村田 雄介の記事一覧

三重合同法律事務所事務所コラム

村田 雄介の記事

「相続法分野」の法改正について

2019年8月13日


弁護士 村田 雄介

2019年7月1日から相続に関して、いくつからの法律が施行となりました。

すでに自筆遺言の作成方法に関する法律は、2019年1月13日から施行されていますが、新たに、「遺産分割前における預貯金の払い戻し制度」「持ち戻し免除の意思表示の推定」「特別の寄与」に関する法律等が2019年7月1日から施行されます。

今後も2020年4月1日から「配偶者居住権」に関する法律が施行され、2020年7月1日からは「法務局での遺言書の保管」に関する法律が施行されます。

相続法分野の法律が立て続けに施行となりますが、今般施行となる「遺産分割前における預貯金の払い戻し制度」について軽く紹介致します。

この制度は相続人(相続する人)の各種の資金需要に迅速に対応することを可能とするため、裁判所手続きを経ることなく、一定の範囲で遺産に含まれる預貯金の払い戻しができるようにするものです。

施行は2019年7月1日からですが、同日より前に発生した相続についてもこの制度による払い戻しが可能です。

払い戻し金額は一つの金融機関で最大150万円となっており、2つだと300万円となりますが、そもそも(預貯金債権の3分の1×法定相続分)という上限規制もあります。従って、相続人が子ども二人で、普通預金が300万円が一つある、というケースでは、50万円(=300万円÷3÷2)しか払い戻しを受けられません。

このように多額の払い戻しを受けることはできませんので、大口の資金需要がある場合には、新たに創設された仮処分(家事事件手続法200条3項)を利用することになります。なお、この法律は、2019年7月1日より前に発生した相続については適用されませんのでご注意下さい。

以前は、「急迫の危険の防止」という厳しい要件(同法200条2項)を課していましたが、同法200条3項は、「権利行使の必要性」「他の共同相続人の利益を害しないこと」という要件であるため、以前よりは使いやすくなりました。

これらの新しい規定がどれほど使い勝手があるかは、まだまだ未知の部分がありますが、今後、選択肢の一つにはなってくるものと考えられます。

 


外国人技能実習生について

2019年1月2日


 弁護士 村田 雄介

 外国人の技能実習制度は、建前は、技術力の海外移転という国際貢献の一環ですが、実際には、企業が安価な労働力を確保するために利用されています。また、来日する技能実習生とっても、技術を学ぶためではなく、できるだけ多くの賃金を得て、母国に持ち帰りたいという目的となっています。

 このように、建前と実体がかけ離れており、その制度もあまりに不備が多ため、不正行為が多発し、技能実習生への人権侵害が最近クローズアップされています。

 一つは、技能実習生の失踪防止のケースで散見されます。技能実習生の失踪数が2割を超えると管理団体はその後の受け入れができなくなることから、管理団体は技能実習生が失踪しないようにあらゆる手段を講じます。この点、旅券の預かり、預金口座の無断開設と預金の払戻、通帳・印鑑の管理行為はいずれも判例上(福岡高裁平成22年9月13日判決等)違法とされていますので厳に慎むべきです。

 また、技能実習生は、労働者として、労基法等の適用を受ける(名古屋高等裁判所平成22年3月25日判決等)ため、その賃金が最低賃金を下回ってはいけないし、労働時間、休日等も適切にとらせる必要があり、日本人労働者と賃金に差が出る場合には、合理的な理由がなければなりません。もちろん、妊娠禁止規定を作り、妊娠した際には解雇するなどという規定を作ったとしても、男女雇用機会均等法8条3項に反し無効となります(富山地裁平成25年7月17日)ので、違法な就業規則等にならないように注意が必要です。

 もっとも、技能実習生の在留資格は、管理団体を通じて入管に提出された実習実施計画書に従って技能実習を行うことを条件に「技能実習」の在留資格が認められています。したがって、管理団体を通じて実習先変更許可を入管から受ける場合はともかく、技能実習生が失踪した際には、在留資格が失われ、帰国を余儀なくされることになります。

