昨年から続く新型コロナウイルス感染症は未だ終息の見込みがなく、被害が続いています。
新型コロナウイルス自体は天災ですが、被害の拡大は政府による人災です。この間の新自由主義政策の下で進められてきた病院再編、病床削減、保健所の統廃合が検査や治療を進める上で重大な障害になり、「医療崩壊」を招いています。更に、政府は「GoToキャンペーン」を続けて感染拡大をもたらした上、感染拡大防止に逆行する東京オリンピックも強行しました。
その一方で、一旦阻まれた憲法改定は諦めていません。スガ首相が「憲法改正議論の最初の一歩」と位置づけた国民投票法改定案は成立されました。現在の情勢で憲法改定の必要はなく、むしろ、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」の保障(25条)など進歩的諸条項が守られていない点が正されなければなりません。
引き続き憲法の理念を守り、平和や暮らし、人権を守る活動を続ける所存です。暑い日が続きますので、お身体をご自愛下さい。
弁護士 石坂 俊雄
風子:爺、マイナンバーカードに健康保険証が入り、マイナンバーカードを病院で示せば、健康保険証が必要ないということは本当。
爺 :マイナンバーカードについているICカードを利用して、カードを医療機関の置いてあるカードリーダ(カードを読み取る器具)にかざすと健康保険証を提示しなくてもよくなるよ。ただ、政府は、今年の3月から行う予定であったが、不具合が出て10月に延びたのさ。
風子:なぜ、こんなことをするようになったの。
爺 :それは、2014年に閣議決定された「世界最先端」IT国家創造宣言」の中にマイナンバーカードのICチップを利用して健康保険証や国家公務員の身分証明書として利用するとなっていて、2019年3月末までにはマイナンバーカードが8700万枚交付する予定になっていたからだよ。だから、開始時期が遅れが、政府の方針に従って行っているのだよ。
風子:2019年3月で8700万人もの国民がマイナンバーカードを持っているの。
爺 :いや、それが2020年7月時点でのマイナンバーカードの取得率は、人口比17.5%にすぎないので、政府は、焦っているだ。
風子:私たちに便利なことはあるのかしら。
爺 :政府は、引っ越や転職をしても健康保険証を変える手続きがいらないとか、インターネットでマイナポータルというアプリをダウンロードするなどすれば、健康診断の内容や薬の情報を知ることができる。税金申告の際に医療費控除の申告が簡単になるとか、高額医療の支払いが限度額適用認定証がなくても、限度額以上の医療費が払わなくてもよいとか言ってるね。
風子:デメリットはないの。
爺 :一番心配されるのは、健康保険証としてよく使う人は、高齢者であり、いつも持ち歩くことになり、紛失したり、盗難にあったりした時に、住所・氏名・生年月日・顔写真までついているマイナンバーカードから、個人情報が利用されないか。マイナバーは、唯一無二の番号だからこれを利用して、個人情報を集められてしまわないかということだね。
風子:紛失しないように管理していればいいのでは、
爺 :そうならいいのだが、高齢者は、記憶があいまいであったり注意不足になるから、心配だね。
マイナンバーカードを利用した健康保険証は、すべての医療機関がカードリーダを備えていないから、使える医療機関と使えない医療機関がでてくるね。
また、鍼灸院、整骨院では、マイナンバーカードを利用した健康保険証は利用できないのだよ。老人介護施設でも使えないのだ。現在、施設に健康保険証は預けている人が多いが、マイナンバーカードは預けることはできないので不便だね。
さらに言うと、5年ごとに市役所に行って更新をする必要があり、これに気がつかず、医療機関に行ったら期限が切れていて使えなかったということも起こるね。
風子:今使っている紙の健康保険証は、使えなくなるの。
爺 :紙の健康保険証もつかえるよ、ただ、政府は、将来的には、紙の保険証の発行をやめて、マイナンバーカードの健康保険証への移行すると述べているから、廃止したと考えいるだろうね。
風子:政府は、もっと別のことを考えているのではないの。
爺 :本当の狙いは、国民の個人情報を集めて利用することだよ。医療でいえば、誰が、どのような病気でどのくらいの医療費を使っているか、チェックして、健康点数をつけて、健康点数が低い人には、保険料が上がります。生活を改善して下さいという誘導があるかもしれないね。つまり、政府が私たちの身体を管理する社会を目指していると考えられるね。
風子:よくわかったわ。爺、今年は、走る大会や自転車の大会はどうなの。
