弁護士 福井 正明
アメリカ大統領選挙は盛り上がりました。ただ上院議員をジョージア州でもう一人取らないと、バイデン大統領は、予算や法律など、重要なことを決定できません。
さて、今回の選挙速報をネットで検索していて良くわかったのが、州や郡の名前と位置、と得票状況です。よその国の選挙区など普通は興味ありませんが、今回、激戦州の選挙速報を見ていると、アメリカの州とその中の郡の位置が分かり、その州の政治傾向や経済の状況もよくわかりました。
激戦州となったラストベルト(錆びた地帯)は特に注目されました。
グレートレークス(五大湖)の一つ、ミシガン湖に面するミシガン州は最も激戦州でした。トランプ派の武装した男らが民主党の知事を誘拐して殺すことを企てたとして、FBIが犯人らを検挙しました。このミシガン州は、前の選挙とは逆に、民主党のバイデン候補が勝利し、バイデン氏の大統領選挙勝利の起点となりました。
選挙速報をcnnで検索すると、各郡(county)の名前、位置、得票数などが一度に検索できます。ミシガン州の郡は、例えは、北部にはマルケッテ(maruquette)、シャルレブワ(charlevoix)、モントコーム(montcalm)などフランス語源のものがあり、この辺りは、かつてフランスが統治していたことの名残りが伺えます。
中部に行くとカルカスカ(kalkasuka)、オタワ(ottawa)など、インディアンが呼んでいた名前の郡が出てきます。それらの外に、英語由来のグラッドウィン(gladwin)などが混在します。
南東に自動車産業の中心地デトロイトがあります。ポンティアックとかキャデラックという有名なアメ車の名前も、ミシガン州にその地名があります。
そしてこの「ミシガン」という名は、インディアンの言葉で「(野生の)米を食らう人々」を意味し、五大湖周辺では、野生のコメが生えていて、それを食べる部族がいたことを表しています。
この五大湖周辺のラストベルトには、他にも、オハイオ州、アイオワ州など、インディアナ州などインディアン由来の名前の州が沢山あります。その外、北部では南北ダコタ州、アイダホ州、モンタナ州、ユタ州などもインディアンの言葉由来です。
次に今回の大統領選挙のもう一つの激戦州となったアリゾナ州も見てみましょう。
アリゾナ州はアメリカの南西部に位置し、メキシコと長く国境を接しています。人口639万人。内陸最大の規模です。先端産業の展開でカリフォルニアからの人口移動が多くなっています。観光資源としてはコロラド川のグランドキャニオンやフーバーダムが有名です。
今回選挙速報で知った郡の名前を拾ってみると、ピマ(pima)、ユマ(yuma)、コチセ(cochise)、マリコパ(maricopa)、ココニコ(coconico)、ヤバパイ(yavapai)、アパッチ(apache)、モヘブ(mohave)、ナバジョ(navajyo)など、郡の大多数がインデアンの言葉です。
しかも、ピマ郡やマリコパ郡は、アリゾナ州の中心地で、ピマ郡には州第2の都市ツーソンが、マリコパ郡には第1の都市州都フェニックスがあり、ここで勝利したことが、バイデン勝利、ひいては民主党のアリゾナ州の上院議員選勝利に大きく貢献したわけです。
この大都市を建設したのは入植者ですから、「フェニックス」という名前が付いたのは自然です。しかし、その周りのこの土地は何と呼ぶのかという問題が生じたのでしょう。
それをあらわす西洋語はなく、先住民が使っていた、「マリコパ」という、その地区を表す言葉を、そのまま使用したと推測されます。
日常は都市名を使用しますから、この郡名は、都市を含む広い地区を選挙区とするアメリカの大統領選挙や上下院議員選挙の時に現れる、「先住民の文化遺産」と考えることもできます。
これほどアメリカインディアンの文化的遺産を引き継いでいるのですから、自らのアイデンティティーに取り入れて、このインディアンの文化に対し、もっと畏敬や尊崇の念を示してもよいのではないかと思います。
さて、写真にある黄色の機体は1932年から37年まで、「オハイオ州」ミドルタウンで作られた「エアロンカC3」の5分の1の模型です。この模型は30年ほど前に作ったものですが、機体もエンジンも日本製です。アメリカでは実機が今でも飛んでいます。
正確にいうと、この型式はアメリカ連邦航空局によって製造が停止されました。理由は(ワイヤーでは連結されているが)胴体と主翼が構造上結合されていないからです。
しかし、それまでに製造されたものは、検査を受けて合格すれば飛行することができるというルールがあり(グランドファーザー・ルール)、実際に今なお飛行しています。これがアメリカの自由なところです。
残念なことに、模型界では、もうこの機体は作られていません。
模型飛行機産業は、主たる生産拠点が、ベトナムや中国に移り、日米ともに国内産業は衰退の一途を辿っています。しかし、ライト兄弟のフライヤー号をはじめ、実機の歴史の長さ、実機の種類の多さ、機体情報の豊富さでは、やはり、アメリカがはるかに優位性を保っていますので、中小零細企業分野ですが、いつの日か米国の模型飛行機マニファクチャリングが復興することを期待しています。
以上