自民党を中心に多数いて、自民党の政策に少なからぬ影響を与えていることも明らかになっています。

 昨年の参院選と一昨年の衆院選では、友好団体「世界平和連合」「平和大使協議会」が複数の自民党議員に事実上の「政策協定」にあたる推薦確認書を提示し、署名を求めたことも判明しています。

 「宗教」に名を借りて、因縁による害悪を告知して恐怖に陥れて多額の金銭を献金させていた統一協会と関連団体は、宗教法人法第78条の2に基づく報告徴収及び質問の適切な行使のあとで、速やかに解散されることを望むばかりです。

 今年も所員一同、平和、人権、暮らしを守る諸活動にまい進してまいりますので、どうか宜しくお願い申し上げます。


相隣関係(お隣の木の葉が落ちてくる)

弁護士 石坂 俊雄

風子:爺、お隣の木の枝が、私の敷地に越境しており、葉が沢山落ちてきて、雨の時に家の樋が詰まってしまい雨水が樋から漏れてくるのだけど、何かいい方法がない。
爺 :それは、困ったね。隣の人に木の葉が沢山落ちてきて樋につまるので、なんとか葉っぱが落ちないようにしてくれませんかと頼んでみたら。
風子:頼んでいるのだけで、「あーそうですか」と言うだけで、対策を取ってくれないから困っているのよ。
爺 :このような隣近所の問題を解決するために民法では、相隣関係についての条文があるのだよ。
風子:どのようになっているの。強制的に私が木の葉が落ちないように木を切ることができるのかな。
爺 :今までの規定は、「隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる」というものだったのだ。
これだと、風子の家のように枝を切ってよとお願いしても枝を切ってくれないときは、裁判所に枝を切りなさいという訴訟を起こして、裁判所から判決をもらわないと切ることができなかったのだよ。
風子:裁判まで起こすのは、時間と費用がかかるから大変よね。
爺 :そこで、今回、民法の相隣関係の規定が改正され、竹木の所有者に枝を切って下さいと相当な期間を決めて伝えても切ってくれないときは、枝を切っても良いと言うことになったのだ。
この規定は、今年の4月1日から施行されるよ。
風子:そうなったら、木の幹を切ってしまってもいいのかな。
爺 :そこは、簡単ではないね。木は、隣の人のものであるから、木の幹まで切って倒してしまうことはできないね。できるのは、境界を越えている枝を切ることだね。
風子:それなら、家の境界から2mほど枝が出ており、幹までは境界から4mあった場合、境界から4m行った幹のところで切っていいの。
爺 :そのような切り方ができれば、当分枝が出てこないから風子にとっては都合がいいけど、そこまでは切れないね。せいぜい境界から50㎝くらい入ったところ当りが限界でないかな。
風子:切り取る費用は、誰が負担するの。
爺 :木の所有者が負担することになるね。
風子:越境している枝に果物に実が付いていて、それが私の家の敷地に落ちた場合は、私がもらっていいのかしら。
爺 :風子の敷地に落ちてきた果物の実については、隣地の人のもので、風子が勝手に食べていいということにはならないようだよ。
風子:分かったわ。ところで爺、山林を切り開いた太陽光発電の事業者が隣地の森林の枝が伸びて日射が遮られるからといって切ってもいいのかしら。
爺 :それはね、森林の一部を伐採して太陽子パネルを設置した場合は、隣地の枝の越境は当然に想定されるので、発電事業は、発電に支障をきたさないスペースを空けてパネルを設置するべきではないかと考えられるので、新民法の規定によっても枝を切ることは難しいだろうね。
風子:お隣さん同士の関係だから、それぞれのおかれた立場を考えて判断をすることになるのね。
爺、腰が痛いと言ってたけで、昨年は何かスポーツの大会に出られたの。

爺 :まだ、スポーツの大会は、以前ほど開催されていないけれど、志摩市であったトライアスロンの大会に腰痛の痛み止めを飲んで出たよ。幸い、腰は痛くならずに完走し、75歳以上のカテゴリーでは、1番だったよ。二人しか出ていなかったけどね。
風子:後期高齢者なのだから、皆さんに迷惑かけないように適当にしてね。


LGBTQと旧統一協会

弁護士 村田 正人

 オーストラリアのシドニーは南半球にあって青い海と白い雲のコントラストが鮮やかな夏の季節である。2月になると3大祭りのひとつである年に1度のLGBTのお祭りマルディ・グラが始まる。数年前、シドニーの歴史的建造物である裁判所のダーリングハーストコートを見学に行ったとき、至る所でレインボーカラーを見かけ、大規模なパレードの様子がテレビ放映されていた。街をあげてのお祭りだ。多国籍、多文化国家のオーストラリアでは、2017年12月に同性婚が合法化されている。2か月にわたって同性婚の是非を問う国民投票が行われ、賛成が61.6%、反対が38.4%で賛成が反対を大きく上回った民意を反映した法制化である。