爺 :ほとんどの大会が開催されないね。ただ、乗鞍岳の畳平まで自転車で登る大会は行われる予定なので参加するよ。
風子:ゴールは3,000m近いから気を付けね。
弁護士 村田 正人
もと津市相生町自治会長は、津市の告訴により補助金詐欺事件で起訴されたほか、津市からの補助金の返還請求を受けて約1060万円を返還した。しかし、「資源ごみの持ち去り防止パトロール事業」などの委託料をだまし取られたとして約3000万円を追加請求された件については、令和3年6月30日現在、返還されたとの報道はない。
元市議の豊田光治さんと和田甲子雄さんは、令和3年1月、津市民のオンブズマン活動として、津市政と相生町自治会長の癒着に関する公開質問状を出した。
土下座・丸刈り事件、縁故飲食店での津市幹部職員参加による毎月のような誕生会の開催、ごみ箱設置の補助金として突出した年間135万円の支払い、公共事業の落札業者が自治会長との面談を実現できず工事を辞退させられるなど、およそ公正であるべき津市幹部職員と元相生町の自治会長との癒着について、津市民が納得のいく釈明を求めてきた。
津市は、令和3年5月27日、顧問弁護士2人による「津市自治会問題に関する最終報告書」を公表し、津市幹部職員と津市相生町自治会長癒着の経緯を明らかにしている。
豊田光治さんら18名の市民は、津市からだまし取った補助金を返還させるように住民監査請求を申立て、その結果、津市監査委員は、詐欺罪で起訴された3件について、令和3年6月14日まで返還を請求するための措置を講じるよう勧告した。冒頭の約1060万円の返還は、このような住民監査請求の成果である。
さらに、豊田光治さんら19名の市民は、「資源ごみの持ち去り防止パトロール事業」の委託料として、平成27年7月から令和3年2月までの間に支払われた5280万円の返還を求める住民監査請求を申し立てた。これについては、津市が、監査結果が出ていないにもかかわらず、冒頭の約3000万円の返還を請求する事態となっている。
しかし、「資源ごみの持ち去り防止パトロール事業」は、環境施設課長を丸刈りに させ、環境部長を土下座までさせた元相生町自治会長が、執拗に津市に持ち込んだ事業である。四日市市のパトロール事業(監視活動)は警備会社への委託をしており、非営利団体である自治会委託はしていない。自治会に営利事業をさせることはあってはならないことである。「資源ごみの持ち去り防止パトロール事業」の委託費5280万円は、相生町自治会の会計報告には記載されておらず、元相生町自治会長の個人事業である。このような不明朗な公金の流出は、全額の返還がなされなければ、津市市民の納得が得られるものではないだろう。全額返還請求の必要性は、住民監査請求の代理人弁護士としてだけではなく、一市民としての所感でもある。
弁護士 伊藤誠基
【コロナ禍で五輪突入】
菅政権は、先の通常国会を延長しないまま閉会し、コロナ禍で五輪の強行開催に突き進んでいます。
政府の感染対策分科会尾見会長は土壇場で消極意見を述べ、感染拡大の懸念を表明しています。7。月から8月にかけて第5波の感染拡大が予想され、多くの世論が延期または中止を求めるなかで、何という政策判断をしたのでしょうか。
昨年安倍前首相は五輪を延期すると決めたのち持病で辞任し、菅首相が政権を引き継ぎました。PCR検査を抑制し、アベノマスクを全国民に配布するような愚策は菅政権でも何ら変わっていません。
【安倍・菅政権に共通するもの】
安倍前政権の特徴は、何といっても軍事優先と政治の私物化です。
憲法改正をせずに法律で集団的自衛権の行使を容認し、次はいつまでも違憲のレッテルを張られている自衛隊員が気の毒だと言って憲法9条に自衛隊を明記する憲法改正を企てました。これは世論の力で阻止できました。
「もり・かけ・さくら」と揶揄されるお友達を優遇する政治の私物化は目に余るものがありました。桜を見る会の事件では、私たち法律家は政治資金規正法違反、公職選挙法違反で告発しました。安倍氏は逃れたものの、公設秘書については罰金刑で処罰されています。
では菅首相はどうでしょうか。本質は同じです。
【似た者同士】
菅政権は昨年9月16日発足しました。最初にやったことは日本学術会議から推薦のあった候補者を委員に任命しなかったことです。日本学術会議法では推薦を拒否できないことになっていたのを任命は総理大臣の権限だといって法を無視しました。昨年検事長の定年延長を検察庁法を無視して強行した安倍政権と同じことをやったわけです。自己の都合の悪い人物を排除するのも政治の私物化です。