 このように、技能実習生をとりまく環境は、日本人労働者と同等のものと異なるものがあるのであって、その対応には注意を要します。


相続税の申告期限と配偶者税額軽減措置の適用について

2018年8月16日


弁護士 村田雄介

  相続が発生したときに,相続税の申告が必要ですが,遺産分割の手続きや配偶者税額軽減措置との関係については?というところが多いです。そこで,今回は相続税の申告期間と配偶者税額軽減措置について少しだけお伝えします(詳細は省きますのでご了承下さい。)。

1 原則的な相続税の申告期間

  まず,相続税の申告期間は,相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内とされています。とりあえず,亡くなった日から10ヶ月以内に申告をしとけば問題はありません。

2 遺産分割ができていない場合

  遺産分割協議等が終わっていない場合は相続する遺産の内容が不明で申告ができないじゃないか,という疑問があるかと思いますが,この場合でも,相続税の申告をしなくてよい,ということにはなりません。遺産分割協議等が終わっていない場合には,法定相続分に従って取得したものと仮定して相続税の申告をする必要があります。

  夫が亡くなり,法定相続人が妻と子供2人の場合は,妻は2分の1,子供らはそれぞれ4分の1を取得したと仮定して相続税の申告をする必要があるということになります。当然,その申告の際に,相続税を納付する必要があります。

3 遺産分割協議等が死亡日から10ヶ月を過ぎた後に決着した場合

  では,その後,遺産分割調停や審判が終わったが,相続税の申告内容と違う内容で決着した場合はどうするか,というと,決着してから4ヶ月以内に修正申告をして,不足分の相続税を納付したり,超過分の相続税の払い戻しを受けることになります。

4 配偶者の税額軽減措置を受ける場合

  配偶者の税額軽減措置を受ける場合には,配偶者が相続する遺産が確定していることが必要ですので,分割ができていない場合は,とりあえず,上記の法定相続分に従った税務申告をしたうえで,申告期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月)から3年以内に修正申告をする必要があります。もっとも,3年以内に調停等が成立しない場合は,申請期間延長の申請をすることによって,申告期間を延長させることもできます。

  なお,配偶者は,1億6000万円までは非課税(税額軽減)となりますが,あくまで相続税の申告をすることが必要です。相続税の申告をしないと配偶者の税額軽減を受けることはできませんのでご注意ください。


固定残業代について

2018年1月1日


弁護士  村田雄介

 1 固定残業代とは

  固定残業代は、残業時間をあらかじめ想定し、毎月定額の残業代を支払う方法です。みなし残業代や所定割増賃金と言う場合もあります。固定残業代は、毎月の支払金額の計算を省くという点、従業員がむやみな残業をしなくなるという点、会社の支出を想定し易くなるという点でメリットがあるため、多くの企業で採用されている方法です。

  しかしながら、この固定残業代が裁判において無効とされた場合、企業は、多大な支出を要求されることになるため、固定残業代の運用については、しっかりとした知識をもとに行う必要があります。

2 固定残業代に関する規制

  そもそも、固定残業代は労働法上、直ちに無効となるものではありませんが、判例上、①通常の労働時間に対する賃金と明確に区別できる形で支払われる必要があり、②固定残業代が労基法所定の額を下回るときは,その差額を当該賃金の支払時期に精算するという合意が存在するか,あるいは少なくとも,そうした取扱いが確立していることが必要であり(東京地判・平成23年(ワ)第25441号未払い賃金等請求事件等)、これらが行われていない場合には無効となる可能性が高いということになります。

  したがって、固定残業代を有効に利用するには、結局のところ、①労働契約書には明確に固定残業代の金額と固定残業代に含まれる残業時間分を明記すること、そして、②残業時間は毎月給与明細に記載し、固定残業代に含まれる残業時間分を超えていないことが従業員に分かるようにすること、③固定残業代に含まれる残業時間を超えている場合には超過分を追加支給すること、が少なくとも要求されていると言えます。

3 最後に

  従業員側からすれば、このような取り扱いがなされていない場合には、未払残業代請求を検討することも十分に考えられるでしょう。

  企業側からすれば、未払残業代は裁判では付加金請求の対象であり、未払残業代と同額を付加金として請求されうることを肝に銘じ、慎重に取り扱う必要があると言えます。


個人情報保護法について

2017年7月31日


弁護士 村田雄介

 写真(雄介)