 日本でもここ数年、LGBTQ(性的マイノリティ・性的少数者)の権利擁護の議論が盛んとなってきた。しかし、反対する勢力も根強い。ジェンダーやLGBTの自由度を「行き過ぎたもの」として阻止しようと、政治的指向性を同じくする自民党議員に働きかけてきたのが、旧統一教会とその政治団体の「国際勝共連合」である。憲法改正の議論でも、旧統一教会との関係で注目されているのが、自民党が2012年にまとめた「憲法改正草案」である。東京新聞は《旧統一教会側と自民党、改憲案が「一致」、緊急事態条項、家族条項…濃厚な関係が影響?》という記事を掲載し、旧統一教会の政治部門とされる国際勝共連合(勝共連合)の改憲案と、自民党の改憲草案が、「緊急事態条項」や「家族条項」などで一致していると指摘している。

 憲法改正論者に中には、家父長制の「家」制度を否定して男女平等の礎となった憲法24条の考えに反対し、「伝統的家族」を志向する保守的な立場から「家族保護条項」の創設を唱える者もいる。

 選択的夫婦別姓は、平成27年12月16日の最高裁判所大法廷判決で、国家賠償請求訴訟の訴えが退けられ、夫婦同氏規定(民法第750条)は憲法第24条に反しないとの判断がなされた。しかし、裁判官15人のうち女性3人を含む5人は憲法違反であるとの意見を表明している。裁判所での解決が期待できないのであれば、国会で解決するしか方法がないが、同性婚やパートナーシップ(お互いを人生のパートナーとし、日常の生活において相互に協力し合うことを宣誓した二人の一方又は双方が性的少数者)の法制化は、旧統一教会や国際勝共連合の国会議員へのロビー活動が盛んであればあるほど、その実現は困難のままに終わるだろう。

 世界に目を向けると、アメリカ合衆国の連邦裁判所が、昨年6月24日、人工妊娠中絶を憲法上の権利として認めた1973年の最高裁判決を覆し、中絶を規制する法律を容認して、女性の権利を否定する判断を下した。元大統領トランプの裁判官人事を色濃く反映した結果である。

 女性の社会進出に関しては、ノルウェーをはじめとして「クオータ制」を憲法や法律で取り入れている国がある。「クオータ制」とは、政党の候補者や会社役員に女性の割合を決めて義務化する制度である。1988年にノルウェーで「公的機関が4名以上の構成員を置く委員会、執行委員会、審議会、評議員会などを任命または選任するときは、それぞれの性が構成員の40%以上選出されなければならない」という男女平等法ができたことに始まるとされる。

 民意を反映した法制度の改革は、子供や孫の世代に対し、よりましで快適な社会を築くための世代間の責務である。


憲法が危ない!

弁護士 伊藤 誠基

改憲議席に達す

 昨年7月の参議院選挙で憲法改正に賛成する政党の議席数が3分の2を超えました。このままいきますと戦争放棄を定めた憲法9条が国会の発議により改憲の手続きに乗ってしまうという危機を迎えます。

 国会の発議があっても、国民投票にかけられるのでそこで食い止めることは可能です。だけど実際には国民投票で否決させることはとても難しいことです。

 ですから、発議そのものにストップをかけることが重要なこととされています。

ロシアのウクライナ侵略の影響は

 ロシアのプーチン大統領は、昨年2月ウクライナへの侵略戦争を始めました。

 政府はこれに乗じて、敵基地攻撃能力の保有、軍事費のGDP比2パーセント実現など大軍拡の議論を進めています。

 ウクライナの現実は明日の東アジアとばかり、危機感を煽るような言説がまことしやかに叫ばれています

 ウクライナ問題を受けて、防衛費増額はやむなしという意見が多くなっているような一部世論調査もあります。

 これも9条改憲の危機の要因となっています。

今こそ9条の出番です!

 防衛費はGDP1%、非核3原則、航空母艦など敵基地攻撃を前提とする武器は保有しない、集団的自衛権は認めないというのは歴代自民党政権がまがりなりにも憲法9条があったからこそとってきた防衛の基本政策のはずでした。

 そのため、あのベトナム戦争では自衛隊員がベトナムに派兵されずに済みました。9条の御蔭でアメリカの要請に応じて海外派兵せずに済んだのです。

 ところが、安倍政権は2015年安保法改正で改憲手続を経ずに集団的自衛権を一部容認し、敵基地攻撃能力保有の議論を展開しはじめたのです。

 しかし、9条は厳然として存在しています。いかに選挙で選ばれた国会議員によって成立した政権であっても、憲法の制約を受けなければならない立場にいます。

 憲法前文は、戦争は国権の発動によるものだとしています。戦争を起こすのは政府なんです。それを起こさせないようにわっかをはめたのが9条です。これは国民が政府に課した足かせです。

 私たちは改憲議論の前に今こそ声高に9条を守れと政府を追い込まなければなりません。前の大戦の教訓を結実させたのが日本国憲法だったのですから、同じ道を歩ませないようにするのが今に生きる私たち国民の責務だと思います。

