【事件最前線】津市資源物持ち去り防止パトロール業務委託費の住民訴訟

三重合同法律事務所事務所コラム

【事件最前線】津市資源物持ち去り防止パトロール業務委託費の住民訴訟

弁護士 村田 正人

 もと相生町自治会長は、津市補助金の詐欺事件4件で起訴され有罪判決を受けた人物 であり、津市職員に対する土下座、丸刈りの強要などの不当要求行為を行っていた者である。もと自治会長は、平成26年秋ごろから、敬和地区で持ち去りが多いため、資源物のゴミ出しの日にパトロールを実施してほしいと要求しはじめた。自治会長の要求により、津市環境部は、平成24年1月から職員によるパトロールを強化した。市職員によるパトロールは、1回あたりの出勤車両台数は4、5台、職員8人ないし10人で、前夜は午後6時から午後9時まで、当日は午前5時30分から午前8時まで、古紙類と金属を対象としてパトロール回数を上げて実施することとなった。しかし、パトロール回数を上げたため、環境政策課資源循環担当職員だけでは対応できなくなり、環境部長をはじめ、環境政策課職員、環境保全課職員、環境事業課職員、環境施設課職員、新最終処分場建設推進課職員の応援が必要となり、環境部あげての取り組みをせざるを得ない状況に追い込まれた。このような状況のもと、自治会長は、平成27年2月ころ、「全部のパトロールを今後も市職員だけで継続していくと大変だろうから、自治会委託にしてはどうか。」と持ちかけ、自治会委託方式を採用するよう執拗に求めた。その一方で、ゴミ収集に関する苦情を申し立て、また、連日、知人男性が傍若無人に大声をあげては環境政策課長との面談を強要した。このような経緯の中、環境政策課長の丸刈り事件、環境部長の土下座事件も起きた。つまるところ、津市の資源物持ち去り防止パトロールの自治会委託は、不当要求行に屈して採用された事業であった。

 津市は、平成27年7月1日から令和3年2月12日までの間、相生町自治会との 間で、資源物持ち去り行為防止パトロール業務委託契約を締結したが、パトロール業務は、車両1台当たり自治会員が2人1組で乗車して行うものとされ、一時集積所にごみ出しされた新聞と雑誌を運搬車で運ぶ仕事であった。津市が、上記期間に百五銀行津市役所出張所の相生町自治会環境部会名義の口座に振り込んで支払った委託料の総額は5284万5015円にのぼる。

 ところが、自治会委託とは名ばかりで、非自治会員の作業員がパトロールに従事したり、作業員1人でパトロールしたり、津市職員を動員してパトロールするなど「したい放題・やりたい放題」を繰り返し、自治会委託の名のもとに総額5284万5015円を津市は騙し取られた。津市は、このうち2912万5637円をもと自治会長に請求して津地裁で裁判中である。

 しかし、多額の公金の流出は、もと自治会長だけの責任ではない。もと自治会長の不当要求行為を恐れ、パトロールが適正に行われているかどうかを検査もしないまま、多額の業務委託費を支払い続けてきた津市職員にも責任がある。なによりも、職員が、もと自治会長の不当要求行為に右往左往していることを漫然と見過ごしてきた津市長前葉泰幸の責任は大きい。自治会委託のパトロール事業は、全国どこにも前例のない異例の事業である。オンブズマンを自負する津市民は、津市長前葉泰幸をはじめ、パトロール事業の財務会計行為を決済した津市職員に対し、津市が被った損害5284万円余を賠償させるべく住民訴訟を提起している。





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