NPT再検討会議と核兵器禁止条約(TPNW)第1回締約国会合への期待

三重合同法律事務所事務所コラム

NPT再検討会議と核兵器禁止条約(TPNW)第1回締約国会合への期待

弁護士 森 一恵

 2021年1月22日に核兵器禁止条約(TPNW)条約が発効した。核兵器禁止条約の署名国・批准国は2021年9月24日時点で,署名国86か国,批准国56か国となっている。2022年1月には再延期後の核不拡散条約(NPT)再検討会議が,3月には核兵器禁止条約(TPNW)第1回締約国会合が開催される見込みである。

 台湾有事を想定した安保法制の運用や,自衛隊による敵基地攻撃能力の保有・強化など,憲法9条の恒久平和主義の理念に反する情勢下において,NPT再検討会議及び核兵器禁止条約第1回締約国会合の開催は「核兵器も戦争もない世界」を実現する上で,画期的な一歩となるものである。

 核兵器禁止条約は,前文において,核兵器が二度と使用されないよう保証するための唯一の方法は,核兵器の完全な廃絶であるとし,被爆者及び核実験の被害者の苦痛と損害に留意し,核兵器の法的拘束力のある禁止こそ,核兵器のない世界の達成及び維持に向けた重要な貢献となること,核兵器のない世界の達成及び維持は,国家的・集団的安全保障に資する最高の地球的公共善であると規定している。また核兵器禁止条約は,第4条において,核兵器保有国にも条約への加盟の道を開く仕組みを規定している。日本は,核兵器禁止条約への署名・批准により「核兵器も戦争もない世界」の実現を目指すべきである。

 ところが,日本政府は,NPT体制と矛盾抵触する等として,核兵器禁止条約に署名も批准もしていない。日本政府の態度は,アメリカの核の傘に依存するという核抑止論に基づくものである。このような日本政府の態度は,核兵器の使用がもたらす破滅的な人道上の結果に向き合っておらず,唯一の戦争被爆国として許されるものではない。

 核兵器禁止条約と核不拡散条約とは矛盾抵触しない。むしろ,核兵器禁止条約は,核軍縮に向けた効果的な措置について,交渉を行う義務を課す核不拡散条約第6条の履行を後押しするのであり,両者は補完関係にある。
 現に日本と同様アメリカの核の傘に依存する北大西洋条約機構(NATO)加盟国においても,核兵器禁止条約を肯定する新しい動きがみられる。ドイツとノルウェーは、核兵器禁止条約締約国会議にオブザーバー参加することを表明している。

 日本政府は第76回国連総会(2021年)において,核兵器廃絶決議案「核兵器のない世界に向けた共同行動の指針と未来志向の対話」を提出し,「核兵器の全面的廃絶への実践的なステップ及び効果的な措置の重要性を強調」,「国際的な緊張緩和,国家間での信頼強化及び国際的な核不拡散体制の強化等を通じ,第6条を含むNPTの完全で着実な履行にコミットしていることを再確認」等としている。核不拡散条約第6条の完全で着実な履行を真摯に追求するというなら,むしろ日本政府は,核兵器禁止条約に署名・批准すべきである。

 核兵器禁止条約と核不拡散条約が相互補完して,一日も早く「核兵器も戦争もない世界」が実現するように,NPT再検討会議及び核兵器禁止条約第1回締約国会合の開催に期待したい。

以上





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