平成29年5月30日から改正された個人情報保護法がスタートしました。大きな変更としては、個人情報の取り扱い事業者の範囲の拡大にあります。つまるところ、今後はほとんどの事業者(法人を含む。)が個人情報保護法の義務を負うことになります。個人情報データベースには、携帯電話のアドレス帳、メールソフトのアドレス帳などファイル化している登録カード以外の電子通信機器のデータベースも対象となることに注意が必要です。

個人情報保護法で定められたルールは大きく分けるとつぎのとおりです。

まず、①利用目的の通知・公表等、②個人データの安全管理措置を実施、③第三者に提供するときの同意の取得、④トレーサビリティ(第三者情報提供の記録の作成)の確保の4点が大きな点かと思います。

いずれも多少の準備と講習等で対応可能なものですので、早目の対応が重要かと思います。個人情報の漏洩に係る損害賠償額が平成13年にはデータ1件につき1万5000円であった(宇治市住民基本台帳データ大量漏えい事件・大阪高裁平成13年12月25日)のが、平成19年には3万5000円(TBC個人情報流出事件・東京高裁平成19年8月28日)になるなど情報1件にかかる損害賠償額が増大傾向にあり、現在としては1件5万円程度ではないかとの報告も見られます。事前に個人情報の管理方法を確立することによってこれらの損害賠償請求の回避が可能となることからも早めの対応をお勧めしております。


労働者からみた失業保険について

2017年1月1日


写真(雄介)

弁護士 村田 雄介

 前回は企業法務側の視点から就業規則に関してご報告させて頂きましたので、今回は労働者側からみた失業保険についてご報告致します。

 失業保険を受けられる労働者は、在職中に雇用保険に加入していたことが最低条件ですが、失業保険の給付期間やその金額は、辞めた理由によっても変わります。

 労働者は種々の理由で会社を辞めることになりますが、離職事由は、退職、普通解雇、懲戒解雇と大きく分けて3つあり、さらにいくつかに細分化されます。

 労働者として知っておきたいことは、正当な理由なく自主退職した場合や重責解雇の場合は、概ね3ヶ月の間、失業手当の支給が受けられません。一方で、その他の解雇や自主退職でも結婚をきっかけに遠方への移住する場合などは、3カ月間の不支給期間がありません。ですから、離職理由は失業保険の給付額に大きな影響を与えるものなのです。

 そこで、重要なのはハローワークに提出する離職票にある離職理由欄です。会社は、会社にとって都合のよい離職理由(自主都合退職など)にチェックを入れる傾向が強いため、会社に辞めさせられた場合(労働者の自由な意思のみで退職していない場合)には、会社が「自主都合退職」にチェックを入れていたとしても、労働者記載欄では、「解雇」にチェックを入れる必要があります。労働者と会社で離職理由が異なっている場合には、ハローワークから会社に確認の電話等が入り、異なっている理由の聞き取りがなされます。

 多くのケースでは、ハローワークとのやり取りの中で、会社が離職理由を「解雇」に訂正することが多いようです。

 また、解雇を無効として争う場合でも失業保険は受けられます。正式には仮給付という形ではありますが、生活費を担保する手段の一つですので、仮給付は受けておくべきです。 法的には、従業員である地位の確認の仮処分とともに給与の支払いの仮処分の申し立てを行うこともありますが、上記申立てを行うかどうかは案件によってメリットデメリットが異なりますので、ケースバイケースということになります。

 労働者の退職に伴う失業保険の問題は、支給事由、支給期間、支給額、本給付・仮給付の別とその問題が意外と多岐に渡りますので、離職票を出す際には一度当事務所までご相談して頂くことをお勧め致します。

 


会社側からみた就業規則等について

2016年7月1日


弁護士 村田 雄介

写真(雄介) 一定の事業規模になると就業規則を制定する必要がありますが、これは事業所毎に作る必要があります。同じものを流用しても構いませんが、あくまで届出は事業所毎です。そして、これは従業員に周知しておく必要がありますので、基本的には、従業員に配布すべきものでしょう。なんと言っても、就業規則は、雇用契約の内容になるもので、会社にとっても、従業員にとっても、大切なものです。