改憲はやっぱり駄目

 そうはいってもロシアだけでなく中国の軍事力も心配だし、北朝鮮のミサイルも脅威だと考えている方々も大勢いることも事実です。

 しかし、一方でこういう考え方があります。

 中国や北朝鮮が本当に日本を侵略するようなことがあるのでしょうか。中国からは過去モンゴル帝国が鎌倉時代長崎に侵入しようと試みたが失敗したことがあるだけです。朝鮮半島からは攻められたことはなく、逆に豊臣政権時代と昭和年代こちらが侵略したくらいです。

 現代に限っても、尖閣諸島や竹島で国境問題で緊張関係があるといっても、侵略の危機があるとは言えません。北朝鮮のミサイルは対米戦略の一貫で日本を狙ったものではありません。中国は国連の常任理事国、北朝鮮も日本と国境はなくとも、国連の加盟国です。日本を侵略する大義は微塵もありません。日本はウクライナではありません。

 ところが、9条を改正し、集団的自衛権の行使としてアメリカと軍事的に歩調を合わせれば、これらの国の敵国になりかねません。

 どちらが危険なのかよく考える必要があります。

自民党は統一協会に牛耳られている

 安倍元首相の銃撃事件で自民党と統一協会との深い関係が一挙に吹き出てきました。

 統一協会はダミー会社を介在させて霊感商法を推進し、あるいは信者をマインドコントロールして高額献金させ、家庭を破壊する反社会的集団です。世界平和統一家庭連合と名称変更していますが、実態は同じです。

 外国に本部のあるカルト宗教団体が多数の自民党議員に食い込んで、運動員として、秘書としてかかわり、自らの野望を実現しようとしていることが社会問題となっています。

 統一協会は北朝鮮政府と深いつながりがあると言われており、自民党の改憲案は統一協会の影響を受けていると噂されています。

 政府は統一協会との関係を切ろうとしているようですが、その関係は歴史的に古く、自民党のDNAになっています。

 改憲などもってのほかで、自民党自らが調査し、国民の納得を得るまで改憲を封印するのが筋です。

 今だからこそ改憲発議にストップをかけるべきです。


核兵器禁止条約第1回締約国会合の成果と今後の課題

弁護士 森 一恵

1 核兵器禁止条約第1回締約国会合の開催

2022年6月21日から23日にかけて,オーストリアのウィーンで,核兵器禁止条約第1回締約国会合が開催された。日本政府は,唯一の戦争被爆国であるにも関わらず,オブザーバー参加すらしなかった。

2 核兵器禁止条約第1回締約国会合の成果

核兵器禁止条約第1回締約国会合では,ウィーン「宣言」が発出された。 概略は,以下のとおりである。

1 壊滅的な人道上の結末と被害者支援・環境被害修復の必要性 宣言第3項は「核兵器がもたらす壊滅的な人道上の結末は,・・・破壊,死,移住をもたらすだけでなく,環境,社会経済的持続可能な開発,世界経済,食料安全保障,現在および将来の世代の健康に長期にわたる深刻な損害を与える。 」と規定している。その上で宣言第3項は「すべての国は,・・・核武装国の過去の使用および実験によって生じた被害者を支援し,被害を救済し,環境被害を修復する責任を共有している。」として,被害者支援と環境被害修復の必要性を規定している。

2 核兵器使用・使用の威嚇の違法性と核抑止論の否定   宣言第4項は「核兵器のいかなる使用または使用の威嚇も,国際連合憲章を含む国際法の違反であることを強調する。」として,核兵器使用・使用の威嚇が国際法に違反すると規定している。また宣言第5項は「核抑止論は,核兵器が実際に使用されるという威嚇,すなわち 無数の生命,社会,国家を破壊し,地球規模の壊滅的な結末をもたらす危険性に基づいており,その誤りをこれまで以上に浮き彫りにするものである。」として核抑止論を明確に否定している。

3 核兵器禁止条約と核不拡散条約(NPT)との相互補完性 宣言第12項は「我々は,・・・核不拡散条約(NPT)を軍縮・不拡散体制の礎石と認識し,それを損なう恐れのある威嚇や行動を遺憾とする。NPTの約束を完全に守る締約国として,我々は,本条約とNPTの補完性を再確認する。」として,核兵器禁止条約とNPTは相互補完関係にあることを再確認している。

3 今後の課題

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を契機に,世界において,核兵器使用の現実的リスクが冷戦以降で最も高まっている。2022年8月1日から同月26日にかけてニューヨークの国連本部で開催されたNPT再検討会議でも,前回のNPT再検討会議に引き続いて「最終文書」の採択には至らなかった。 核兵器の使用は,現在,将来の世代にわたり壊滅的な人道上の結末をもたらすのであり,人類と核は共存できない。2023年11月に開催される次回締約国会合においては,核兵器保有国や核兵器依存国の参加を前提として核兵器禁止条約が普遍化すること,国際平和が回復することを願い,本論考を終りにさせていただく。 

以上





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