今年に入ってからは、かつて自らが総務大臣をしたときに秘書官として採用した長男が衛星放送の東北新社に就職し、総務官僚を接待していた問題が浮上しました。長男は総務省を辞めてから監督される側の会社に入って官僚を接待していたわけで、役所と民間企業のずぶずぶの関係が出来ていたわけです。
軍事路線では、憲法改正の布石として憲法改正国民投票法を成立させています。今回の改正は投票方法について公職選挙法と同じ内容に合わせるもので、肝心の最低投票率や有料のネット・マスコミのCM規制などは定めない欠陥法です。投票率が3割、4割でも過半数で憲法が変えられてしまいます。有料CMは資産の多い勢力に有利となり、財力で憲法が改正されてしまいます。
【政治とかね】
安倍・菅政権で絶対に忘れてはいけないスキャンダルが河井夫婦の選挙買収事件です。
2019年の参議院通常選挙で河井元法務大臣は妻の案里氏を当選させるため、2700万円もの巨額を地元の多数の県議、市議にバラまいた前代未聞の買収事件です。法務大臣を務めたことのある人物が実刑判決を受けるという政治腐敗そのものを地で行く大不祥事です。
当時安倍氏は首相、菅氏は官房長官、自民党本部から1億5000万円が河井氏側に送金されています。買収資金がこれから出ているとも言われています。でも、両氏はだんまりを決め込んでいるのです。安倍氏は案里氏の選挙カーに乗り込み、菅氏は大好きなパンケーキを案里氏と一緒に食べる動画まで拡散させていました。
こんな政権をいつまでも許しておいてよいのでしょうか。お隣の韓国なら首都で100万人デモが起こっているはずです。
【野党共闘で政権交代を実現】
いつ衆議院が解散されるのか話題になっていますが、10月21日任期満了となるので、五輪後すぐ解散総選挙になる可能性が高いでしょう。
五輪の強行とコロナ対策の失政が重なり、政権の支持率は低迷です。
官民癒着、政治を私物化し、アベノミクスで格差を拡大させてきた安倍・菅政権を終わらせるためには、総選挙で野党が多数となり、政権を交代させるほか途はないのではないでしょうか。
野党がまとまれば現政権と互角の戦いができると言われています。
今年の秋は特に注目です。
弁護士 森 一恵
第1 父から聞いた話
1 私の父方祖父母は戦前,満蒙開拓移民として長野県から旧満州国吉林省永吉県にわたった。どうして父方祖父母が旧満州国にわたったか,わからない。長野県は,全国一の開拓移民を送り出した県である。私は当時の国策の犠牲だと思っている。
私の父は旧満州国で出生した。父の家族は満蒙開拓移民として,農業をしていた。鶏を飼育し畑を耕し,平穏な生活を送っていた。
2 ところが,旧ソ連のシベリアから満州への侵攻で生活は一変した。旧満州には関東軍が在駐していたが,軍馬だけ置いてどこかに行ってしまった。民間人を守るはずの軍隊が,どこかに行ってしまったことに対して,父は何も言わなかったが,私は憤りを持っている。
父が6歳の時に終戦となり,父の家族は,旧満州からの引き揚げることとなった。旧ソ連兵が,戦利品と思われる腕時計を何個も腕につけていたこと,父の家族にも腕時計の提供を要求したこと,引き揚げるために鉄道に乗車したが,爆破で線路が無くなっていて,途中,何度も鉄道が停まって動かなくなったこと,空腹になり,川で魚を捕まえようとしたら,近くを銃弾らしき物が通ったなど,幼かった父なりに記憶していた。
3 父の家族は,終戦から約1年かかって,日本に引き揚げてきた。 引揚船が,博多港に到着してからも,検疫のため1ヶ月程度船内に留め置かれた。1ヶ月程度船内に留め置かれた後,DDT散布を受けて,ようやく日本に入国できた。父の家族には父方祖父母の他,兄弟姉妹がいたが,引揚船内の腸チフスの流行で,父方祖母,弟,妹と家族の約半分を亡くした。博多から長野県までは鉄道で戻ったが,鉄道から眺める景色は戦後1年たっても空襲の傷跡が残っていて,焼け野原であった。
第2 私の思い
1 私は子どもの頃から,父の引き揚げ話を聞いて育った。昭和56年から残留孤児訪日調査団が訪日するようになったが,私にとっては他人事ではなかった。もし父が中国に残っていれば,私は別の国で別の人生を送っていたかもしれないからである。
2 引き揚げ話をしてくれた父は,今年,他界した。 父は武勇伝として私に話していたが,今思うと,戦争の悲惨さを伝え,二度と戦争があってはならないという思いで,話してくれたのだと思う。戦争を直接体験した世代が,段々と少なくなってきている。
戦争を直接体験した世代から戦争の悲惨さを聞いた者として,また法律家として,恒久平和主義の理念を定める日本国憲法を擁護し,次の世代に伝えることが私の務めである。
以上