 就業規則の内容は、特殊な業務でない限り、ほとんどの会社で似たり寄ったりの内容ですが、あるとないとでは大変違います。お互いにグレーな部分が減り、無駄な争いが減らせるというのは会社や事業主にとっても大きなメリットです。就業規則をつくってない方は、会社を設立してなくとも出来る限り作るべきだと考えます。

 最近では、企業秘密の奪取が問題になることも多く、退職した従業員がノウハウ、顧客リスト等を持ち去って、自分で事業を開始するということもあります。役員が競業を行った場合には、競業秘止義務違反で損害賠償請求が可能ですが、これが従業員の場合には、損害を請求することはそう簡単ではありません。

 このような従業員による企業秘密の奪取行為を防ぐためには、企業秘密が不正競争防止法上の「営業秘密」にあたるようにしておくことが肝要です。就業規則で秘密保持義務を課すだけでは「営業秘密」にはあたりません。まず、ノウハウや顧客リストを「営業秘密」として扱うという規定を作り、従業員への教育をし、「秘」「極秘」などの印鑑を押し、保管場所を固定するなどして実質的にも「営業秘密」として扱うことが必要です。

 これらの対策をすることは大変なことではありますが、ことが起こってからではリカバリーできませんので、まだ対策をされていない方は是非お早めにご相談下さい。


相続の手続き

2016年1月1日


弁護士 村田 雄介

1 はじめに

相続は、相続分に争いがある場合と争いがない場合によって、相続の手続き(不動産の名義変更等)方法が大きく変わりますが、今回は、ざっくりと手続きについて紹介します。

2 遺産の種類と手続き

所謂遺産とは、亡くなった方の財産のことですが、遺産には、①不動産(土地、建物)、②現金、③預貯金、④生命保険金等が考えられます。注意しないといけないのは、④生命保険金は、受取人固有の財産ですので、遺産には含まれません。平たく言うと、他の相続人の方は、生命保険の分割を要求することはできない、ということになります。

まず、①不動産ですが、現物分割と代償分割があります。現物分割とは、不動産をそのまま割る方法ですが、代償分割は、自分の相続分にあたる価値の分を金銭でもらう方法です。金銭でもらう場合には、不動産を評価する必要がありますが、評価の方法には、路線価、固定資産税評価額、公示価格等いくつか方法があります。それぞれメリット、デメリットがありますので、注意が必要です。

次に、現金ですが、遺産分割協議、遺産分割調停等に沿って分割を行うことになります。逆に、遺産分割協議等が終わる前に現金の引渡しを請求することはできませんのでご注意下さい。

預貯金は、遺産分割協議、遺産分割調停等がまとまる前に、自身の相続分に応じた金額のみ、各金融機関に支払いを請求することができます。この請求の際、他の相続人の同意は不要です。

他にも、遺産には、車や株式等もありますが、それぞれ所轄行政機関が変わりますので名義変更等の手続き場所が変わります。

3 まとめ

相続の場合に、遺産をどうやって、どのように分けるか、については、各家庭の事情で様々な解決方法があります。

話し合いに行き詰った際、手続きの仕方が分からない場合等は、是非ご相談下さい。yusuke

 


労働問題とは

2015年7月31日


弁護士 村田 雄介

写真(雄介)

1 はじめに
    一言に労働問題と言ってもその中身は非常に多岐に渡ります。解雇、雇い止め、賃金未払い、パワハラ、マタハラ、過労死、労働災害等、およそ労働者の労働に纏わる問題すべてが労働問題に含まれます。
    この多岐にわたる労働問題は、それぞれにおいて解決方法がかなり異なるのも特色かと思います。

2 労働問題の特色
    労働基準監督署やハローワークはもちろん、警察、検察等の対応が必要な事案もあります。これらの関係各省庁との関係の中で事件の処理が行われることがままあるところが、労働問題の特色とも言えるのかもしれません。

3 裁判所の活用方法
    裁判所の手続きにおいても、訴訟、労働審判をいずれを利用するかも悩みどころではあります。労働審判を活用すれば早期に解決が図られますが、事実上、和解のための話合いとなりますので、解決金等の金額は訴訟に比べて低くなる傾向があります。一方で、訴訟は、労働審判と比べて、最終解決までに相当長期の期間がかかることになります。

  過労死、労働災害の事案では、労働審判を利用することはほぼないように思えますが、解雇、雇い止め、賃金未払い等では、労働審判を利用することもあります。

4 労働審判の活用
    しかし、労働審判では、証拠調べが厳格には行われない等の手続き的な制約も多いため、証拠関係が乏しい事件ではかなり不利な解決を強いられることが少なくありません。労働審判では、審判官(裁判官)の隣にいる労働委員から嫌味を言われることも少なくなく、その意味では訴訟より精神的に辛いと感じることもあるように思えます。
    ともすると、証拠等がそろっている場合は勝訴の見込みが強く、低額な解決金での決着を強いられることが少ない訴訟のメリットが多いように感じます。
    結局のところ、早期解決というメリット以外には労働審判を利用するメリットはありません。相談段階では証拠等がどれだけあるか不明であり、勝訴の見込みが分かり難い等の問題はありますが、私自身は、労働審判の利用は極力避けるべきではないかと考えています。


原子力発電について

2015年1月1日


写真 村田雄介弁護士 村田 雄介

1 第57回人権擁護大会について

平成26年10月2日,3日の二日間に渡り,函館で日本弁護士連合会主催の人権擁護大会が開催されました。

原発についても,シンポジウムが開催され,原子力専門家の小出氏らの対談,函館市長工藤氏への函館市による原発建設差止訴訟についてのインタビュー等がありました。そこで、今回は、原子力発電所についての同大会の報告を交えながら、現在の状況について批評したいと思います。

2 原子力発電の始まりについて

原子力発電は,ウランを燃料として核分裂による熱エネルギーを利用して発電を行うため,二酸化炭素を排出しない環境にやさしいクリーンエネルギーとして耳目を集めた発電システムです。

そもそも原子力(核分裂エネルギー)の利用は,第2次世界大戦中のマンハッタン計画において本格化し,核爆弾を作るという軍事目的に始まります。著書「ファインマン物理学」でも有名なファインマン博士がその計画に携わっていたことは有名ですが、その利用は軍事目的がまずあって、その副産物として経済的利用が始まったために、リスク評価が十分に行われないまま来ています。

3 原子力発電の利点とされた点について

確かに,原子力を利用すれば,少ない資源(ウラン)で膨大な熱エネルギーが取り出せることは確かです。結果,石油に依存しない世界を目指すという目的自体も非難されるようなものではないと思います。

しかしながら,原子力発電は,現在に至っては,東日本大地震等によりそのリスクが顕在化し,依然のように盲目的にその利用を肯定できなくなったのは誰の目にも明らかです。

4 原子力発電は,現在では利点がなく,リスクがあまりに大きいこと

⑴ 資源量としてのウラン

原子量発電に利用するウランは,エネルギー資源としてのその究極埋蔵量は,わずか7.4×1021Jであり,石炭の310×1021J,天然ガスの24.7×1021J,石油の20.6×1021Jと比較しても僅少です。この究極埋蔵量の低さは,ウラン燃料の再処理,プルトニウム燃料加工,高速増殖炉,高速炉燃料再処理のウラン・プルトニウムの再利用サイクルの技術が未だ確立されておらず,この技術の確立の見通しが全く見えないためです。

⑵ 現在に至ってもリスクが解消されないこと

また、核分裂のコントロールの難しさはもとより、使用済核燃料(高レベル放射性廃棄物)の処分が現在の科学技術力であっても実現の見通しがまったくたっていません。すなわち,日本国内で、人類,ひいては世界へ悪影響を及ばさない形で10万年にも及ぶ長期の保管を行うことは現時点での技術力では不可能とされています。

5 今後の原子力発電の帰趨について

原子力発電の稼働については,①即時に全て廃炉にすべき,②緩やかに全て廃炉にすべき,③多少だけ残して廃炉にすべき,③積極的に利用すべき,とその立場は多数に渡ります。

しかしながら,先に見た現在の原子力発電の状況,その制御の困難性・処分困難性に鑑みれば,原子力発電の早期再開を認めるわけにはいかず,大飯原発の稼働の差止めが認められたのは,訴訟としては画期的であるものの,世の中の流れとしてはそうあるべきだったものと思えます。

今後も原子力発電所の再稼働問題は続きますが、私としては、少なくとも拙速な議論のもとに早期に再稼働することには反対です。





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